鉄仮面と幻影の家族

kai

鉄仮面と心の雨。

ゆらり、ゆらりと心が揺れる。小さい頃から、俺はは愛されなかった。父は船乗り、母はいない。物心着いた時には、祖父母宅で育った。祖父母や叔母や叔父たちからは疫病神と言われ、育った。まともな教育、マナー、常識等は何も教えて貰えなかった。何もできない俺を保育士や小学校の担任などは、変な子、なんなら発達障害児として見ていたんだなと今では理解できる。暴力や暴言等は当たり前。5〜6歳になり、物心着いた時には、保育園から家まで歩いて通っていた。その距離約1キロ。一人ぼっちだった。初めて死にたいと思ったのは7歳だった。首を吊ろうとしたが身長が足りなかったため、諦めた。小4のとき、父が実母と再婚した。再婚すると聞かされたのは実母と会う約束の前日だった。いきなり母親ができると知り、嬉しさよりも怖さが先だった。しかし父はそんな俺に気付かず、配慮もなかった。それが最初の父に対する幻滅だった。母は活発で合理的、優しく料理上手な母だった。姉もできた。俺はいきなり出来た母と姉に向き合うことができなかった。

季節は巡り、俺は小5になっていた。父は毎日酒を飲み、家族に暴言暴力を日常茶飯事になっていった。それでも俺の父さんは、優しい父さんなんだ。母さんが悪いんだと思っていた。ある日、カラオケに家族で行くことになった。カラオケ屋で母さんと父さんが喧嘩した。時刻は深夜0時をまわっていた。父さんは車で、山に登った。山の中腹くらいで、母さんに降りろといって引きずり降ろした。そして母さんを崖から突き落とした。俺は焦って母さんに手を伸ばした。しかし子供だったこともあり、手が届かなかった。そして実感した。俺の父親は屑なのだと。理想の父は幻像だったのだ。と嫌でも実感してしまった。母がいっていることが正しかったのだと実感した。これが父が俺に対しての初めての裏切りであり、俺はこれが原因で人を信用できなくなった。

未だにその光景を忘れることは出来ない。


父親とは母親とはなんなのだろうか。未だに俺は、父や母の心は分からない。父や母の心を俺が分からないのと同じように父や母も俺の心を理解することは難しいだろう。1度失ったものは二度と戻って来ない。なので今この時を後悔しないように精一杯生きる。これが今の俺の目標だ。俺はこれを読んだ人に伝えたい。

頑張る事も大事だけど逃げる事も同じくらい大事。軽々しく逃げていいなんて言ったらいけないかもしれない。でも逃げた先には見えなかった景色が見えてくるかもしれないし、新たな人間関係が構築されて意外と楽しいかもしれない。そんな柔軟な思考が人を生きやすく呼吸を楽にする。と思っている。心の雨はずっと降るかもしれないが、その雨を"一緒に"理解してくれて共感してくれるのを待ってる人もいるかもしれない。雨の止め方を求めているのではなく、雨が降って嫌だね、早く止んで欲しいよねという願いを理解してくれる人を多くの人は求めているのかもしれない。

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