第40話 ルルさんへ伝えたい

「ルルさん……!」


 胸が、焼けるように痛んだ。

 このままでは、ルルさんはひとりぼっちになってしまう。

 そんなことは、絶対させない。

 生徒会室へ走り出した。


「どうした、真宵。」


 机上に溜まった書類を整理していたルルさん。

 しかし、私の形相に気づくと、すぐさま傍まで来てくれた。


「……っ、その本!」


 おおよそどこまで読んだのかを察したのだろう。

 ルルさんは腰に手を当て、本から目を反らした。


「……気に病むな。プログラムが壊れれば、誰だって怖い。そう思うのは、当たり前だ。」 


 そんなこと言わないで。

 自分が一番傷ついているのに、私に気を遣っちゃだめだよ。

 ルルさんは、笑う。

 ……いや、口角を上げているだけだ。

 苦しみを誤魔化すよう必死に取り繕っている。


「ルルさん!」


 視界が潤み、ルルさんが見えない。

 鼻もつんと傷んだ。

 たくさん知ってほしい、ルルさんへの想い。

 今、私が一番伝えたいことは――


「っ!どうした急に飛びついて……」

「――私、ルルさんのことが好きです!大好きなんです!」 

「真宵。」

「だから、ルルさんをいらないなんて言わないでください!恋を知って、毎日が楽しかった!世界がキラキラして……。」

「……真宵。」

「恋を教えてくれた、あの人が大好きなんです!それなのに、酷いっ、酷いよ!」


 開発者の心無い言葉に腹が立って仕方ない。

 感情を吐き出すように涙が溢れてくる。

 手も震えて止まらない。

 ルルさんへ残酷な言葉を投げるなら、私がそれ以上の愛を送ってやる。


「ルルさん、どこにもいなくならないでください!」


 ――だってルルさんのことが好きだから。

 ルルさんとずっと一緒にいたいから。


「――真宵、顔を上げてくれ。」


 優しい声に従って顔を上げた。

 ルルさんは笑っていた。

 先ほどのような引きつった笑顔ではない。

 ――彼は、私の存在を慈しむように目を細めていた。


「ルルさん――」


 その瞳に吸い込まれた瞬間、世界の音が遠のいた。

 ――唇が触れた。

 柔らかく、温かく、痛いほど優しい。

 身体ごと溶かされ、このまま地面と一体化してしまいそうだ。

 …………って!


「なっ、えっ、ルルさん!」


 腰がぬけて、情けなく尻もちをついてしまう。


「……前から、してみたいと思っていたんだが。」


 対して、ルルさんは私の反応をじっと見つめ、唇に触れた。


「想像よりもずっと気持ちいいものだな、真宵。」

「あ、あわわわ」

「そう驚くな。まぁ、お前の涙が止まってよかった。」


 そうだけど!そうだけど!

 ルルさんは、立てない私の身体を引き寄せ、力強く抱き締めた。

 自分の身体とは違う硬く逞しい胸板が頬に当たる。

 いよいよ心臓が破裂しそうだ。


「くくっ、その反応を含め愛おしいものだな。真宵、本当にお前は俺様を楽しませてくれる。」


 耳元へ唇を寄せた。


「……実はな、お前のその言葉は、記憶を失う前にも、俺様に言ってくれた言葉なんだ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る