第3話 服がねぇ!そして、エルフの先生へ


翌朝。

おとちゃん(親方)がぼくを抱えてギルドに現れた瞬間、

女ドワーフたちが怪しい目つきで近寄ってきた。


「はい親方。まず……その子の服どうすんの?」


親方は胸を張った。


「作るに決まってんだろ!

ほら見ろ、昨日のうちに縫ったんだ!」


自信満々で取り出した服を見たとたん、

ギルド全員が沈黙した。


女ドワーフA:

「……親方?」


女ドワーフB:

「……これ……ドワーフの“乳児用”サイズだよね」


親方:

「あったり前だろ。うちのギルドの標準サイズ——」


「「ぶかぶかすぎんだろ!!!」」

ギルド総ツッコミ。


ぼく(内心):

——袖の中で迷子になりそうだわこれ。


親方はしょんぼり肩を落とした。


「だって……人間の子供のサイズなんざ知らねぇよ……」


女ドワーフAはため息をついた。


「しょうがないね……

人間の赤ん坊の服なんて、普段作らないし」


女ドワーフB:

「作れる種族なんて限られてるよ。

器用で、細かい裁縫が得意で……」


女ドワーフたちの視線が、

ひとつの方向に集中した。


親方:

「…………まさか」


女ドワーフ全員:

「エルフ!!」


親方:

「嫌だ!!!!!!」


ギルド全員爆笑。


女ドワーフC:

「親方、服が必要なんだから仕方ないでしょ!

エルフの仕立て屋は腕がいいのよ!」


女ドワーフA:

「ほら、“フローリア先生”に相談しな。

あのエルフ、あんたの昔馴染みでしょ?」


親方は耳まで赤くして顔をしかめた。


「昔馴染みっていうか……

技術論で喧嘩ばっかしてた仲っていうか……」


ギルド長がパンと手を叩く。


「決まりだな。親方、お前が行け」


「おい待て!! 心の準備を……!」


女ドワーフA:

「親方が連れて行けば安心でしょ。

おとちゃんなんだから」


親方:

「“おとちゃん”って呼ぶな!!!」


レン(内心):

——でも事実なんだよなぁ。


こうして、

ぼくと親方はエルフの研究塔へ向かった。



エルフの塔は静かで、冷たい空気が漂っていた。

木々の間から光が降り注ぎ、

空気そのものが澄んでいるように感じる。


親方は緊張でゴツい肩をすくめている。


「……いいかレン。エルフは繊細なんだ。

怒らせるとややこしいからな……」


——210歳ドワーフが何ビビってんだ。


塔の扉が音もなく開いた。


そこに立っていたのは——


白銀の長い髪。

氷のように澄んだ瞳。

清潔な白いローブ。

そして、静かな空気をまとった美しいエルフ。


フローリア・ミルエル。

年齢680歳。

エルフ社会では“まだ若手の才媛”。


フローリアはぼくらに目を向けると、

わずかに眉を動かした。


「……バルカン。珍しいわね。

何年ぶりかしら」


親方は妙に姿勢を正した。


「……すまんフローリア。

人間の赤ん坊の服が必要でな。

仕立てを頼めねぇか?」


フローリアは静かにぼくへ視線を落とす。


その瞬間。

ぼくの体の奥で、魔力がゆらりと揺れた。


フローリアの瞳が細くなる。


「…………この子。

魔力の“流れ”を……見ている?」


親方:

「はあ!? 三ヶ月だぞ!?

そんなわけあるか!!」


ぼく(内心):

——いや、見えちゃってるんだよなぁこれが。


フローリアはゆっくりとぼくを抱き上げた。

赤ん坊のぼくを扱う手が、妙に優しい。


「……面白い。

私の研究室に来なさい。

服は私が作る」


親方:

「いやお前絶対興味本位だろ!!

レンを実験に使うんじゃねぇぞ!!」


フローリアはふっと微笑した。


「安心しなさい。

……赤ん坊に害を与えるほど私は落ちぶれていないわ」


——このエルフ、絶対すごい人。


こうして、

ぼくはフローリア先生との出会いを果たした。


次に起きることを、

この時はまだ知らない。


——ぼくが、エルフの天才にとんでもなく気に入られる未来なんて。

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