第4話 英雄の誕生

 気が付き、目を開けば、顔中に銛や杭を突き刺された悪鬼が倒れている。角は小さな雷を纏い最後の抵抗をしているようだ。横では誰かが俺に話しかけている。

「やったぞ、やった。お前のおかげだ」

幼馴染のタロサーだ。周りを見ると、私以外にも倒れた人たちの周りに人が集まり涙を流している。

「いや、俺じゃない、俺たちが、皆が力を合わせたから出来たんだ」

もう俺は分かっている。腹から下の感覚が無くなっているから。

「もう泣くなよ。俺はお前でお前も俺、俺もお前もみんなも一緒さ。たまたま、俺が先に行くだけだ。まさかこんな田舎でこんなことが起こるなって」

「ああ、お前は俺だ。これからは俺たちがこの村を守っていく」

「今日、村が守れたのは、お前を含めた俺たちだからな」

もう、意識が遠くなってきた。普通に畑を耕し、隣村から嫁を貰い、子を作り、その子も普通に暮らしていく。それが私の人生と思っていた。私はここで終わるが、タロサー含め生き残ったみんなが、同じように普通に暮していくのだろうなと思えば、安らかに逝けそうだ。


 悪鬼が暴れた広場には大きな石碑が立っている。その時命を落とした者たちの名前と共に、『村を救いし、英雄たちをここに称える』と、刻まれた日付は村に英雄が生まれ、死んだ日だった。

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