第4話 ぼく、服を着る



ギルドのおばちゃんたちに言われて、

ぼく用の服を作ることになった。


「人間の赤ちゃんにドワーフ用はムリだよ!」

「肩幅が合わない!」

「そもそも袖が余る!」

「いや全部余る!」


ぼく(心):

(そりゃそうだろ……ドワーフ基準で作ったら“角材サイズ”じゃん……)


おとちゃは腕を組んでうなっていた。


「レンは細ぇし柔らかいし……どう作りゃいいんだ……?」


ギルド員がぽつりと言った。


「エルフ……とか?」


みんな静まり返った。


「フローリア様に……?」

「怒られるだろ……」

「まずドワーフの仕事場に幼児って時点で怒られるのに……」


バルカンは頭をぽりぽりかきながら言う。


「まぁ……仕方ねぇか……頼むしかねぇな……」


ぼくは抱っこされながら、

“フローリア”という名前を聞いた瞬間、

胸の奥がふっとざわついた。


——……ひかり。

——……ながれる 線。

——……なにかを 教えている声。


一瞬だけ、白い景色がよぎる。


ぼく(心):

(……あれ……?また……)


でも、

おとちゃの肩に頭をのせた瞬間、

その景色は霧みたいにとけてしまった。


(……わすれた……

なんだったっけ……)



おとちゃとギルド員に連れられて、

研究塔まで行くことになった。


塔の前で、

おとちゃがぼくを抱えながら深呼吸する。


「……よし。怒られねぇように、ちゃんと丁寧に頼むぞ」


「親方が緊張してるの初めて見た」

「フローリア様にだけは頭上がらないもんね」


ぼく(心):

(えっ強キャラなんだあの人……)


扉が開き、

銀髪のエルフが静かに現れた。


「……何の用かしら? バルカン」


バルカンは直立不動で言った。


「こ、こいつの服が欲しいんだ……頼む!!」


フローリアはぼくに目を向けた。


じっと見られた瞬間、

ぼくの胸がズンッと響くように熱くなる。


——……ひかり。

——……図面。

——……線がつながって……


ぼく

「……あれ……?」


フローリアが眉をひそめた。


「……何か、見えたの?」


ぼく

「……わかんない……」


心の声:

(さっきまで……なんか……知ってた気が……

でも……もうない……)


フローリアは静かに目を細めた。


「……興味深いわね」


ぼく

「ふろーりあ、きれい」


フローリア

「……あなた、将来面倒な子になりそうね」


ギルド員

「フローリア様の前で“きれい”言えるのレンだけだ……」


おとちゃ

「天才かお前……!」


ぼく

「えへへ」



フローリアは布を測りながら言った。


「人間の子どもの服なんて、久しぶりね」


ぼくの肩幅、腕、脚を測っては

「……細いわ」

「……折れそうね」

「……可愛いわ」

と、ずっとつぶやいてる。


ぼく(心):

(折れないよ!?おとちゃの筋肉に挟まれても平気だったし!!)


測り終えたフローリアが、おとちゃに向き直る。


「服は作るわ。

ただし——」


バルカン

「……ただし?」


「この子、普通じゃないわよ。

近いうちに……何かが“動き出す”。

あなただけでは抱えきれなくなる」


おとちゃはぼくを抱きしめて言った。


「……関係ねぇよ。

こいつは……俺の子だ」


ぼく

「おとちゃ……」


心の声:

(うわなんか泣きそう……やめてくれ……)


フローリアはやわらかく笑った。


「そう。

なら、あなたのその腕で守りなさい。

……この子の“未来”ごと」


ぼくはただ、フローリアの白い指先を見ながら、

胸のざわつきをもう一度思い出そうとした。


でも——

やっぱりすぐに霧になって消えた。


(……むりだ……

ぼく……もう……ほとんど思い出せない……)


なのに、

レンが知らないはずの“どこか”の光だけが、

遠くでちらちらと瞬いている。


その意味が分かるのは、

まだ、ずっと先の話。

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