第16話

「私は絶対に嫌!」


甲高い怒りの声が部屋に響き渡る。

声の主である一華はブルブルと震え父を睨みつけた。


「鬼頭家ですって?そんな鬼の化け物がいる巣窟へ私を嫁がせようっていうの⁇」

「一華、これは…」

「いや聞きたくない!!私は絶対にそんなとこ行かないわ。私にはお慕いしている殿方がいるの!!」


一華はイヤイヤと首を横に振る。

困った父はそんな娘に言葉を失った。


「…ねえ貴方、一華がこんなにも嫌がっているのですよ?ましてや鬼頭家だなんて。相手は鬼よ?嫁ぎ先で娘に万一のことでもあったら」


由紀江も今回の話には納得がいかない様子。

一華に便乗していた。

鬼頭家と呼ばれる鬼の一族。

それは異世界に住まうとされる妖の一族。


「鬼の妖…か、、、」


時雨がポツリと呟けば小路がそれを拾った。


「ビックリしただろ。なんせ一般ピーポーじゃ到底理解できない領域なんだ」

「小路様は知っていたんですか?」

「まあ大凡はね。俺も普段は仕事上、邪気を狩ってるし(笑)」


椅子に立てかけた刀をつつけば謎が解けた。

いつだって肩に下げていて危ないと思っていたがそういう事だったのか。


「とはいえ、今回はだいぶ深刻かな。代替わりでもしたのかな?例年よりだいぶ早くからの要請ですね」

「ああ…だがアッチには去年にも娘を送っている」

「南條家でしたっけ?ですが噂に聞くと嫁入り前の娘が行方不明だとか。妖力補充の利かなくなった相手に代わり、鬼頭家が久野家に申請してきたと考えれば今回の件も頷けましょう」


行方不明?

どういうことなの??

時雨が小路を見れば、彼は一華に視線を送る。


「例にもなく、今もっとも久野家で霊力の高い女は一華オマエだ。ならやる事は一つだよ」

「は?小路さん、何を言って、、、」

「分からない?大人しく鬼頭家に嫁げと言ってるんだ」


その冷たい言葉に一華はゾッとした。

チラリと垣間見えた小路の顔。

手を組んだ状態で顎を乗せれば面白そうに笑っていた。

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白鬼の封印師 スセリビメ @kurage9

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