第4話 ぼく、服を着る
ギルドのおばちゃんたちに言われて、
ぼく用の服を作ることになった。
「人間の赤ちゃんにドワーフ用はムリだよ!」
「肩幅が合わない!」
「そもそも袖が余る!」
「いや全部余る!」
ぼく(心):
(そりゃそうだろ……ドワーフ基準で作ったら“角材サイズ”じゃん……)
おとちゃは腕を組んでうなっていた。
「レンは細ぇし柔らかいし……どう作りゃいいんだ……?」
ギルド員がぽつりと言った。
「エルフ……とか?」
みんな静まり返った。
「フローリア様に……?」
「怒られるだろ……」
「まずドワーフの仕事場に幼児って時点で怒られるのに……」
バルカンは頭をぽりぽりかきながら言う。
「まぁ……仕方ねぇか……頼むしかねぇな……」
ぼくは抱っこされながら、
“フローリア”という名前を聞いた瞬間、
胸の奥がふっとざわついた。
——……ひかり。
——……ながれる 線。
——……なにかを 教えている声。
一瞬だけ、白い景色がよぎる。
ぼく(心):
(……あれ……?また……)
でも、
おとちゃの肩に頭をのせた瞬間、
その景色は霧みたいにとけてしまった。
(……わすれた……
なんだったっけ……)
◆
おとちゃとギルド員に連れられて、
研究塔まで行くことになった。
塔の前で、
おとちゃがぼくを抱えながら深呼吸する。
「……よし。怒られねぇように、ちゃんと丁寧に頼むぞ」
「親方が緊張してるの初めて見た」
「フローリア様にだけは頭上がらないもんね」
ぼく(心):
(えっ強キャラなんだあの人……)
扉が開き、
銀髪のエルフが静かに現れた。
「……何の用かしら? バルカン」
バルカンは直立不動で言った。
「こ、こいつの服が欲しいんだ……頼む!!」
フローリアはぼくに目を向けた。
じっと見られた瞬間、
ぼくの胸がズンッと響くように熱くなる。
——……ひかり。
——……図面。
——……線がつながって……
ぼく
「……あれ……?」
フローリアが眉をひそめた。
「……何か、見えたの?」
ぼく
「……わかんない……」
心の声:
(さっきまで……なんか……知ってた気が……
でも……もうない……)
フローリアは静かに目を細めた。
「……興味深いわね」
ぼく
「ふろーりあ、きれい」
フローリア
「……あなた、将来面倒な子になりそうね」
ギルド員
「フローリア様の前で“きれい”言えるのレンだけだ……」
おとちゃ
「天才かお前……!」
ぼく
「えへへ」
◆
フローリアは布を測りながら言った。
「人間の子どもの服なんて、久しぶりね」
ぼくの肩幅、腕、脚を測っては
「……細いわ」
「……折れそうね」
「……可愛いわ」
と、ずっとつぶやいてる。
ぼく(心):
(折れないよ!?おとちゃの筋肉に挟まれても平気だったし!!)
測り終えたフローリアが、おとちゃに向き直る。
「服は作るわ。
ただし——」
バルカン
「……ただし?」
「この子、普通じゃないわよ。
近いうちに……何かが“動き出す”。
あなただけでは抱えきれなくなる」
おとちゃはぼくを抱きしめて言った。
「……関係ねぇよ。
こいつは……俺の子だ」
ぼく
「おとちゃ……」
心の声:
(うわなんか泣きそう……やめてくれ……)
フローリアはやわらかく笑った。
「そう。
なら、あなたのその腕で守りなさい。
……この子の“未来”ごと」
ぼくはただ、フローリアの白い指先を見ながら、
胸のざわつきをもう一度思い出そうとした。
でも——
やっぱりすぐに霧になって消えた。
(……むりだ……
ぼく……もう……ほとんど思い出せない……)
なのに、
レンが知らないはずの“どこか”の光だけが、
遠くでちらちらと瞬いている。
その意味が分かるのは、
まだ、ずっと先の話。
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