【欲望】
抑えられなかった
あの夜から何度も
そう何度も
「香澄」を抱いた
至極当然だろう
夫婦であり想い人なのだから…。
「香澄」も求めれば応えてくれる。
受け入れてくれる。
魔族狩りとは死と隣り合わせの仕事。
五体満足で帰還出来ないときも無きにしも非ずだろう。
剣士であるならば尚更だ。
そんな中で
種を守るためか
はたまた昂った感情を抑えるためか
タガが外れた本能は
それを求めてしまうのだろうか
何度も何度も
甘い口付けを
優しい愛撫を
激しい営みを
その度に浮かぶのは
同じ肌
同じ腕
同じ脚
そして
違う女の顔だった
「桔梗」
頭に駆け巡る名前
記憶から消えない姿
なんとも浅ましい
所帯を持ち
次期里長候補になり
順風満帆な日々を約束され
美しく甲斐甲斐しい妻を娶り
泣き笑い
抱き愛し
里の太陽を
皆が愛するものを独占しているのに
心は
身体は
あの姿を
あの顔を
「桔梗」をずっと求めているなんて
浅ましいにも程がある。
情けないにも程がある。
狩人としても
次期里長としても
そして何より
男としても
なんと女々しいのだろうか
抑えられなかった
その顔を見た瞬間から
声を聞いた瞬間から
言葉を交わした瞬間から
傍らへと寄り添った瞬間から
浅ましく嫌らしくおぞましい感情を
抑えることが出来なかった。
唇を重ねた。
無理やりに
遮るように
言葉を紡がせないように…。
浅く短い口付けを
そして二度
次は深く…長い口付けを
細く整った顎に手を添えて
生き物のように蠢き交わり応える舌を絡ませながら
互いの情欲を確かめるように
互いの劣情を流し込むように
深く深く
口付けを交わし続けていた…。
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