21日目 誕生日会(2)

「それでは、みんな揃ったようなので、4月5月のお誕生日会を始めたいと思います」

 香の挨拶から誕生日会が始まった。


「それでは、今月のお誕生日は~4月4日生まれの岡崎くん」

「ワイやワイ」

「しっとるわ」

「早く次行ってぇー」

 名前を呼ばれて椅子の上に立ち燥ぐ大輔だったが、何時もの扱いをされていた


「では、続きまして」

「4月6日生まれのユリアさん」

「おめでと~」✖複数人

「お誕生日おめでと~」✖複数人

「ユリアさん、お誕生日おめでとうございます」豊夫 ※様つけると怒られる

 同時に祝福の声が上がった

「ありがとうございます」

 ユリアは少し照れて紅くなっていた。友達とこの様な事が始めてだったからかも知れない

「そして最後に、5月1日生まれの鶴見くん」

「おめでと~」✖複数人

「お誕生日おめでと~」✖複数人

「16歳おめでとう」豊夫

「あ、ありがとう。何だこれ照れるな」

 龍二もまた恥ずかしいのだろう。照れて顔を紅くしていた


 そして、女の子達が歌を歌ったり。優が安来節を歌い豊夫がドジョウ掬いをして場を盛り上げ、食事時間を経て


「それでは、お誕生日と言えば、そうこれ」

 香がそう言うと、灯りが落とされ部屋が薄暗くなった

「わー」

「すげー」

 と、歓声が沸き起こる中で、ロウソクに灯りが灯された大きなホールケーキが3つ会場に運び込まれた。


「ユリアさんの真っ白だね!!」

 ユリアの前に運ばれた純白の一切飾りの無いケーキに楓花は驚いた


「なんやこれ!」

 大輔の前には四角い大きなカステラが


「龍二のそれ」

「なんだそれ」

 腹を抱えて笑う優と豊夫

「何笑ってんだよ」

 と、言ってる龍二も笑いをコラえるのが大変そうだった。最後に運び込まれた龍二のケーキは、大きなお好み焼きで青海苔で可愛い龍の絵が描かれていたのだ。


「せーのっ、ハッピ バースディ トゥー ユー♪ハッピ バースディ トゥー ユー♪ハッピ バースディ ディア 大輔♪ハッピ バースディ トゥー ユー♪」


「えっワイからかいな。ほな、一発で消したるからな、みときやー」

 そう宣言した大輔だったが、大きなカステラを縁取るように配置された蝋燭は一息では消えず。急いでテーブルの反対へと回り込み残りを消していた

「ダメじゃん」

「あはは」

 と、まぁ安定の大輔が消し終わると


「次行くよー。せーのっ ハッピ バースディ トゥー ユー♪ハッピ バースディ トゥー ユー♪ハッピ バースディ ディア ユリア♪ハッピ バースディ トゥー ユー♪」


「それじゃ、ふーー」

 ユリアもまたケーキが大きかったからか、流石に一息では無理だったようだ

「おめでと~」

 とは、いえこちらは笑いでは無く祝福の声がかけられていた


「じゃ最後=行くよー。せーのっ ハッピ バースディ トゥー ユー♪ハッピ バースディ トゥー ユー♪ハッピ バースディ ディア 龍二♪ハッピ バースディ トゥー ユー♪」


「大輔とは違うからな」

 と言って頑張ったが、酒も入ってる事もあってか、これまた一息では無理で。消し終わった後にフラフラになっていた。

「みんな、おめでと~~~~」

 と、香が締めくくると、料理人がやって来て、ロウソクを外して、それぞれを食べやすくカットを始めた。


「わあーー、パクッ!!」

「お姉ちゃん、早いよ。ユリアさんが先だよぉ」

 カットされた断面を見て思わず、食べてしまう由香

「真っ白で驚きましたが、中がこうなっていたのですね」

 椿は中を見てほっとしたようだった。

「サプライズ成功かしら?」

 九条はユリアに聞いた

「ええ、驚きましたわ。それに、美味しいから2度驚かされました」

「ふふ。飾りも無い純白にして貰ったのは、ユリアのイメージに合わせてだったのよ。中の方は味重視で色々なフルーツを入れて貰ったの」

「そうだったのね。彩華も食べて食べて、美味しいから、あーん」

「えっ、それじゃあ」

 ユリアは普段ならしないだろうが、彩華に自分のケーキをフォークで一口分切り彩華の口へと運び、彩華もまたそのような事は初めて驚いていたが、そのケーキを食べていた

「美味しいわね」

「でしょう。あとで料理人の人に作り方を教えて貰って、うちでも作れるようにしなきゃ」

「気に入って貰えて何よりです」


「お好み焼きは普通だな、うん。でも、無茶苦茶旨いなこれ」

 豊夫はユリアの方でサプライズの声がしていたので、男の方には何か別のサプライズがと警戒していた。が、こっちは特にサプライズてきな事は無かった。ただ、素材の良さとソースに一工夫がされてる事もあって、後はケーキの分だけと言ったあたりまで食べていたのに、2切れ3切れと食べれる美味しさだった

 

「カステラ、めっちゃんこ旨いやんけ!!」

 と、一番近くにあったカステラを食べる大輔だったが、日持ちする事もあって実はお土産用と言うか、食べれないだろうから後日にどうぞと気が使われた品だった。


「それでは、最後にお誕生日プレゼントを渡して、終わりとなります。では、誕生日の早い順番には最初にしたから、今度は遅い順番にしましょうか。鶴見くん前へどうぞぉ」

「あっはい」

「それでは、皆さん鶴見くんへのプレゼントを手渡して行って下さい」


「おめでとう」「お誕生日おめでとうございます」「おめでとう」・・・

 皆一言、龍二に祝福の言葉を言いながら、誕生日プレゼントを手渡して行ってた

「龍二くんおめでとう」

「由香さん、ありがとう」

 この時、龍二の顔は引きつっていた

「鶴見さんお誕生日おめでとう。それ、不要なら捨てて貰っても構いませんから」

「なんで?すごくいいのに」

「それは、お姉ちゃんが思ってるだけだよー」

 渡されたのは、大きなバナナの抱き枕だった

「龍二おめでとな」

「おう」

 豊夫はアーモンドなどナッツやジャーキーなど酒の肴の詰め合わせだった。

「おめでと」

「おうって、ナニコレちっさ」

「仕方ねぇーだろ?1円までなんだし」

「まぁそうだな。ありがと」

 優は1杯分程度しか無い小さな高級洋酒

「おめっとさんやでぇ~」

 何かを企んだ顔をしながら、渡す大輔

「怖いな、なんだよこれ」

 と、覗き込んだ中には「突撃〇番」の文字が!!

「まぁ、はよつこうてくれやー」

「おう助かるわ。もう少しで切れそうだったんだ」

「なんや、おまもう」

「なに、お前まだだったのかよ」

 なお龍二も強がってはいたが、実は素人DTとの噂も


「では、続きまして、ユリアさん前にどうぞ」

 パチパチパチ


「ユリアさんお誕生日おめでとうございます」

「ありがとう」

「どぞっ」

 豊夫は緊張のあまりロボットのような動きになっていた。豊夫は色々考えたすえに、1円分高級なお茶の葉を買ったようだ。

「ユリアさん、おめでとうございます」

 続いて優がハンカチが入った小さな紙袋を渡し

「ユリアさんおめでとー」

 楓花は、口紅を塗る為の筆、九条はあぶら取り紙、椿は爪切りなど、女性陣は由香以外は美容に関係する物が多かった。由香は木彫りの熊だったので、妹の遥が申し訳なさそうに必死に謝る姿がここでも見られた。


「最後、この寮で一番誕生日が早い岡崎くん」

「ワイの番やな。皆期待しとるでぇー」


「おめでと」

 バサッ

「おめ」

 バサッ

「おめでとう」

 バサッ


 女性陣は赤面しつつ本が入ってそうな紙袋を足早に置いて去って行ってた


「おめでと」

「おうありがとな」

 と、ここでも夕景姉は姉らしさを見せ、恋人がデートで二人で飲む時に使うあの途中が❤になってたりするあのストローをプレゼントしていた

「おねちゃん!あれはダメって言ったじゃない」

「だって、可愛かったんだもん」

 そう、大輔と一緒に使いたいからなんてメッセージはそこには無く、姉が可愛いと思ったから買ったそれだけの事だった。


「今夜からは選びたい放題だな」

「おっおう」

「追加だぞっと」

「おう」

「じゃ最後に」

 ドンッ

「なんやこれ!!」

「古本屋行ったら1円でも沢山買えたわ」

 こうして大輔の前には20冊ほどのエロ本の山が出来たのだった。なお、女性陣は自分で買うはずも無く、楓花がバイト先の新聞屋のオジサンに言って買って来てもらっていた


 誕生日プレゼントも渡し終え、お開きとなった。女の子達はお風呂へ行く準備をしに各自部屋へと戻り。


 男達はと言えば優と豊夫は片づけを、誕生日だった事もあり二人は免除されて部屋へと戻っていた。


「なんや、なんや、なんなんやーーー」

「うっせーぞ」

 部屋で大きな声を出す大輔


「おま、これ見てみーや・・・」

「はあん?」

 大輔が手渡したその本は、表紙は金髪の美女?だったが、中身は女装した男達のさらにかなりハードな一冊だった。


「こっちもや」

 と、指差した先には、熟女物のマニアックな本ばかりが雑に放置されていた


「でもって、なんやお前これは」

「さあな、一山いくらで売ってたからな」

「おまこれ」

 と龍二が買って来た古本が安かった理由もまた、スカ〇ロばかりが集められたヤバイ物だった


「まともなのは豊夫のだけかと思ったんや」

 そして、最後の1冊は確かに普通のエロ本ではあったが、表紙の可愛い子だったが、中身はイマイチな子ばかりな質の悪い物だった。


「バナナ子ちゃん毎晩抱いてやれよ」

 と、冗談で言う龍二

「あれな、1円だけあってな。中身スカスカで抱き心地最悪やん」

「おっ、おう」

 流石の酷さに声を無くす龍二だった。


 龍二の方は普通に酒を呑むコップとかタバコや灰皿、ライターのような物が中心だった。普段の行いの差と言うか、龍二が女性陣とそこまで親しくなって無いから、遊ばれずに済んだだけだったのかも知れない。



「そろそろかな?」

 優は夕方に引き取ったばかりのネックレスをポケットに忍ばせ、お風呂からユリアが帰って来るのを玄関ホールのベンチに座り待っていた。


「優何してるの?」

 最初に帰って来たのは楓花だった。

「あっ、うん。隣の部屋から何か凄いオーラが出てて、ここに避難してるとこ」

「あはは、隣は大輔だっけ?ダイスケベな事でもしてるのかな?」

「どうだろ?そうかも?」


「楓花行くよー」

 ぞろぞろと他の女性陣も帰って来て、楓花は香に呼ばれていた

「それじゃ、またねー」

「うん、おやすみ」


「先行ってるわね」

 九条はユリアの耳元でそっと囁き、ナターシャと共に列の最後を歩き階段を上って行った


「優、ハンカチありがとう。大事に使うわね」

「うん。えっとね」

「ん?」

「これっ」

「えっ」

「あれは何と言うか、お誕生日会用だったから、こっちが本当のと言うか」

「開けて見てもいい?」

「うん」

「わー、綺麗。このお花は何のお花なの?」

「えっと、一応ナスタチウムってお花。ユリアさんの誕生花なんだけど」

「嬉しい。ねぇ、つけてくれる?」

「うん」

 優は周囲を確認して、ユリアにネックレスを後ろからでは無く、前からつけた

「どうかしら?」

「えっと、似合ってる。凄く綺麗だよ」

「ありがとう。そろそろ行かなきゃ」

「あっ、うん。おやすみなさい」

「おやすみ。優、ありがとうね」

 ユリアはそう言うと、ほっぺに軽くキスをして少し足早に階段を上って行った

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