第七話:筋肉聖女の休日!常夏の島でリゾート&あやしいパーティー! 〜初めてのピンチは魔酒の味〜
南国行きの雲の上、あたしはリュガルドの背にまたがって飛んでいた。
「うんうん! 現地の動物に乗って写真を撮るのって観光の定番よね〜♪」←姫と一緒に自撮りしながら
「風が気持ちいいですね、ゆかりん!」
あたしの後ろに乗っているアリシア姫は、美しい髪をかきあげている。
「そうねぇ、これぞ異世界アクティビティって感じよねぇ」
「あ、姐御に喜んで貰えて俺うれしいよ……ハァハァ……」(姐御の筋肉が俺の背中に……)
「ちょっとアンタ、変なこと考えてないでしょうね?」←息が荒いのを怪しんだゆかりん
「なっ、なんにもないです姐御!!!」←焦ってる
◆
着いたのは透き通る海と白い砂浜の国――
観光客で賑わう街を前に、あたしはスマホを取り出した。
「さて、まずは……水着がなくっちゃね」
通販アプリを起動し、水着を三着購入。
「わたくしの分もあるのは嬉しいのですが、この見た目は……」
どうやら王女という立場上、海水浴なんてしたことがなかったみたい。
「いいえ! 王女たるもの、やるときはやりますわ!」
すぐに届いた段ボールには、あたし用のスポーツビキニ、アリシア様用の(悩み抜いて選んだ)フリル付きワンピース、リュガルド用のトランクス。
三人で海へ飛び込むと、南国の太陽と潮風が最高だった。
「ゆかりん様の筋肉、まるで神像のようです!」
「言い方!」
「姫様もお綺麗です!」
「あなたは泳ぐより褒めるのが仕事なの?」
リュガルドのしっぽが波を立て、あたしたちは笑い転げた。
「ふふっ、楽しい水着回ね」(あたしはいつもマイクロビキニ回だけど)
そんな楽しい日の午後――王宮の使者が砂浜に現れた。
「筋肉聖女ゆかりん様。各国の代表が集う勲章授与式に、ぜひご出席を」
王宮主催、各国大使も列席、あたしたちのこれまでの功績を称える式典らしい。
「やりましたわね、ゆかりん! これで正式に英雄よ!
「形式ばったのは苦手だけど、断る理由もないかー」(社会に出てから表彰されたことなかったな)
◆
数日後。南国王宮の迎賓館はきらびやかに飾られ、各国の使節たちがずらりと並んでいた。
あたしたちは礼服姿――黄金のマイクロビキニでの出席を求められたけど断った。
国王が立ち上がる。
「異世界より来たりし筋肉聖女ゆかりんよ。その勇気と筋肉を称え――」
と、厳かな声が響く。
パーティが始まれば、アリシア姫もリュガルドも大はしゃぎ。
あたしはこういう場なんで自重してたんだけど……初めて飲む不思議なお酒が止まらない。
「……ふわぁ、ちょっと飲みすぎたかも……」
揺れるシャンデリアを見上げながら、意識が遠のいていく。
「
誰かの声もよく聞こえない……。
◆
目を覚ますと、酔いはすっかり醒め冷たい石造りの部屋に居た。
腕と脚が鎖で縛られ、壁に貼り付けられている。
無駄に胸が目立つように縛られてるけど、目立つほどないわよ残念だったわね。
「……くっ、殺せ!」(こういうときのセリフ、これで合ってる?)
耳に響く笑い声。
「授与式は全て幻想……やはり酒の席で油断したな、筋肉聖女ゆかりんよ。
吾は四天王の最後の一人。智謀のシグレというものだ」
その細身の魔族は、いやらしい笑みを浮かべている。
やはり酒の席でって、コイツ……あたしのことを知ってる!
「今までの貴様の動き、戦闘データ、嗜好、スリーサイズ、すべて解析させてもらった」
足元には魔法陣が輝く。
「これは一体……!」(スリーサイズに何の関係があるのよ!)
「
シグレが杖を鳴らすと、空間に無数の数字が浮かび上がった。
「吾の能力を味わうがいい――
フフフ……与えられた計算問題を解けねば、魂が消えるぞ。
さぁ足掻いて見せよ! 筋肉バカには解けないだろうがな!」
眼の前に問題が次々と浮かび上がってくる!
数式、図形、確率――でもねッ!
「ふふっ、こんなもの朝飯前よ」
あたしは胸を張る。(縛られてるけど)
「伊達に経理部で地獄の月末処理をしてなかったのよッ!」
OL時代に叩き込まれた計算スキルが炸裂。
子供の頃ソロバン教室で会得した脳内ソロバンが、次々と正答を弾き出す!
「そんなはずは……! 脳筋なのに計算が得意な人類など居るはずが……!?」
「そういうのを決めつけっていうのよ! さぁ!これで最終問題も解けたわッ!」
その瞬間、拘束が弾け飛ぶ!
そこへ天井を突き破り、リュガルドに乗ったアリシア姫が降りてきた。
「ゆかりん! 助けに来たわよ!無事!?」
「あ”ね”ご〜〜〜!」←泣きじゃくってる
「よくも、わたくしの
「はい! 姫様!」
アリシア姫が風魔法を放ち、リュガルドが火球を吐く。
「合体技! 火炎旋風!」
結界が砕け散り、魔力が体に戻る。
「二人ともナイス連携! 筋肉、再覚醒!
マッシブ・マキシマム・マッスル!!!」←今考えたスキル発動のセリフ
ボッ!
心なしかいつもより立派な筋肉。
「アンタの小細工なんて、筋肉とソロバンの前には無力よッ!」
――ゴォォォッ!
あたしの両腕から巻き起こる風圧でシグレは城ごと消し飛んだ。
【腕ハリケーンのスキルレベルが上がりました】
◆
数日後、今度こそ本物の授与式。
東国、西国の代表者と南国国王、そして央国代表アリシア姫が並び、
それぞれの勲章が、あたしの胸に付けられる。
最後に勲章を付けたアリシア姫が言う。
「これで、四天王は全滅。残るは北国の魔王のみですね」
「ええ、でもその前に……」
リゾートホテルのテラス。
波の音を聞きながら、あたしは魔力入りの酒を片手に笑った。
「南国のビーチ、もう一回くらい満喫してからでいいわよね?」
「はいっ!」と姫も笑う。
「姐御の水着姿がまた見られてうれしい!」とリュガルド。
「まったく、あたしにも乙女の恥じらいはあるんだからね!」
笑い声が波に溶け、暖かな夏の空に星が瞬いた。
しばしの休息――だって、あたし達が次に向かうのは、魔王城のある
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