第5話 育児の奇跡ラッシュと、おとちゃ爆発



レンが生後六ヶ月になった頃。

おとちゃんはというと——


「うおおおおお寝れねぇぇぇ!!

この子、夜に元気すぎだろ!!?」


毎朝、目の下にくまを作っていた。


ギルド員:

「おとちゃん、もう無理すんな……」

親方:

「無理じゃねぇ!! 育児は戦いだ!!」


——いや、おとちゃん。寝て。と思うぼく(赤子)。


そんなある日。

親方がぼくを抱き上げた瞬間、固まった。


「……ん? レン……口開けてみろ……」


ぼくはぱくっと口を開く。


親方:

「歯ッッッ!!!!!?」

ギルド全員:

「歯ァァァァァァァ!?!?」


六ヶ月で生えてくるの普通なんだけど、

親方のリアクションは戦場級だった。


「な、なんで尖ってんだ!?

鍛冶で欠けねぇか!? 強度大丈夫か!?」


レン(内心):

——そこ心配するとこじゃない。


さらにその直後。


ぼくは喉を震わせて

「……おと……しゃ……」


親方:

「おと……しゃ……!?!??」

ギルド員:

「今言ったぞ!!!」

「言語反応だ!!!」

「親方のこと呼んだぞ!!!」


親方はレンを高く掲げて震えた。


「うおおおおおおおお!!!!

レン!! レン!! おとちゃんって言ったぁぁぁ!!」


レン(内心):

——“おとしゃ”なんだけどね。まあいいか。


ギルドが泣いて笑って酒盛りを始める。

六ヶ月児の“初語”で宴が始まる鍛冶ギルド、やべぇ。



ある日。

親方はフローリアの研究室に飛び込んだ。


「フローリアァァ!!

レンってやつは六ヶ月で歯が生えた!!」


フローリア:

「普通です」


「レンは“おとしゃ”って言った!!」


「それも普通です」


「……離乳食ってのを食わせるらしいんだが、

ドワーフ流でそのまま肉を——」


「絶対にダメです!!!!!!?」


研究塔が爆発するかの勢いで怒るフローリア。


「人間の赤子に肉の塊なんて渡したら死にます!!

柔らかい粥状のものから段階的に……!」


親方:

「繊細だな!! 人間てやつは!!」


ギルド員:

「“粥”……?それは武器の名前か?」

「違う!!食べ物!!」


フローリアはレンのために

“野菜粥・果物ペースト・麦粥”を用意し、

親方とギルド員が全員で味見して悶絶。


「味ねぇ!!」

「これが食い物!? エルフはこんなもん食わせんのか!?」

フローリア:

「赤子用です」


親方

「レンが食べるなら……おとちゃん何でも作る!!」


やっぱり親バカ。



そして——

レン生後九ヶ月。


その日、ギルドの床でつかまり立ちしていたぼくは、

ふら……ふら……と前に足を踏み出した。


ギルド員

「……おい」

「おいおい」

「親方ァァァァァァ!!!」


親方は作業台から振り返り、

ぼくの姿を見た瞬間。


固まる。


ぼくは二歩、三歩と歩いた。


親方:

「…………歩いてる…………?」


ギルド全員:

「歩いてる!!!」

「レンが歩いてる!!!」

「天才かぁぁぁ!!!」


親方は膝から崩れ落ちた。


「……レン……!!

すげぇ……すげぇよ……!!

歩いたぁぁぁぁぁぁ……!!!」


レン(内心):

——親方、泣きながら抱き上げるのはやめて。揺れる。



そして一歳。


「おとちゃ」

「おとちゃ、すき」

「にこー」


親方:

「うわああああああああああああ!!!!

かわいすぎるぅぅぅぅ!!!!」


ギルド員:

「“ちゅき”いただきましたぁぁぁ!!」

「親方、昇天するな!!」


親方は本気で気絶しかけた。


「なんだこの子……天使か……?

俺の……息子か……?」


レン(内心):

——はい、あなたの息子です。


こうしてぼくとおとちゃんの生活は、

毎日が幸せで、びっくりで、笑いだらけで——


気づくと

ギルド全員が“育児チーム”になっていた。

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