23日目 部活

「今日はチーズケーキを作ります」

「ケーキだぞ、ケーキ!ついにワシらもここまで来たか」

「長い道のりだったな。ウチらもついにケーキか」

「先輩方は長い道のり全然歩いてませんよね?」

「ギクッ」

「恵美氏よウチらだって、毎回味見と洗い物言う分担作業をこなしてるのを忘れて貰っては困る」

「そうだそうだ」

「はぁ、あの人達は置いといて、作業を始めましょうか」

「はい」✖2

「ほって置かれたぞ春子氏」

「放っておかれましたな登美枝氏」

 こうして何時ものように、2年の恵美と1年の優と幸の3人でのケーキ作りが始まり、3年の春子と登美枝は前日の放課後に恵美が作っていたクッキーを取り出して来て、紅茶を淹れて飲み始めていた


「今日はチーズケーキなんですって!?」

「あっ、先生。出来るのはまだまだ先ですよ?部活が終わる頃に焼きあがって、それから3時間くらい冷やさないとダメなんで、食べれるのは夕食の頃に」

「お邪魔したわ。私、用事を思い出しました」

「あっ、登美枝確保だ」

「おうよ」

「もう、何よあなた達」

「せんせ、洗い物もせずに食べようなんて、調理部はそんなに甘い場所じゃ無いだよ」

「えっ」

「働かざる者、食うべからずが部の家訓ですからね」

「じゃ、先輩達も分量をキッチリ量って、混ぜるくらいは出来るようになって下さい」

「ええー、無理」

「チマチマした作業はするなと爺さんの遺言で」

「お爺さんまだご存命でしたよね?」

「あれ婆さんだっけ?」

「お婆さんも、ご存命でしたよね?」

「あれ?」


「ところで、恵美先輩。今回も数が凄い気がするのですが?」

 優は目の前にある材料やケーキの型枠の数にひいていた

「プリンの後から、食べさせてって人が増えてて・・・」

「ごめんなさい。私がお友達の分もって先輩に頼んだから」

「そう言えば僕もクラスの子と寮の人の分をだった」

「先生方にも人気あるよねぇ」

「さっ、作るわよ!」

「はいっ」✖2

「頑張ってぇ~」✖3

 この時点で、全校生徒の半分と少しと教師も校長を含めて十数名の分を作っていた。なお全校生徒は880名で、教員は大学からも来ているので総数は不明。常駐の担任だけだと30名


 今回は1ホールから6ピースだったので、失敗分や予備などを考慮して100個ほどのケーキを作ったのだった。なお、全てが焼き終わったのは、夕食の時間の少し前で、通学組には熱い状態のまま持って帰ってもらい、数時間冷やしてから食べて下さいと告げていた。寮生の分は翌朝の朝食に出されたのだった。


「優くんは先に冷やして置いたの4個持って帰って良いからね」

「はい、ありがとうございます」

「やっと、終わった。これラストです」

「ヤッター、やり遂げたぞ」

「長い闘いだった」

「それじゃ鍵をしますから、皆さん帰りましょうね。先生もうお腹が空いて」

「何言ってるんですか!私と優くんで寮に出来たのを持って行って来ますから、その間先輩達と先生は後片付けをしていて下さいね」

「ええー」✖3

「幸ちゃん、3人をしっかり見張っていて下さい」

「はい!」

 優はここでも便利な荷物持ちキャラになっているようだ



「そうだ。寮に帰る前にあっちにも1個送っておくか」

 優は弘前の実家に、昔見た姉の友達の名を使い。チーズケーキを魔法で配達した。田舎なので鍵などは閉めておらず、直接玄関の中へと魔法で送り、さらに魔法で呼び鈴を鳴らした。



「さてと、残り3個。18個に分けれるから、ユリアさんに九条さんに・・・えっと女の子が8人9人か、あと寮母さんの所が2人で、男が3人で、あっ12超えるな・・・教室は4個あればどうにかか、ギリギリなんとかなるかな」

 雑に家に1個寮に2個クラスに1個と考えていた優だったが、それではダメな事に気がつき、この後も男にはやらなくてもいいかとか、考えながら帰ったのであった。




 その頃、実家では・・・

「はーい。こんな時間に誰かしら?」

 家族で食事をしていたが、優の姉の晶子が席を立ち玄関へと向かった


「あら、高校の時のでも、この前結婚したはずよね?それに、宅配なら判子を・・・あっ」

 不審な点が何点かあったので、晶子は優からの品だと気がついたようだ


「晶子なんだったんだ?」

「宅配だったみたい。学生時代のお友達が何からだったわ」

「わー、お母さん何々?」

「もう、久美子はぁ。小太郎だって静かにしてるのにぃ」

「だってぇ、気になるんだもん」

 お歳暮やお中元の頃以外に宅配が来る事があまり無い家だったので、久美子は嬉しそうに燥いでいた


「開けていい?開けていい?壊れ物?天地無用?」

「あっ、ひっくり返したりしないで、そのまま静かに開けなさい」

「はーい。何かな、何かなぁ~」

 注意されたので慎重に開ける久美子


「わー、ケーキだぁ。でも、イチゴ乗って無い」

「久美子あんたチーズケーキも知らないの?子供だから仕方ないか」

「じゃあお姉ちゃん知ってたの!」

「知ってたわよ。もう高校生だから当然」

 知ったのは弘前の街にある学校に通い出し、皆で喫茶店に行った時に友達が注文したからだったので、つい最近の事だった

「お父さん達も頂きませんか?」

「いやワシ等はいい。みんなで食べなさい」

「ヤッター、私お皿と包丁持って来る」

「あっ、もう走らないの!」

「小太郎、フォークを持って来てくれ。久美子は忘れてるだろうからな」

 ※田舎臭がする訛りが・・・

「はい、お父様」

「それじゃ、私達は先に寝かせて貰うよ」

「はい。おやすみなさい」

 優の母親は父親に習い席を立ち寝室へと向かった。


「これ冷たいのね」

 晶子はチーズケーキを切り分ける時に、触ってはじめてわかったようだ。箱は常温で冷えたチーズケーキを入れて、10分足らずなので箱はあまり冷たくなって無かったのかも知れない。

「最近はそんな配達もしてくれるのか?」

 ※田舎臭がする訛りが・・・

 驚く辰雄。

「あっ、これ!優にいからでしょ!」

 久美子は閃いたように言った

「馬鹿ね。岡山からよ?」

 呆れたように言っている姉の純子だったが、彼女もまた優からの物だと気がついたようだ


「美味しいよこれ!残ってるの食べていい?ねぇねぇ」

 まだ自分のが半分くらい残っているのに、6等分して1つ残ってるのを狙う久美子

「ダメですよ。これは明日お母さんに食べて貰う分です」

「ええー、じゃあ優にいに頼んで送って貰おうよ」

「優はお勉強しに行ってるのだから、無理言ったら駄目よ」

「ええー」

「それじゃあお父さんが、優にお小遣い送っておくから、夏に帰って来る時に買って来てもらおうか」

「うん」

「辰雄さん、もう久美子には甘いんだからぁ」

 ってな会話がされたらしい。ただ、翌週から毎週金曜日の夕方に色々なお菓子が届くようになり、優の所にお小遣い入りの手紙は届く事は無かった。


 が、後日姉から「その人はもう結婚して、そこには住んでませんよ。あと、宅配便で冷たいままは届きませんのでご注意を、最後にお母さんも美味しいと言ってましたよ」などと書かれた手紙は届いていた。

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