エピローグ そういう友達。
わたし、
「――あと
そんなイア
「どうやら
「しないよ」
ひざをつき、わたしは、つぎはぎだらけのリスを右手にすくう。
「この子は、大人の和屋さんから、にげなかった。つまり、最初から後ろめたいところのない、暴れてすらいなかったミニシンだった」
「仲間に取り残されたから、同じように一人でいる和屋のそばに、いたのかもな……」
ついでイア太は、笑い声をもらした。
「にしても変なもんだよな。おれもアマノもミニシンと戦う気、満々だったのに、最終的には戦うことすらなく、終わっちまったわけだ」
「いいんじゃないの。戦いを素材にしなくても、未来は作れるはずだから」
リスを右手に乗せたまま、わたしは立ち上がる。イア太は、
かけつけた千代原さんは、リスを預かり、これでミニシンたちを
和屋のことも伝えると、千代原さんが頭を下げた。
「ずっと閉じこめられて、こわかっただろう。
「いいんです……。イア太がいましたし、和屋さんも、わたしにケガさせていません」
「やつの目的はアマノをたおすことじゃなくてアマノの願いを見届けることだったからな」
「そうか、イア太も
「いえ、イア太と走って帰ります」
「分かった。ミニシンの
千代原さんはきびすを返し、頂上の天守閣のほうに足を向ける。
「イア太も、得がたい友達を作ることができたんだな。わがことのように、うれしいよ」
葉っぱの
それでも、思い出したように、おなかは鳴った。
だからそのあとは、たくさん食べた。
翌日。
かけ足で学校から帰ったわたしは、イア太を持って、庭に出た。
このときイア太が、出会ったときと同じ、軽いパーマのかかった男の子の姿を見せた。
「こっちのほうが、気持ちが伝わるかと思って」
ちょっとだけ、だまって――、また
「
男の子のイア太が胸をおさえ、少し苦しそうに言葉を続ける。
「おれが本当のことをアマノにかくしていたのは、本当だから……!」
「いいんだって。そういうのも全部ふくめて、イア太とわたしは友達なんだ」
両手でそっとにぎったマイクと、目の前の男の子に、ゆっくり視線を向けて言う。
イア太は胸から手をはなし、笑ってくれた。
「……それがおまえのプロンプトなら、おれは
「いい考えだね。わたしもイア太を見習いたいな」
そのあと、おばあちゃんから、じょうろを借りてきて、まだ花のさいていない植物たちに水をあげた。
「自分らしく、自分のペースで育ってね……」
ここでイア太が「おれも、やってみたい」と
「よし、『適当に大きくなれよ』っと。……しかし、おまえに拾われたときは、おれが、こんなことするなんて思わなかったぜ」
「出会ってから
「そりゃアマノのほうだろ。ふり返ってみりゃあ、はっきりする」
「いろいろ、あったよね。だからイア太。わたしと、いっしょに思い出してくれる?」
「万事オーケーだ。そのための素材も足りている。あとは、おまえが願うだけさ」
「――プロンプト入力。この五日間の出来事から、わたしとイア太の物語を生成!」
……それからは、ただ語り合った。
楽しかったこともあった。折れそうなこともあった。でも、共に乗りこえられた。
きっとその先で、わたしたちは、今を作り上げていたんだと思う。
〈魔法少女(?)と生成AI ~アマノとイア太の物語~ 完〉
※あと一話だけ番外編があります。
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