第2話
「はい、どうも。私は女神です」
秋野剛の前に現れたのは、ちょっと頭の痛そうなコスプレ女だった。
「……」
そんなことを言われても返事して良いのか。つまり絡むことによって自分に被害が被るのではないかなど、リテラシーに敏感な世代だけあって、剛は即答できなかった。
「いえ、コスプレ女ではなく、女神です」
「めがみ?」
とにかく怪しんでる様子を隠すこともなく、「み」の語尾を上げることで、やや煽る感じにもなってしまったが、その女神は丁寧に答えてくれた。
「そう、人間の世界でも、神の世界でも、私は“めがみ”なのです」
恰好は……ぶっちゃけエロい。柔らかそうな素材で白いドレス。後ろから光が当たることによって映し出される体のライン。ちらっと見える胸の谷間(谷間があるくらいのカップ数)。そして薄っすら赤み掛かった長い金色の髪の毛は、前髪ぱっつんで&さらっさら。見つめてくる瞳の色はブルーやグリーンに変化を見せて、キラキラ輝いている。17歳男子高校生にとって、魅力があるもの満載だった。
「そ、その女神さんが何用でしょうか?」
ファンタジーな世界にいそうな女性が女神と言い、さっき切られたはずの首がつながっていることを確認し、いま自分がどこで何をしているのか混乱しそうになっていた。
「うーん、どこから説明しようか。今が何回目とか……、それともそもそもの初めのところからにしようか……何から知りたい?」
腕組みをして考える女神の腕に、柔らかそうな胸がしっかりと乗っかって目のやり場に困るが、現実じゃなければ見てても良いのだろうかと思いつつ、言ってる意味がわからないので、それどころでもない。
「と言われましても……ひとまず現状、これって何なのかを知りたいというか」
「それじゃあね……今回、モンスターにヤられちゃってここに戻ってきたのは……何回目だっけな」
女神は指を折って数えているが、自分は何回も死んでるのかと軽くショックを受ける剛。
「途中で数えるのを止めたんだけど、たぶん1日700回以上で、今日も振ったから、だいたい4,500回くらい?」
「は?」
想像を超える数字が出てきて、「え~っと」など問いかける言葉が出てこなかった。
「まぁ、なんて言うか、何度振ってもオール1しか出てこないから、一度現場に出してみるかってさっき試したんだけど、やっぱ1じゃ勝てないよね、ハハハハハ」
なんかすごく適当で失礼なことを言われていることはわかるので、ちょっとムカついてきたが、まだ何を聞いたら良いのやらと、剛は釈然としない。
「振るとは?」
「振ると言えば、サイコロしかなくない?」
「さいころ?」
「え? 知らないの? 一般的には1から6まであったりするけど、たまに100面体があったりする、アレ」
「サイコロは知ってる。が、サイコロを振るのと俺が何の関係が?」
「神はサイコロを振らない…のではじゃなく、実際は振ってるんだよ」
なんか「私おしゃれにシャレを言った」とドヤ顔で迫ってくる女神。その態度を見て、ファーストインプレッションとは違うような……ちょいヤバイ人なのではと思うになってきた。
「アインシュタインのヤツですよね?(それはそれで違うだろうけど)」
「おお、高校生なのに良く知ってるね~。もしかして天才?」
完全におふざけが過ぎる態度にイライラする。剛が顔を曇らせているのを隠せていなかった。
「あ~、ごめんごめん」
謝る女神だが、テヘと舌を出すところが謝る気がない。
「すでに4,500回も振ってると、感覚がマヒしちゃっててさ」
「マヒされるのは勝手だけど、なんで俺はそんなことをされてるのかが分かんないんだけど? 学校は? コンビニのバイトは?」
気づけは剛は敬語を扱っていない。本能的に「コイツは目上ではない」と感じたのだろう。
「私たち神がサイコロを振る時って、人の能力を作る時なんだよね。つまり、君は作り直される存在になってたってこと」
あまり考えたくなかったが、命にかかわることなのかと思い、唾を飲みこんだ。
「それって……学校の門を飛び降りたときに、俺は死んでしまったってことなのか?」
「う~~~~ん、ハズレ~~!」
女神は勿体ぶって、溜めた挙句指をさして「ブブ~」と不正解と述べた。
「お前は女神じゃねぇ! 敵だ敵! 人のことを何だと思ってんだよ!」
神とはいえ見た目が女なので我慢しようと思ったが、ふざけ過ぎる態度に切れるしかなかった。女神の服の胸ぐらをつかんで顔を近づけた。
「いやぁーん、エッチ」
服がはだけて、胸がこぼれそうになる。
「純朴な高校生男子でも、今はエロさを感じねぇなぁ。不思議だよ!」
とガチ怒りなのが通じたのか、女神は反省するしかなかった。
「ご、ごめん……。本当に私もノイローゼになるくらいサイコロ振ってておかしくなってるの」
今度は座り込み泣き崩れる女神を見て、神も情緒不安定になることがあるのかと同情を禁じ得ない。そして剛は冷静さを取り戻した。
「わかった、話を聞いてやるから、落ち着け」
嘘か誠か、サイコロを振り続けて7日目ってとは、そうそう急がなくても良いのかもと思い、怒りの感情を押さえて女神に目線を合わせた。
「……うん、ありがとう。実はね」
女神はこの数日の経緯を話し始めた。
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