第3話 多勢に無勢

 誰から投げ出したのかは分からない。だが、一人が悪鬼に向かって石を投げだすと、示し合わせたように投げ出した。ただの石だから大したダメージは与えられないが、悪鬼は羽虫に集られたように、手や頭を振り回した。周りにいた人たちは狂ったように石を投げだした。一種のトランス状態だったのだろうか。そして、悪鬼が一番大きな集団のほうに動き出そうとした瞬間、草集め用のピッチフォークで悪鬼の足を刺した。当然のように刺さることは無かったが、悪鬼は虫に刺された程度の痛みは感じたようだ。そのまま何度も突き刺すも、悪鬼の大きな手で吹き飛ばされた。しかし、民衆はひるむことなく、魚取り用の銛や大鎌、丸太など持って悪鬼に向かった。大部分が蹴散らされ、振り払われているが、動けるものは再度、悪鬼にむかっていた。

 唖然としていた私も、鍬を片手に悪鬼に向かった。後ろから近付いていたが、急に悪鬼が振り向き、目の前には巨大な足が。これまでの攻撃で悪鬼の固さは理解しているので、そのまま叩きつけてもダメージを与えることは出来ないだろう。そこで、足の指、その中でも最も小さい、と言っても大人の腕ほどはあるだろうか、小指に向けて鍬を振り下ろした。目論見通りに小指は切断され、悪鬼は痛みで足を抱えた。その瞬間、丸太を抱えた奴が反対の足を掬った。悪鬼は倒れ、皆、群がるように悪鬼の顔や体に武器を叩きつけた。私も鍬を持ち直し悪鬼に向かおうとした瞬間、大きな影が頭の上に降り注いだ。

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