第3話 異世界なのに真面目に消しバトするって?

(あらすじ)

大会の受付でとりあえず出場する田中。

対戦相手は前回大会ベスト4の女、森嶋 雛木。

相手の消しゴムは耐久力が高く、田中の消しゴムとかなり相性が悪い。

田中は、無事初戦を突破できるのか ———



—————————————————————————————————————



まずは先攻、後攻を決めるじゃんけんだ。


「まずは、じゃんけんによって先攻と後攻を決めます!」


実況席が盛り上げる。


「さいしょはグー!」


お互いに拳を構える。


「「じゃんけん」」

「「ポン!!」」


お互いに言い合う。

僕が出したのはチョキで、相手が出したのは、グーだ。


「じゃんけんは、森嶋 雛木選手が勝ちました!!」

「森嶋選手は、後攻を選択しています!」


どうやらこちらが先攻のようだ。


「この大会では、3ストック制を採用しています!」


「先に、3ストック使った方が、この試合の敗者となります!」


基本的に、消しバト公式ルールには残機がありそれを使い切った方の負けだ。


「それでは!試合、スタートォ!!」


実況席にも勢いがある。


まず俺はなるべく真ん中の方へ照準を向ける。


スピードタイプは軽く、落とされやすいため、真ん中に陣取っておかなければ、すぐに落とされてしまったりする。


二回行動が可能なので、確実に真ん中へ消しゴムを進める。


さて、相手はどう動いてくるかな。


相手は、直接こっちを狙って、フルパワーで当ててきた。


「おぉっと!これは森嶋選手が田中選手の消しゴムを端へ追いやった!」

「田中選手、早くも負けの危機だぁ!」


もう机の端まで追いやられてしまった。


対して相手の消しゴムは僕の消しゴムをブレーキ代わりにしたのか、真ん中にいる。


消しバトにおいては常に真ん中にいる、つまりライン回復が重要だ。


ラインさえしっかりしていれば、こちらが落とされることはない。


二回行動もできる。ここは落ち着いていく。


冷静に考えると、真ん中にいる相手の消しゴムをどかさなければ、至近距離で重い一発を食らってしまう。


だから、最初の一発で真ん中から相手を遠ざけ、ラインを回復する。


威力を増させるため、相手の消しゴムがどこに行くかはわからないものの、強気に、遠心力を利用して、回転をかけて打つ。


そうして僕は、回転をかけ、まっすぐ相手の消しゴムへあてた。


「おーっと!田中選手の消しゴムが森嶋選手の消しゴムにあたったものの、全く動く気配がない!!」


確実に三角定規で薙ぎ払えたと思ったのだが、相手の消しゴムが重すぎて、少しも動かない。


「ふん。前回準優勝者って聞いてたけど、大したことなさそうね。」


バトル漫画でしか聞かないような煽りをかましてきた。


落ち着け。冷静になれ。あと一回行動数は残ってる。


そうして、僕はもう一度、相手の消しゴムにアタックした。


しかし、びくともしない。


「おおっと!田中選手と森嶋選手の消しゴムが至近距離だぁ!!」


これは、本当にまずい。


そのまま、僕の消しゴムは重い一撃をくらい、ステージから落ちてしまった。


「おおっと!田中選手、痛恨のミス! 至近距離から森嶋選手の一撃をくらい、一ストック失ってしまった!!」


「だが、森嶋選手の消しゴムは、田中選手を落とすために真ん中から少しずれた位置にある!これは田中選手にとってチャンスでもあります!」


こちらは残り二ストックだ。

相手の消しゴムは僕の消しゴムを落とそうとして、中央からかなり離れた位置にある。


こちらがチャンスだ。


しかし、二回のうちに倒しきれるか怪しい。


なんせさっきは全く動かなかったのだから。


いや、至近距離であれば、攻略することができるのではないか?


一回目の行動で僕は相手の消しゴムにあてたが、ほぼカス当てで、相手の超至近距離に、近づくことができた。


そして二回目、僕の渾身の力を込めた消しゴムは、全く動かず、相手の消しゴムだけ動かし、落とした。


僕は今、思い出したことがある。転生前に、学校で「ニュートンのゆりかご」という現象を習ったことがある。


運動量保存則によって衝突の前後で全体の運動量が一定に保たれ、


運動エネルギー保存則によって、衝突がほぼ弾性(エネルギー損失が少ない)なため、全体の運動エネルギーも一定に保たれることによって、


衝撃は連鎖的に伝わるが、結果的に最後の球だけが動くように見えるという現象だ。


これと同じことが、今起きたのだろう。


僕の指先の力が消しゴムによって保存され、僕の消しゴムとくっついていた、相手の消しゴムにのみ、力が伝わったということだろう。


「田中選手!一ストックとられた後、すぐさま、一ストック取り返した!!」


実況席も観客席も盛り上がる。


「これは!! まだどうなるかわからない!!」


さぁ。今度はこちらが有利である。


これから相手の消しゴムのターンだが、こちらは完全に少しずれていても、真ん中をキープしている。


一ターンの間に、スピードを欠いている相手の消しゴムが、真ん中へ戻ってこられるとは思えない。


よって、ここからはもう一ストックは取れるだろう。


相手はライン回復を優先したいだろうが、こっちには二ターンあり、


一ターン目で至近距離まで近づき、二ターン目で落としさえすれば、こちらは逆転できる。


だが、相手もそこまで馬鹿ではないだろう。


その時、相手は消しゴムを端をなぞるように打った。


今相手の消しゴムは端っこにいており、普通に考えればチャンスだ。


だが、この時に相手の消しゴムを落とした場合、こちらも落ちる可能性が高い。


今、ストックはお互いに二個。


ストック数が同じで、かつお互い初期位置となると、


重量の軽く、落とされやすいこちらが不利だ。


しかし、ここでストックを落とせず、長期戦になれば、それこそこちらが不利だ。


ともかく、ここで道連れ覚悟で倒しに行かない手はない。


いや、待て。


今、少し相手の消しゴムと離れている、この瞬間、相手の消しゴム少しでも押せば、どうにかして相手の消しゴムだけ落とせないだろうか。


…試してみる価値は絶対にある。


そうして、僕は指に全神経を注ぐ。


正確に狙いすまし、適切な力加減で…


消しゴムを…落とす!!


そうして、僕の狙いすましたショットは、相手に正確に当たり、

相手の消しゴムだけ…落ちた。


「計画通り…」


漫画をパロってちょっとかっこつけた。 ちょっと恥ずいかもしれん。


とりあえず、もう一回分も使って、ラインを回復した。


これでストックは二対一。


こちらが優勢だ。


まだまだ、一回戦は始まったばかりだ。



—————————————————————————————————————



(あとがき)

こんにちは月巻きです。


投稿が遅れてしまい申し訳ありません…。


ちょっと予定が立て込んでいて、あまり小説のほうに時間を割けず、この回もかなり雑な締めになってしまいました。


すみませんでしたぁ!





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