①消えない足跡②図書館の地下 76min

 宇宙服を着た作業員が二名、巨大な建造物に降り立った。

 周囲は砂が吹きすさぶ更地となっており、眼前の建造物の威容になお拍車をかける。

「書庫とみられる地上階は全壊ですが……地下は保全され、探索が可能です。隊長、いかがなさいますか」

 長身の男はしばし勘案したのち「探索しよう」と厳粛に呟く。

「こちら第三小隊隊長フローレン。只今より部下一名と共に建造物の地下を探索する。座標は———」

「了解。現在、この地区は強力な放射能の残滓が確認されている。探索は慎重を期せよ」

 そうして報告を済ませ、二人は仄暗い地下へと進んでいった。


 地下への階段を百メートルほど下った頃だろうか。鋼鉄製とみられる巨大な扉が二人を出迎えた。高さは十メートルを優に超え、横幅も五メートルはあろうかと思われる強固な門番に、二人は固唾を飲んで目を合わせる。

「やはり、ここで間違いなさそうだ」

 隊長は拳銃のような棒を取り出す。離れてろ、と部下にハンドサインを送ると———粛々と扉を切り取り始めた。

 そうして切り取られた一メートル平方、厚さは三メートル程度の鋼鉄に息を呑みつつ、二人は内部へと侵入する。

 するとどうだろう。内部は侵入者を拒むどころか、照明や電飾で歓迎の意を示した。

 外界の崩壊を非現実の虚偽として語るように、昨日まで手入れされていたかのような煌びやかで清潔な内装。

「そうか。この星もやはり、聡明で篤信で……無力な科学者が居たのだな」

 隊長の呟きに呼応するが如く、床面から鏡の様に磨かれた一方の鉄棒が伸びる。

 二人の訪問者に見守られながら、鉄棒は一つの小型な半透明デバイスと、同じく小型な金属製のキューブを差し出した。

「これは……?」

「恐らく永久的な記憶媒体だ。あらゆる外界の浸食に耐えて継ぐには、原始的かつ物理的な記録に限るからな」

 隊長はキューブを部下に受け渡すと、深呼吸をしデバイスに触れる。すると、鮮明なカラー映像が空中に投影された。

 惑星同士の衝突から始まった映像は、やがて水中へと移り、生命の隆盛へと変わる。やがて火を起こし、言葉を話す獣が星を支配し……滅んでいった。

「四度の戦争か」

「最後に関しては……見ていられませんね。こんな広い星の、たった一隅を巡って殺し合うなんて……」

 終わりは何者にもあるものだ、と吐き捨てると……隊長は踵を返す。

「まだ探索しないのですか?」

「目当ての物は手に入れた。まずは拠点に戻って報告する」

 隊長はキューブを指し示す。それを部下はあやすように抱え込んだ。

 

 そして二人は瓦礫を押し退け地上へと上がり、拠点にも恙なく帰還することができた。

 その後あまりの報告量の多さに頭痛が止むことはなかったが、あのとき我々を迎え入れた人物の想いを考えると手を緩めるわけにもいかなかった。

「隊長、ご確認をお願いいたします」

 部下が手渡したデバイスを空中に展開する。全三百頁にも渡る書類のタイトルには、こう記されていた。


『天の川銀河オリオン腕太陽系第三惑星〝地球〟』

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