#6 実状

目の前の青年――秋本は地面に手を当て何かを考えているようなそぶりを

急に見せ始めた。


「冬野さん――――俺、もう1個変わったものがあるんですよ。あの日から。」


彼はそう俺に言った。

そしてこの行動をしている。

どういう意味だろうか。


「――――くッ」


秋本は急に顔をゆがませる。

冬野はそばに駆け寄った。


「だいじょうぶか?」


その言葉に返事はない。

なにか別の世界で何かと戦っているようだった。

彼のは5分ほど続いた。

そのあと彼は目をがっとひらいた。


「――――。」


秋本は地面から手をはなすとゆらっと体がかたむく。

そして呆然と立ち尽くしていた。


「何が起きたんだ?」


今起きた出来事はただ彼の内のことばかり。

自分にとってはただ青年が地面に手を置いて、何故か眉間に皺を寄せ、

5分くらいそれは続き、その後ゆらっとしながらも元に戻るという、

通常の生活なら少しおかしい動きだが、何をしているのかは全くわからなかった。


「冬野さん――――。」


急に彼が自分の名前を呼ぶ。


「なんだ?」

「俺たち、とんでもないことに巻き込まれた可能性あります。」

「とんでもないこと?」

「――――――ここは...。」


秋本の顔には若干の怯えがあった。

今の瞬間に何の怯えを感じたのか、彼は何者なのだろうと冬野は思った。


「あっ。」


彼は何かに気づく。

自分の背後に数人の足音、なにかのグループが俺たちに近寄ってきたと悟った。


「誰だ。」

「――――。AP感知。」


振り向くと黒い集団が俺たちの周りを囲んでいた。

そしてリーダーのような1人が何かを取り出し、つぶやいた。


「え、なに!?」


横にいた秋本が慌てる。


「秋本!お前ら、何が目的だ。俺は警察だぞ。」


黒い集団の2人に彼は手を拘束されかかっていた。

そんな集団を前に俺は手帳を取り出す。

すると一瞬手や足がとまった。


「冬野さん、警察だったんですか!?」

「今は、それじゃない。」

「そうですけど...!」

「油断するなよ、秋本。」

「――――はい。」


秋本は敵に捕まりながらも、なんとかほどこうとしていた。

俺は、どう動くべきか。


「――――決行。」


リーダー格はなにか考えた後つぶやくように発した。

まずい。彼らが的外れの動きをはじめる。

直感にサイレンがなる。

敵が俺たちに全速力にむかってくる。


俺は、拳をにぎりしめた。


世界から音がなくなる。

目の前の彼らのスピードがだんだんと遅くなる。

次の瞬間、なにかの力がはたらいた。


「えっ。」


口から音が漏れる。

握りしめた拳をはらった途端、そのはらいの風にそって

強い空気が敵をなぎ倒していった。


「ふ、ふゆの、冬野さん!?」


秋本が慌てたように俺の名前を叫ぶ。


「なにが――――。」


俺は自分の手を見つめた。

しかし、今自分には数分前とはなにか違う感覚があった。


「NR再感知。――――また別のものが出現。どうしますか。」


リーダー格が慌てた様子でまたつぶやく。

周りのものたちもまた足をとめていた。


「そうですか。――――皆、撤退。」


リーダーの言葉に反応するかのように、彼らは整列する。

そして、


「消えた。」

「冬野さん――――...あれって。」

「いや、俺も全くわからん。」


俺も、さっきの秋本のように呆然とたちつくす他なかった。








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