こころの灯火
月と太陽
第1話 海底
人生、そう簡単に上手くいくはずがない。
誰も助けてくれはしないし、
孤独の夜も1人で生き延びなければならない。
布団の中で丸まって耐えるしかないなんて。
なんて、生きにくい世の中なんだ…
呪文のように頭にこびりついている。
いつかこんな世界から抜け出したいと、願っているが心のどこかで諦めている自分がいた。
そんな自分にも嫌気がさしていた。
全てがどうでも良くなる瞬間がたまにやってくる。そんな悪魔と戦う日々で精一杯。
人と話す暇なんてない。
人と関わる余裕なんてない。
そう言い訳を作って人の輪から逃げていた。
アラームの音で目覚める。
太陽の光がカーテンの隙間から入り込み部屋を照らす。今日は天気が良さそうだ。そうやって些細な幸せを見つけるようにしている。なぜかって?
そうでもしないと海底に引きずり込まれてしまうからだ。そう心がけていても、悪魔の数が多いと負けてしまう日もある。そんな日は、ベランダに咲いているアネモネの花をぼーっと眺めることにしている。私に話しかけているかのように風に揺れている。
朝は忙しなく始まる。
顔を洗って歯磨きをして、洗濯を回して、飼っている愛犬の散歩をしごはんをあげて、パンを焼いて、コーヒーを淹れて、食べながら朝のニュースを見て、洗濯を干して、気づけば家を出る時間になっている。
本当に忙しない。
悪魔が出る間を与えない朝が好き。
1日の中で唯一、気分が晴れる瞬間だ。
玄関の扉を開ける。
太陽の日差しが一気に私の中に飛び込んでくる。
大学の通学路に古い本屋さんがある。
入ったことはないが、横を取りすぎる時にいつも横目で見るが、これといった特徴はなく本の種類が多いわけでもなさそうだが、どこか気になって見てしまう。これも日課なのだ。
校門に足を踏み入れる。
私の苦手な時間がやってきてしまった。それは講義が始まるまでの時間だ。仲良い者同士で集まって座り、流行り物の話やこの後どこ行くやら、本当に興味があるのか分からない話、そして他人の愚痴が飛び交っている空間がとてつもなく苦手なのだ。教室の出入り口そばの端の席に1人で座る。
講義が終わったらすぐに出られるようにいつもこの席だ。
チャイムが鳴った。
地獄の時間が一旦終わる。
今日もなんとか生き延びた。
あと、何日この日々が続くのだろうと考えるだけでめまいがする。
ドンッ
誰かと肩がぶつかる。
「すみません!」
咄嗟に謝り相手の方を見ると、白いパーカーにフードを深くまで被った背丈はそこまで高くない男性だった。
「すみません…」
男性は小さな声で謝り先急ぐかのように歩いて行った。
一瞬の出来事だったが花の心の中が騒ぎ始めた。
"なんて、綺麗な目なんだ…!"
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