【歓喜】
あれからどれくらい時が流れたのだろう。
数秒が数分にも感じられるほど
時が止まったような感覚だった。
(何故…?)
まだこの唇に残る
仄かな温もりと
生々しい感触
そして
貪るような
夢中になるような
長く深く切ない口付け
(どうして…)
戯れか 気まぐれか
はたまた他の…
こんな時でも私は
顔色を変えることはない。
変わることのない顔へ
まるで目の前の川から別れたように
一筋の雫が零れていた。
事を終え
しばらく視線を交え
そして
何も言わず立ち上がり
そのままゆっくり立ち去ったあの背中
その背中に縋り着けば
その背中に手を掛ければ
何かが変わったのか
一体何が変わるというのか
「浅ましい…」
姉を差し置いて
里を差し置いて
あの人がしたことは
全てを裏切ることだ
何故
どうして
「何も言わないのですか…」
ほんの一瞬
されど長い
不義理の中で私は
怒るでもなく
憎むでもなく
ただ…ただ…
この心の中にあるのは
浅ましく
愚かしい
歓喜の昂りだった…。
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