第2話 咆哮に誘われて

 結菜は今日あった"不可思議な出会い"を父に語る。

 父は興味津々に、食卓のおにぎりを頬張りながら聞いている。まだ、家の中は片付いておらず、縁側に腰を下ろして、夜風に吹かれながら語り合う二人。


 暗く染まった満月の夜、遠くから聞こえる狼の咆哮を聞きながら……


 ◻︎


 明くる朝、結菜は父と一緒に昨日入った木々のトンネルを探す。一日中、探し回る。しかし、見つからない。


「結菜、あれだね……父さんはちょいと歳をとったかもしれないね」


 そう呟き、寂しげに家に戻る。父の背中は大きく立派のように思えた。


 私は辺りが暗くなるまでにそれを探し回った。時間は限りある。陽射しが傾くまでひとりで探し回った。家の影が伸び、辺りを夕闇にさせた頃。遠くから聞こえる遠吠え。


 アッオーン!!!!


 私はその咆哮に誘われる形に自ずと足を進める。やがて家から離れ、辺りは真っ暗に木々の音色が聞こえる。やがて森を抜けて、小高い丘が目の前に立ちはだかる。


 そのてっぺんに人間3立っていた。彼らが私に気づくと、徐々に近づいてきた。私は恐怖に身体を支配されるも、全く動けない。やがて彼らは私の目の前に立ち、吠える。


 雲隠れしていた月、そのお姿を覗かせる。


 彼らは体毛が生え、牙が生え、尻尾が生え…


『我ら人狼ブラザーズ!!左から、!』


 べべんッ


 ◻︎


 彼らは結菜をみて、よだれを隠しきれていなかった。


「15日ぶりの食事だぜ!!」


 そう言い放ち、3匹は結菜へ飛びかかった。私は死を覚悟した。その瞬間、


『水遁、龍水伝』


 人狼ブラザーズの足元から爆発するような水流の間欠泉が出て、3匹を吹っ飛ばした。


「だから、言ったやろ。夜は危険なんや」


 昨日、池のほとりで出会ったソレだった。


「やっと…会えた!」


 結菜は助かったと安堵の気持ちになった。


「安心するのは早いで、此奴らはしぶてえやつなんやから」


 吹っ飛ばされて、倒れ込んだ人狼ブラザーズの一人。宇が立ち上がり、


「なにするんだ……わわ!お前は!?」


 月夜に浮かぶ雲隠れしそうな満月をバックに立ちはだかる《 河童のコタロー 》


「この森で悪事を働くオメエらはさっさと別の村に行けやい」


 そう睨みを効かせると、コタローの覇気に耐えきれず宇は怯えながら他二匹をかついで、逃げ走った。そして、彼らが見えなくなると、その睨みの方向は私に向かった。


「お前は〜なんでいここに戻ってきたんだい?!」


「わ、私はどうしても……あなたに会いたいって…なぜだか、そう感じたの!」


 結菜の胸にソレ、河童をみてから何かが突き刺さっていたのだ。


 コタローは、懐かしく結菜をかつて出会った誰かの面影と重ね合わせた。


「なるほどな、また来い。今度は詫びを持ってな」


 結菜は驚きつつも、うんと大きな笑顔でうなづいた。


 ◻︎


 これは、巡り巡る運命の物語。妖と1人の少女が紡ぐ運命のはじまり、、、



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