「不思議な国の××××」

@hisa42

第1話

俺は普通のサラリーマン、小中高ほとんど行ってないが就活していたらすぐに内定を貰った。
会社には朝9時に出勤し定時に帰る、そんな生活を暮らしていた。

しかし段々と仕事が辛くなってきた。俺はミスをすることがある。開き直ると人間はミスをする生き物だ。
問題はこれからだ。上司はミスをするたびに俺に暴力を振るったり、俺そのものを否定するような言葉を放った。
俗に言う「パワハラ」だ。俺は少なくともそう思った。

いつも女性社員にはデレデレで、ミスをしても怒らない上司。
最初はなかった残業もあり、次第に仕事の量も増え、帰宅は21時くらいが当たり前。
よく言う「社畜」だ。
俺は次第に身体的にも精神的にも疲弊してしまった。

ある日、俺は重大なミスをしてしまった。もちろん社長に怒られる。だがまだ軽い方だ。
これから始まる「地獄」そっちの方が怖かった。

案の定、上司にはパワハラを受けた。そしていつもの残業。
「やっと帰れる!もうこんな時間か。今日はビールでも飲もうかな。」
そう思い、近くの居酒屋を調べて行った。

人がギリギリすれ違えそうな狭くて明かりもない道を歩いていると、明かりが見えてきた。
「きっとあそこだ。」
店に入ると中はとても綺麗で、繁盛しているらしい。
まずは飲みたかったビールを頼んだ。そして焼き鳥、枝豆、唐揚げ。

すぐにビールが来て飲んだ。「ゴク、ゴク。」
あ〜幸せだ。俺はべろべろになり店を出て歩いていると、優しそうな若い男性が話しかけてきた。

「この先行くと駄菓子屋があるんですけど、どうですか?」

最近、駄菓子屋を見かけることが少ない。小学生の頃はよく友達と集まった。
「そんな懐かしいお店が、居酒屋くらいしかない路地裏にあるのか。」

ついて行くとボロボロな店に着いた。
店内は小さく、中は暗く、いろんな色のライトで装飾されており、客は一切いない。
奥には中年の小太りで顔も怖く、お世辞にも接客業には向いてない風貌の男がいた。

そんなことに気を取られていると、若い店員が声をかけてきた。
「お客様、どうぞご覧になってください。ここには『チョコ』『ラムネ』『クッキー』『グミ』などがございます。」

俺は迷った末、カラフルでとても可愛いラムネを選び、奥のレジに行こうとした。
すると若い店員が言った。
「お客様、来店が初めての方ですよね?良かったらそれ、サービスで差し上げます。」

俺はその言葉に甘えて貰うことにした。
帰ったら激務や酔いもあって、すぐにベッドに入り寝た。


次の朝。また憂鬱な朝が始まる。
会社に行き、朝の業務をこなし、なんだかんだで12時になっていた。

「あーお腹減ったな。そういえば昨日ラムネ貰ったな。どうせ残業あるし、ブドウ糖で集中力上げとくか。」

俺はそれを食べた。
30分くらい経ったころだろうか。
俺は何故か幸せな気持ちになって、身体中から今までにないくらいのエネルギーが溢れ出した。
気づいたら、残業も含めすべての仕事が終わっていた。

帰り道、街の光、電車の音、全てが心地よい。
近所の田んぼ、鮮やかなお花畑、羽ばたく蝶。
「ここは楽園なのか?」

次の日俺は仕事帰りにまた昨日の駄菓子屋に行った。
「あのー、ラムネください。」

いつもの店員が笑顔で答える。
「かしこまりました。ではレジでお会計を。」

お会計のため奥へ行く。やっぱりあの怖い顔の店員が値段を提示してきた。
「なに、ただのラムネなのにこんなにも高額なのか。」

買うか迷ったが、結局のところ買った。
「よし!これで明日も頑張れるぞ!」


そして朝。俺はラムネを食べて出勤した。
仕事ははかどり、今日は珍しく残業がなかった。
「あ、そうだ。今日もあの駄菓子屋に行こう。」

相変わらず暗くて不気味な路地を通った。
駄菓子屋に入ると、いつもの店員が「いらっしゃいませ」と陽気に迎えてくれた。

俺は今度はクッキーを買った。相変わらず高額だ。
もうお金がない。貯金もほとんど尽きている。

「まあ、明日は休みだし映画でも見ながら食べるか!」

次の日、俺は食べながら映画を見ていた。
とてもつまらない映画だ。だがなぜか見るのをやめようとは思わない。
同じ監督の映画を4本くらい見た。
5本目の映画も相変わらずつまらない。もう今後は見ることはないだろう。

しかし、急に楽しくなってきた。
どうでもいい映像でもゲラゲラ笑っていた。

映画が終わった後、吐き気が込み上げてきた。
トイレへ駆け込み、終わるとふと鏡を見た。
「あれ?俺ってこんなに大きかったっけ?いや、小さい?」
鏡に映る自分が歪んで見える。

「体調が悪いし明日仕事だから、今日はもう寝るか。」
そう思うが、身体が震えてそれどころではない。


俺は駄菓子が食べたくなり、給料の前払い、さらに消費者金融からお金を借り、駄菓子屋に向かった。
また駄菓子を買った。やはり高い。お金はあっという間に消えた。

俺は駄菓子生活を続けた。俺の手元には空っぽの財布だけが残った。
そこから死にたくなるほどの苦しみが待っていた。
駄菓子を食べたくて仕方ない。しかしお金がない。

強盗をしてまで金を得ようと思ったことはあるが、やる度胸もない。

「またあの不思議な国に行きたいな……。」

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