第9話
その内容を翠蓮は携帯を手に取り確認した。すると、麟堂学園の入学試験についてである。それを見た刹那、翠蓮は
「はぁ!?マジかよ!?」
と言いながらその場で立ち上がる。この声に驚いた雨月は、翠蓮の隣に座りながら
「ど、どうしたの?」
と話しかける。すると翠蓮は大きくため息をしながら頭を抱えながら口を開く。
「試験が明日だったんだ」
「え、試験って言うのってそんな急なものなの?」
「いや、麟堂学園の試験は3日前に来るんだよ。いかさまをさせないためにな。だけど、それが明日だったんだ。まじで最悪なんだが…」
「えぇ、何でそうなったの…?」
雨月は困惑しながら翠蓮に問う。翠蓮は先程あったことを説明しながら稲荷寿司を食べていた。説明をし終えて事情を理解した雨月は、翠蓮に同情気味の表情で言う。
「そっか、えっと…頑張ってね?」
「いや、やろうと思えば余裕で出来るんだよ。でも…虎柏が加減しろって言われたんだよな。平均的な陰陽師の生徒としてしないといけないみたいでな」
「うわ、厄介だね」
「そうなんだよ。多少は予想してたけどこれは完全に予想外だった」
翠蓮はそう言いながら霊力を抑えた。すると翠蓮の霊力は平均的な陰陽師生徒のそれになっていた。あまつさえ、それは先程までの翠蓮を見ていないと気付けないほど精巧な物である。
霊力操作をそこまでの域に達するのは相当な努力や研鑽を重ねていたことは、想像に固くない。どれ程、才能があり…霊力が多かったとしても霊力操作や熟練度はそれでは補えないのだ。その逆で霊力が少々少なくとも、霊力操作、熟練度が高ければ才能は補える。
そんなこと翠蓮の霊力は操作の繊細さに雨月は驚いて満面の笑みで翠蓮に拍手を送る。
「蓮くん、すごいよ!俺もこんなに多い霊力を操れる気がしないのに!あ、俺の場合は妖力ね」
「べ、別に…そこまで凄くねぇよ。俺は、出来ることをしただけだ」
翠蓮はそう言いながら稲荷寿司を食べながらメールの返信と質問をしていた。雨月は、少々不機嫌な表情をしながら翠蓮を見ていた。するとその視線に気づいた翠蓮が携帯を置いて、雨月の方に向き直り口を開く。
「どうしたんだよ。何か嫌なことでもあったのか?」
「……君は、もっと自分の凄さを自覚した方が良いよ」
「…俺は自分のこと凄いとは思わねぇ。だって、どんなに力があっても、大事な奴を守れなかったら意味はねぇからな」
「……君という人は、どれ程自分を突き詰めたら気が済むの」
雨月はため息をつきながら、片手で頭を抑えていた。そんな様子に翠蓮は、少々困惑しながら雨月の分の稲荷寿司が入っている器を雨月に目の前に差し出しながら
「腹一杯なら、食わないなら冷蔵庫入れとくぞ」
と言いながら翠蓮は自分の稲荷寿司が入っている器を手に取り器を下げようとしていた。すると雨月は自らの稲荷寿司が入った器を翠蓮から取り上げてふくれっ面をしながら
「食べるもん」
と言いながらパクパクと頬を膨らませながら食べていた。
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