第二話:服を求めて、筋肉でダンジョン攻略 〜バフがなくても強かった〜
バフが切れた瞬間、あたしは絶句した。
……全裸だった。
いや、正確には、さっきまでの筋肉がなくなった結果、かろうじて張り付いていた服(だったボロ布)が取れて、何も着ていない状態になってしまった。
「……ま、まずい。こんなところで裸になる趣味はないってば……!」
とにかく服ね。服を探さないと。でも、人に会うのはまずい!
あたしは
森を歩き続けて数時間。
お腹は空くし、虫には刺されるし、服はないしで、すでに限界が近い。
そのとき、茂みの向こうに、ぽっかりと口を開けた洞窟があった。
「……ダンジョン?」
試しに指を鳴らしてみた。
パチンッ、と乾いた音。
――中のスライムが爆散した。
【レベルが上がりました】
「あ、これ……楽勝っぽいわね」
筋肉モードのときほどじゃないけど、素のままで充分強いらしい。
結局パッチンパッチンするだけで、ダンジョンを楽々進めてしまう。
【
「これ、指弾っていうのね」
◆
最深部のボス部屋らしき場所に到達。
ダンジョンボスの巨大ゴブリンは、指パッチンを耐えたので、腕を降ってみたら風圧で消し飛んだ。
【腕ハリケーンを習得しました】
「……バフなしでもこれって、神様、どんな脳筋調整してんのよ……」
ボスを倒したことで現れた宝箱を開けると、まばゆい光とともに出てきたのは――
【黄金のマイクロビキニを入手しました】
「……え? 黄金の……マイクロビキニ?」
目を疑った。
いや、でも、他に何も入ってない。
でも――これで隠さなきゃいけない場所は、ギリ隠せるね!
「……うん。仕方ない! 全裸よりはマシ!」
あたしは覚悟を決めて、黄金のマイクロビキニを装着した。
【容姿が100上がりました】
反射する光が眩しい。これなら筋肉見せ放題。いや、そういう機能いらないから!
◆
森を抜け、ようやく村を見つけた。
空腹と疲労で、もはや羞恥心のバリアが崩壊しかけていた。
もうこの姿を見られてもいい、とにかく飯と可能ならビール。
「……お願い、誰か……裸見られてもダメージ少なめのおばさんか誰か……」
――そんな願いが、当然のように叶う。
「あらまあ!! なんてひどいことを!!」
通りかかったおばさんと、手をつないだ小さな女の子が目を見開いた。(教育上よくないわ)
「追い剥ぎに遭ったのね!? かわいそうに!」
「えっ、あ、いや違……」(服は筋肉で弾けたんです)
否定する間もなく、おばさんに腕をつかまれて引っ張られる。
気づけば、村の家の中で湯気の立つスープとパンを差し出されていた。
「しっかり食べなさい。服も貸してあげるわよ」
――まさかマイクロビキニからの、服と晩飯ゲット。
人生、何が幸いするか分からない。
◆
夕食後、おばさんが世間話のように言った。
「最近ね、近くのダンジョンから魔物が出て困ってるのよ」
思わずパンを食べる手が止まる。
うっ、たぶん、それ……あたしがさっき崩壊させたダンジョンだ。(指パッチンで)
「そうなんですか。でも、しばらくは平和になるかもしれませんよ」
苦笑しながらごまかす。
「そうだといいわねぇ」
そう言って笑うおばさんの優しさが、胸に沁みた。
神様はズレてるけど、この世界は意外と悪くないのかもしれない。
その夜はおばさんの家に泊めてもらい、翌朝。
「服も手に入ったし、ご飯もおいしかったし、ちょっとしたホームステイだったわね!」
朝日を浴びながら、あたしはぐっと背伸びをした。
「よーし!次は観光旅行だ!」
目的地は、スマホ(なぜかネットも使えた)で見つけた港町!
「
安全に、楽しく。筋肉は、とっておきで。
異世界の旅、本格始動!!!
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