世界への新曲
第7話 孤独からの解放
【孤独からの解放】
テオがリョウコ氏の前でCm7を弾き、「生まれ変わり」の運命を世界に証明した後、彼の魂は完全に解放された。彼はもはやジョン・レノンの亡霊でも、過去を失ったテオ・チャールズでもなかった。
彼は、二つの愛の記憶を背負い、日本語の愛の悲しみを知る、新しいメッセンジャーとなった。
ニューヨークでの成功を受け、ユキはテオに、ジョン・レノンの未完成のメロディと、テオが発見したCm7を核とした、完全な新曲の制作を促した。
「テオ。あなたの使命は、愛を語ることではないわ。愛を歌うことよ。」
テオは、スタジオに籠もった。彼の指は、以前の強迫観念から解放され、自由に鍵盤の上を舞った。
テオ・チャールズの孤独と失恋の記憶、ジョン・レノンの世界への渇望、そしてユキへの新しい愛。
すべての感情が、Cm7(マイナーセブンス)という和音を中心に、普遍的な平和のメロディへと昇華されていった。
【新曲「45年後のイマジン」】
テオとユキは、完成した新曲『45年後のイマジン』を、かつてジョン・レノンが暗殺された場所の向かい、セントラルパークのストロベリー・フィールズで、全世界に向けてライブ配信する「平和コンサート」を企画した。
コンサート当日。数万人の群衆がストロベリー・フィールズを埋め尽くした。
テオがステージに上がると、彼の横には古いアップライトピアノと、アコースティックギターが置かれていた。
ユキは、白く長いドレスを纏い、テオの隣に静かに立っていた。
テオは、ピアノに向かい、静かに語り始めた。流暢な日本語と、そして英語が、交互に世界に響いた。
「私は、愛を失い、故郷を失った男です。しかし、孤独な場所でしか生まれない愛があると知りました。」
そして、テオは新曲を弾き始めた。
新曲『45年後のイマジン』は、ジョン・レノンの『イマジン』の懐かしいメロディで始まるが、テオのCm7が加わることで、甘く、しかし悲しみを内包した、全く新しい響きを持っていた。
曲が進むにつれ、テオは立ち上がり、ギターを抱えた。
彼が力強くストロークするギターの音は、かつてジョンが訴えかけた「愛のメッセージ」を、現代の若者にも届く力強いロックサウンドへと進化させていた。
【最後の歌詞:平和への挑戦】
曲のクライマックス。テオは、日本語で、そしてジョン・レノンそのままの声色で、メッセージを歌い上げた。
"Imagine there's no borders, Imagine there's no past..."
(想像してごらん、国境のない世界を。過去のない世界を。)
そして、テオは、日本語で、最終節を歌い上げた。
「遠い故郷を知るからこそ、独りじゃないと、今は言えるだろう。」
「想像(おも)い描き続けよう、愛は孤独な場所で生まれるから。」
Cm7の和音と共に曲が終わり、静寂が訪れると、ユキはテオの手を握り、日本語で世界に語りかけた。
「私たち、テオとユキは、愛と孤独の二重の運命を歌い続けます。45年後のイマジンは、平和を想像するだけでは終わらない。孤独を恐れず、愛を信じ続ける、最も過激な平和への挑戦です。」
テオとユキのメッセージは、世界中に響き渡り、愛と平和の新しい時代の幕開けを告げた。
彼らは、ジョン・レノンの魂が、テオ・チャールズとして、日本語の愛を通して、現代の使命を全うしたことを証明した。
「45年後のイマジン」は、世界的な大ヒットとなり、テオとユキは、二重の運命を分かち合いながら、世界を旅する平和のメッセンジャーとして、長く活動を続けることになった。
【重要なお知らせ】
本作品はフィクションであり、実在の人物、団体、場所とは一切関係ありません。作中の「茶室での会話」や「楽曲の秘密」に関する描写は、物語を構築するための創作であり、歴史的・音楽的事実とは異なります。
なお、本作品は、商業的な目的で創作したものでは、無い事を付け加えさせて頂きます。
45年後のイマジン 沢 一人 @s-hitori
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