第11話 2人の子供とワイルドボア。
アルマス大迷宮から東に出ると、アルステア領という街がある。アルステア領は、"昼は普通の街、夜は闇市場などが出回る二面性のある街"として有名だ。闇市場では奴隷から貴重な装備品まで色々な物を取り扱っているという。モーガンからもらったこの剣の代金はどうするか?と思い考える。今ダジュール王国に戻るのは危ないだろうと思い、モーガンには悪いが代金は後払いさせてもらおうと考え歩みを進める。
ある程度東に行った所で、2人分の声や足音がする。俺は息を殺し、隠れる。5〜6歳の男の子と女の子が走って逃げているようだ。すると奥から子供二人がイノシシ型モンスターに追われているのが見える。
「走れ!ルルカ!」
「待ってよ!お兄ちゃん!」
「あ、、」
「ルルカ!早く立て!」
ルルカと言われた女の子の方が転んでしまった、しかしそれを見逃してくれる程、ワイルドボアは甘くない。叫び声を上げながら、真っ直ぐ男の子と女の子に向かって走り出す。男の子は女の子をぎゅうっと抱きしめ、目を瞑る。俺は男の子たちの前に立ち剣を抜き、ワイルドボアの首を切り落とす。男の子も女の子も俺を見て呆然と立ち尽くしている。俺は剣を鞘に戻す。そして男の子達に振り向き、「君たち、こんな森の中でなにしてるの?」というと、ビクッとして驚く。内心、怖がらせたか?とヒヤヒヤしながらゆっくり話しかける。
「こんな森の奥で子供二人は危ないぞ。」
「……」
「お兄ちゃん…」
「なんでこんな森の奥に?大人達は?」と聞くと
「……村にはもう作物があまりないんだ。流行病で父さんも数年前に亡くなった。今度は母さんまで、でも!村の大人達が言ってたんだ。教会の神父様にお金を払えば、治して貰えるかもって。でも高額なお金がいる。だからワイルドボアを売ればいいって思ったんだ。」
俺はなんて言えばいいか迷っていた。ワイルドボアなんて冒険者にとっては、Dランク魔物。そこまで高額な金額にはならないだろう。そんな事を考えている俺の目を真っ直ぐ見て、
「お兄さん!ワイルドボアを俺達に下さい!」といい、少年は俺に頭を下げる。彼の妹も同じように。そんな少年達をみて、俺は言う。
「頭を上げてくれ。分かった、ワイルドボアは君達にあげるよ。その代わり君たちの住む村に案内してくれないかな?」というと「いいよ。そんなことでいいの?」と言われる。「俺はいいんだ、それで。」というと少年達は大泣きし始める。俺はそれを黙って見守り、泣き止むまで待っていた。
泣き止んだ少年は自己紹介を始める。
「俺は、マルク!キース村のマルクだ。」
「私は、妹のルルカです。」と言われ、俺は内心焦る。偽名を使うべきか、本名を名乗るべきか。と考え、偽名を使おうと決める。理由は偽名の方が都合がいいということだけ。
「俺は…俺はディセン。ソロ冒険者のディセンだ。」
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