最強自己バフ、筋肉モリモリ紀行! ~神様の勘違いでムキムキになった女だけど、悪くないかも~
タウフ
ゆかりん旅立ち編
第一話:転生したら最強バッファーだったけど自分にしか効果がないらしい
あたしは残業続きの平凡なOL、
今日も遅くなった帰り道、あしたは休み。サブスクでアニメを見ながらビールでも――
そう思った矢先。
「危ない!」
交差点に飛び出した小さな子供。
反射的に手を伸ばし、突き飛ばす。
そして――身代わりになったあたしの視界に迫るのは、トラックのヘッドライトだった。
――あ、これ、異世界転生モノのやつでは?
そんな間抜けな思考を最後に、意識が途切れた。
◆
目を覚ますと、真っ白な空間。
そこには金髪マッチョでブーメランパンツ一丁の神様が、土下座していた。
「す、すみません! 本来あなたは寿命まで生きる予定でしたが、子供を助けるのは想定外で……!」
「え、やっぱり、あたし死んじゃったんですか?」
「はい! でーすので! お詫びに特別ボーナスとして――お好きな世界への転生と、お好きな能力を授与します!」
神様の腰は低いがテンションは高い。
筋肉、テカテカしてる。パンツ、モッコリしてる。
「な、何か願いはありますか? 何でもいいですよ!」
「じゃあ……観光地多めの異世界に転生で、あと安全に暮らせる力がほしいです。旅行したいし」
「安全、ですね! つまり、攻守を兼ね備えた最強の補助魔法! 了解!」
「補助魔法? ま、まあいいですけど……」
「それと――あなた、筋肉キャラが好きでしたね?」
「え、ああ、まあ好きですけど、それがなにか?」←筋肉キャラが推しになりがち
「では! おまけで筋肉の良さを実感できる能力も付与しておきましょう! 世界を筋肉で平和に!」
「……え?」
返事をするより早く、光がはじけた。
◆
――目を開けると、草原。
青空。心地よい風。どこまでも広がる異世界の大地。
「ほんとに来ちゃった……」
足元にはスマホ。ちょっと見た目は変わってるけど普通に使える。
これでステータスの確認もできるみたい。
【名前:ゆかりん】
【レベル:1】
【スキル:身体強化(対象:自分のみ)】
「……自分のみ? バッファーって、か弱い後衛女子ポジなのに?
ま、まあ自分が安全ならいいか」
試しに使ってみる。
「スキル身体強化発動ーッ! っと!」
次の瞬間、身体の内側が爆発したような
バチーンと服が弾け飛び、筋肉が隆起する。
「な、なにこれ!? なにこの腕!? ふっっと!!」
自分の姿を確認するため、慌ててスマホを使って自撮り。
画面に映ったのは――バトル系漫画の筋肉キャラみたいな身体をした女。
「……やだ……これがあたし……こんな筋肉モリモリの女……悪くないかも!」
力がみなぎる。視界が冴える。風の流れまで感じる。エネルギーの流れが見える。
その時――茂みが揺れた。
ぷるん、とゼリーみたいなスライムが顔を出す。
牙も毒もない、いかにも最弱モンスター。
「試しに、ちょっとだけ……」
指を鳴らした。
パチンッ!
――ドンッ!!
地面ごと吹き飛ぶスライム。
衝撃波が草原を伝ってゆく。
そして聞こえてくるシステム音。
【レベルが上がりました】
「……これ、やばいわね」←愉悦
神様の言葉が頭をよぎる。
『筋肉は世界を救う』
たぶん、あれ、冗談じゃなかったんだ。
あたしは高らかに笑った。
「うん、最高。観るより、なる方がずっとよかったんだ!」
――こうして、あたしの最強バフ(効果は自分に限る)持ち女旅が始まったのだ。
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