第二十三話 生成AIつかいの決着!
ツタをはらった先で、
すかさず、わたしはイア
しかし、後ろから来た手は、リストバンドを丸ごとつかんだ。そのまま、わたしの手首から、リストバンドをすぽんと、ぬいた。その
「返して!」
左手まで、つかまれないよう、わたしは体を回転させ、ツタの通路で和屋と向き合う。
にやりとした和屋は、右手にリストバンドを持ったまま、左手の平を舌でなめた。
すると和屋の右手そのものが、「てぶくろ」の形状になった。
「これはイア太の
「それは――あなたのほうかも、しれませんが」
地面のツタに両足をしずませ、わたしは姿勢を整える。
きょとんとする和屋の左手に――。
すでに多くの「緑の破片」が、あらゆる方向から、せまっていた。
気づいた和屋は、かわそうとしたものの……
破片たちは和屋の左手をおおいつくし、まるで卵のからのような形状に閉じこめた。
「へえ。『カメさん』を圧縮プロンプトとして破片をあやつる技は
「細かい内容は和屋さんへのリベンジを意識して変えています。例えば素材は周囲の植物にしました。でも、そんなおしゃべりを重ねる前に」
目つきだけを
「早く『生成』したらどうです。心で思うだけで、いろいろ作れるんでしょう?」
「その言い草。ぼくの生成
和屋は
心の
なぜなら、人が心に思いうかべることは、いいことばかりでは、ないから。悪いことも余計なことも、いやおうなしに考える。それらが、いちいち実現すれば、かえって
心を持たない生成AIならともかく、和屋は、れっきとした人間。
本当に心だけでプロンプトを入力しようとすれば、その生成はめちゃくちゃになる。
では、実際に和屋が
思い返せば和屋は、左手の平をかいたり、なめたりしていた。そのとき指や舌で「文字」を書き、プロンプトを入力していたとすれば説明がつく。
つまり和屋は「文字を読み取る生成AI」を左手に内蔵しているということだ。
その左手が緑の「から」でふうじられた今、和屋は新たに生成を行えない。
加えてイア太が周囲のツタをネット状にし、和屋をとらえようとする。
「おなかパンパンでも生成可能とは! でも
わたしに背中を向けることなく、ツタでできた通路を後退し、和屋は、はなれる。
通路から出たあと、近くの大きな木に左手をぶつけ、緑の「から」をけずっていく。
一方のわたしは、こしを落とした。まとっていたジャケットをぬぎ、広げる。
その
「プロンプト入力!」
声をからすほどの大声を上げつつ、わたしは立ち上がり、再び姿を見せた。
右手をグーにして、その手首を左手でつかみながら、マイクにふきこむように言う。
「素材は、わたし、
「イア太を取られたのに、そんなプロンプトを! な、
おどろく表情を見せる和屋――。だが、すぐにその顔は笑いに変わる。
「――なんてねえ! 本当のアマノちゃんは、こっち! 自分をにぎっている人にイア太がまぼろしを見せることができるって、ぼくも
和屋の顔が右後ろを向く。その視界の
「正面のまぼろしに注目させつつ、通路の
緑の破片でおおわれた左手を、後ろからせまるわたしにふり下ろす。
が、当たりは、しなかった。――そちらのほうが、まぼろしだから。
直後、通路にいる本物のわたしが、くつの裏の「ばね」を使い、和屋に一気に接近する。
「ばね? アマノちゃん、いつの
リストバンドを和屋の手から取る。イア太を取り出し、右手につかむ。イア太がさけぶ。
「決めちまえ、生成AIつかいアマノ!」
「和屋さんの上着を素材にして、ロープを生成! 本人をきつく、しばりあげるように!」
すれちがいざま、和屋の上着が細長い形状に変わった。
自身の黒い色に巻きつかれ、和屋はその場に――くずおれた。
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