第6話
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夜明けの空 ― The Dawn Over Albion
激戦の末、竜帝が倒される。竜帝が倒れた瞬間、ロンドン全土に張り巡らされていた黒き魔力の幕が、粉々に砕け散った。
漆黒の雲が消え、長い間閉ざされていた空から、朝の光がゆっくりと降り注ぐ。
誰もが、その光を見上げた。
瓦礫の中で、血に染まった兵士が空を仰ぎ――
倒れた仲間の手を握りしめながら、ぽつりと呟いた。
「……終わったのか……」
その言葉が、街の至るところで繰り返される。
戦いを生き延びた冒険者たちは剣を土に突き立て、静かに目を閉じた。
空には、竜帝を討った日本とイギリスの戦闘機の残骸が、流星のように光りながら落ちていく。
「こちら山本海将。本国に告ぐ……敵、殲滅を確認。
全艦、被害甚大……だが、我々は勝った。」
通信の向こうから、嗚咽が混じった歓声が上がった。
「……やった、やったぞ!」
「ロンドンを取り戻した!」
――その歓声はやがて街全体を包み込み、泣き声と笑い声が交錯した。
長く続いた闇の時代は、ようやく終わったのだ。
◆
数日後、ロンドン中心部。
崩れかけた議事堂の前で、イギリス首相がスーツ姿のまま立ち尽くしていた。
その隣に並ぶのは、日本の内閣総理大臣・伽藍堂五十六。
「助けていただいた恩、決して忘れません。」
「いいえ。あの時の借りを、ようやく返しただけですよ。」
二人は静かに握手を交わす。
その光景を、市民と兵士、冒険者たちが見守っていた。
幼い少年が、母親の手を握りながら空を見上げる。
まだ煙の残る空には、朝焼けの橙がゆっくりと広がっていた。
そこにはもう、竜の影も、闇の瘴気もない。
「ねぇ、ママ……また青い空、見えるね」
「ええ……帰ってきたのよ、私たちの空が」
母は涙をぬぐい、子を抱きしめる。
その上空を、航空自衛隊とイギリス空軍の混成飛行隊が並んで飛んでいた。
機体の翼には、それぞれ日の丸とユニオンジャックが描かれている。
そして翼の下には、ひとつの文字が刻まれていた。
“For the Light of Humanity.”(人類の光のために)
戦争は終わり、復興が始まる。
人々は傷つき、国は焦土となった。
だが――人の心は、折れなかった。
やがて誰かが呟いた。
「この空を、もう二度と暗闇に染めさせるな。」
朝日が昇る。
それはまるで、世界が再び歩き出す合図のようだった。
――夜明けの空の下、人類は再び未来を掴む。
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