第2話 錆びついた歯車
咲宮花
人との関わりを苦手とする大学4年生。
両親はすでに他界しており、一人暮らしをしている。頼れるものはおらず1人孤独に粛々と過ごしている。
人と群れることを苦手とし、友達ができても本当の自分を見せることができず、偽りの姿で上辺だけの関係で、次第に皆離れていく。
と言うよりは、自分から離れて結局1人になってしまう。
決して人が嫌いなわけではない。
親しい関係を築きたいと思っているが、
他人との接し方がよく分からないのだ。
物心がついた頃から、
"仲良くない子と無理をしてまでなぜ話すのか?"
"どうして周りと同じように好きなもの嫌いなものを合わせるのか"
"なぜ人は群れようとするのか?"
"なぜ人は悪口を本人には言わず陰で言うのか?"
と思う子で大人からも少しめんどくさがられて、距離を置かれていた。だからか、自然と本当の自分を隠して生きるようになってしまった。
それからの人生というものは本音との葛藤の日々だった。誰かと話したりする時も、思っていないことを言って話を合わせたり、遊ぶときもそう。自分がやりたいことは口に出さずみんながやりたいことをやる。本当はやりたくないと言いたかったけど、当時は1人になるのが怖かったから周りに合わせていた。だから友達と喧嘩をしたり、本気で泣いたり笑ったりしたことがなかった。
でも、心の中ではちゃんとわかっていた。
こんな関係は相手にも失礼だし、ありのままの自分を見せれないなんていけない子だ。
友達なんてつくる資格なんて私にはない。
そんなふうに思うようになってからだろうか。
"孤独"という悪魔が住み着いたのは…
そんなある日、出来事は急に起こったのだ。
生まれて初めて何かに惹きつけられる感覚、心が躍るような出来事が今一瞬にして起こった。
自分でも何が起こったのか分からず混乱している。ただ、錆びついた心の歯車がギシっと動いたのがわかった。
ぶつかった男性の姿はもうない。
"大学生だろうか…?"
にしても大学入って4年が経つが一度も見かけたことがない。まぁそんな人はごまんといるだろう。フードを深くまで被っていたからはっきりと顔は見えなかったが、その中でも目が印象的に残っている。目が大きいとかそういうのではなく、どこかぽっかりと穴が空いているようなもの寂しそうなそんな目つきが頭から離れない。
もう一度会うことができるのなら、勇気を振り絞って聞いてみたい。
"彼"の名前を。
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