ゆかりん異世界日記 其の二:異世界でも楽○は届く

異世界でもスマホが使える。

それがどれだけヤバいことなのか、あたしは今朝やっと理解した。


――寝ぼけながら通販サイトを見てて、思わず叫んだ。


「えーっと、いつもの化粧水と……あっ、あたし転生したんだった。

 ……え、ポチれた!? えぇっ!?」


そう、普通に通販サイトで買い物ができたのだ。


ダメもとでコスメを注文してみたら、

すぐに部屋の真ん中にピカッと光の柱が立ち、

【お届け物です】のシステム音とともに、段ボールが出現した。


「……○天、異世界対応してたの……?」(楽○カードマンは異世界人なのでは?)


支払い方法も面白いの!

金貨をスマホに近づけると『すっ』と吸い込まれてチャージされるの!

魔力式ペイ? 筋肉ペイ? とにかく金貨重くて困ってたから、全部チャージしちゃった♪


そんな奇跡のテクノロジーを共有したくて、アリシア姫を部屋に呼んだ。


「これが化粧水って物なのね? お肌がすべすべになるの?」

「うん、こっちは導入液って言ってね、化粧水の前に使うと浸透がよくなるの」

「なるほど……ゆかりんの世界のアイテムって凄いのね!」


完全に女子会モードだ。

戦いや筋肉とは無縁の、平和で楽しい時間。

なんか、久しぶりだな。


「あっ、このリップ可愛い!」

「それ日本でも人気だったやつ! 発色が最高なんだよね~」

「ゆかりん、なんだかお肌も艶々になってない?」

「それは筋肉の血行効果よ」

「またそれ!」


ふたりで笑い転げる。


ついでに通販でお菓子とワインも注文してしまった。

テーブルにはポテチ、チーズ、スパークリングワイン。

異世界の王女と日本のOLが、異空間女子会。


「なんなのかしら、このお菓子……止まらない……!」

「わかる。やめられない、とまらない」


飲んで食べて、夜更けまでしゃべった。

お互いの世界の恋バナや、王女として、OLとしての苦労話。

戦場とは真逆の、甘くてゆるい夜。


でも、最後にふと我に返る。


「……やばい、これ続けたら太るわ」

「太ったらまた筋肉で戻せばいいじゃない!」

「いや、そういう問題じゃないのよ!」


笑いながら、あたしはスマホをチラ見した。

画面には小さくメッセージが表示されている。


【神:筋肉と共に精神も鍛えるべし。夜のスナック菓子、ダメゼッタイ】


今回ばかりは、返す言葉もなかった。

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