詐欺師①
魔石もレアなの出るよ。
そんな甘言に乗せられて、俺はハムスター(金ネズ)をぷちっと殺ってしまった。
天に召されたハムちゃんを悼むように一筋の煙が立ち昇り、魔石と宝箱がコロコロと落ちた。
どちらも小さいけど金色だ。
ダニエルさんが拾って魔石はポケットに入れ、宝箱の鍵を開けた。
「やった! 管理者キーだ! これで未踏破エリアに行ける!」
なんだかテンション上がってるご様子。
「いい物出たんですか?」
「まあね」
ダニエルさんはキラキラした笑顔でレアアイテムをポケットに仕舞った。
……あんた魔石もポケットに入れてたよね?
「さて、分配だけど、普通はパーティーの人数で等分するんだよね。白ネズの魔石はたくさんあるから山分けできるけど、ドロップアイテムは一つしかない物だと分けられない。そこでどうするか。一般的な方法は二つ」
ダニエルさんは指を二本、順番に折りながら説明した。
「一つは全て持ち帰って冒険者ギルドに売却、得たお金を山分けする。もう一つは交互に一つずつ欲しい物を取っていき、余った物をお金に替えて分ける。どっちがいい?」
えーと、損がないのは全部売却だよね。
一つずつ取ってく方式だとアイテムの価値によっては不公平になるかもしれない。
持ち帰りで……と言おうとした時。
ダニエルさんが少し残念そうに。
「この関係者パス、銀ネズの箱から出たんだけど、かなりレアなんだよねえ。これがあるとダンジョンの特定の部屋に入れるんだ。僕はもう持ってるけどね」
う。
そんなことを言われると、惜しいような気がしてくるじゃないか。
「普通は交互に一つずつだけど……今日は君のビギナーズラックに頼った部分もあるよね。その分色をつけるってどう?」
「と言いますと?」
「僕が貰うのは白ネズの魔石を半分と金ネズのドロップ品。あとは全部君のでどう?」
一見、かなり譲歩されたように見える。
が、しかし。
「ダニエルさん、ダメですよ。さっき金ネズの魔石をポケットに入れたでしょ? 俺、見てましたから」
ダニエルさんは一瞬、舌打ちしそうな顔になり、またすぐ笑顔になった。
「じゃあそれも数に入れて計算し直そうか」
※
帰ってきました冒険者ギルド。
ネズミがいないっていいね。
小さいものが自分の周りをぐるぐると走り回っていない状態っていうのは、こんなに心静かに落ち着くものなんだね。
「魔石とドロップアイテム買い取りして下さい」
カウンターに並べた魔石とドロップ品を一瞥して、ソニアさんは眉を寄せた。
「ダニエルはどうしたのよ」
「なんか用事が出来たって帰る途中で別れました」
あの後、分配をやり直して、ダニエルさんの取り分は金ネズのドロップ品と銀ネズの魔石一つと白ネズの魔石30個となった。
俺の取り分は金ネズの魔石一つ、銀ネズの魔石一つ、白ネズの魔石70個、銀ネズのドロップ品二つ、白ネズのドロップ品20個。
たとえ安物でもこれだけ数があると壮観だ。
宝の山って感じ?
「で? どこに行って何をどれだけ倒してきたの?」
ソニアさんは魔石とアイテムを鑑定に掛けながら報告を求めてきた。
かくかくしかじか、と報告すると。
「あんた騙されたわね」
「は?」
騙されたって、何が?
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