奸智のアルフレッド
蒲原二郎(キャンバラ・ディロウ)
プロローグ
第1話 贖罪と祈りの記
人生とは、しょせん、運の善し悪しでしかない。
善良なる者が耳にしたら、たちまち眉を顰めそうなこの真理を、私は、あのお方から、幾度となく、繰り返し教えられた。
いや、正確に言えば、身をもって思い知らされた。
これは、私がまだうら若き乙女の頃に、縁あって目の当たりにした、不思議な出来事の数々の、備忘録である。
その多くは、凄惨で、血塗られた物語であったから、こうしてペンを握っている私は、少なくとも、それなりの運には恵まれていたのだろう。
詳細の是非については、子孫の判断を待つしかない。
ここには、生きることの苦しみや、運命の苛烈さが、美々しい教会や、王宮を彩る見事な装飾のように、随所にちりばめられている。
ただ一つだけ確かなのは、誰が何と言おうとも、あのお方、“奸智のアルフレッド”こと、アルフレッド・パトニャン卿は、真に高潔な人物で、不世出の魔法使いだということである。
最愛の師は、どこまでも偉大だった。
私は今でも、そしておそらく永遠に、その広い背中を追い続けている。
後世に、ひとかけらの正義を有し、寛容を美徳とする友を得られんことを、切に望む。
奸智のアルフレッド 蒲原二郎(キャンバラ・ディロウ) @KanbaraJirou
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