陽の光は月を照らし影を生む

【咎人】

　止まらない

　覚悟は出来ている。

　情欲を呼び起こすような

　目の前の女の意図を

　汲み取るように受け入れる。

　あの日の想いが

　このような代償を産んだなら

　止まりようがない。

「香澄」の待つ場所へは

　行かない

　行けるはずがない。

　地獄に落ちるまで

　この想いを遂げてみせよう。

　互いの気持ちを確かめ合うように

　何度も交わす口付けに

　理性を失わせながら

　ゆっくりゆっくり

　共有していく

　相手の全てを

「桔梗」の全てを

　指先で確かめる

　熱く濡れる欲望を

　ゆっくりと沈めていく

　甘い声と共に

　指先から伝わる

　女の情欲

　探す 探す

　声にならない声を聞き

　指先を折り曲げる。

　情欲に溺れた指先を

　相手の口内へ含ませる。

　悲しみに暮れながらも

　情欲を抑えてはいないことを

　身体で認識するように

　刻みつけるように

　共有していく。

　生まれたままの姿で

　交わっていく。

　番を探している

　あの怪物たちのように。

　交わっていく。

　濡れた情欲を

　熱く滾る情欲が

　掻き分けていく。

　ゆっくりと

　深く深く

　溺れていく。

　何度も何度も

　吐き出していく。

　何度も何度も

　打ち付けていく。

　消えない傷跡を

　舐め合うように

　何度も絡み合う

　消えてしまった何かを

　埋めるように

　快楽へ溺れていく。

　離さない

　逃がさない

　失わない

　逝かせない

　それが手向けならば

　止まらない

　抑えない

「桔梗」を愛し続けよう

　誰よりも愛しい

　誰よりも大切な

「桔梗…」

「はい…」

「愛しているよ…死ぬまで…」

「愛していますよ…死ぬまで…」

　太陽が堕ち

　月が登る。

　そんな単純明快なことを

　胸に刻みながら

　美しい月に酔いしれるように

　意識にゆっくりと蓋をする。

　互いの存在を確認しながら

　ただただ

　溺れていく。

　死ぬまでずっと

　死んでからもずっと…。

　この想いは止まらない。