終章 蒼太「ここは天国か!?」 ??「越えろ」はっ?

 暗闇。


 何も見えない。何も聞こえない。


「……ここは?」


 蒼太は立っていた。


 真っ白な空間。


 足元には何もない。上も下もわからない。


「……死んだのか、俺。ここは天国か何かか? ハデスさんは?」


 そう呟いた瞬間——


 目の前に、眩い光が現れた。




 光が人の形を取る。

 それは——

 言葉にできないほど、荘厳な存在だった。



【創造主】



「……誰?」


 蒼太は思わず尋ねた。


 〝創造主〟は、穏やかに微笑んだ。



『よくぞ、ここまで来た』


 その声は、全ての音を包み込むような声だった。


「創造主……? 神様の、さらに上……?」


 蒼太は息を呑んだ。




『我は、長い間探していた。真の勇者を』


「勇者……?」


『どんなことにも物怖じせず、自分の正義を貫き、神々の法をも超えて人々を助けようとする——熱き心を持つ者を』



 蒼太は黙って聞いていた。


『汝は、その資格を証明した。


 レベル1でありながら、レベル100の魔獣に挑んだ。己の信念を貫いた。村の少女を救うため、己の命を賭けた』


 〝創造主〟の声が、温かくなる。


『汝の心は、まことに美しい』




 蒼太はうつむいた。

「……でも、俺は負けた。結局、少女を助けられなかった」


『いいや』

 〝創造主〟は首を横に振った。


『ベヒーモスは死にゆく中で最後の攻撃を放ったのだ。つまり、奴は完全に死んでいた。お前が倒したのだ。見よ、少女は助かっている』


 蒼太の頭に、村の人々がモンスターの核を持ち帰り、少女の呪いを解いている様子、

 英雄蒼太のために墓を作り、死をいたんでいる様子が映った。


「……よかった! 助かったんですね!」


 蒼太の目から、涙が溢れた。




「……俺は勇者なんかじゃない。ただの、配信者で……」


『そんなことはない。勇者とは、〝神々を越える者〟だ。神は何のためにいる?』

「難しい話はわかんないです……」


『人々を助けるためだ。神が人を助けるのを拒んだとき、最後に人間を助けられるのは人間だけ』

「…………」


『地震、疫病、津波、戦争。そうした災厄は突然に来る。違うか。不幸な出来事はいつだって起きる。神々の手も届かず、祈りも聞き届けられず、絶望を味わうこともある』


 〝創造主〟は一呼吸置いた。


『わかるか。神々が人を助けられないシーンは、山のように存在する。





 だから勇者が必要なのだ。





 神がそばにいないと思える時、お前・・が神に変わって人を癒し、神に変わって人を支えろ。


 これからお前の国には、とんでもないことが起きるやもしれん』


「とんでもないことって!?」


『それは告げられん。立ち直れないと思えるような大きな出来事が来るはずだ。神さえ見放したとさえ感じることも出てくるはずだ。だから繰り返すぞ。


 助けあえ! 勇者であれ!』





 光が強くなった。


 蒼太の意識が——


 遠くなっていく。



 ♢ ♢ ♢



「……ん」

 蒼太は目を開けた。


 見慣れた天井。

 自分の部屋。


「……あれ?」

 頭にVRヘッドセットが装着されている。


 外すと、目の前にはPCモニター。

 配信画面が映っている。


【配信待機中】

【視聴者数:31人】


 コメント欄が流れる。



『まだ?』

『早く始めて~』

『待ってるよ!』



「……夢?」

 蒼太は呆然とした。


 あの冒険は、全て夢だったのか?



 いや——

 確かに、感じた。


 戦いの痛み。精神の苦痛。


 画面で操作してスパチャの残高を確認する。


 【残高:0円】



 がっくり。


「……そっか」

 蒼太は静かに微笑んだ。


 夢か。





 蒼太はマイクに向かって語りかけた。


「皆さん、お待たせしました。蒼太です」


 コメント欄が反応する。



『きたー!』

『待ってた!』

『今日は何するの?』



「今日はね……新しいゲーム、挑戦してみようと思います。よろしくお願いします」


 配信が始まる。



 ——その時、



 チャリーン♬

【繝弱う繧コ縺ソ縺溘さんからのスーパーチャットです。10,000円】



『誰?』

『さあ』

『バグじゃね?』






 おしまい

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Lv.1のダンジョン配信者、視聴者が神々でスパチャ無双!!村を救ってLv.100のボスにざまぁする 冬野トモ @huyunotomo

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