CUT「粗野」

ナカメグミ

CUT「粗野」

 日常生活の断片にほんの少しのユーモアを(視聴条件・日常生活のあらゆる場面と、育ちもガラも悪い人間の視点を、すべてジョークとして笑いとばせる方)。


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①大学案内

 大学案内を読んでいる。写真がきれいすぎる。おしゃれな陽キャが多すぎる。

「この大学に入ってよかった」「仲間と刺激的に学ぶ毎日」「1人暮らしも学業とバイトで充実」。ホントか?。つか、このパンフに、金かけすぎてない?

 

 根っからの陰キャとしては、むずがゆい。

 「この大学を選んだことを日々、後悔しているが、学費も納入済みだし、ほかに選択肢がない」「周りの陽キャ具合に嫌気がさして半年で中退した」「ここの学生に教える価値はないと思って講師を辞めた」など、裏案内も読みたい。表紙の写真は、校舎の屋上にそろえたスニーカーで(冗談です)。


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②競馬新聞

 土曜日の夕方5時過ぎ。コンビニに競馬新聞を買いに行く。550円也。いつも無愛想な男子高校生のバイトくんが、輪をかけて無愛想になる。

 わかるよ。昔同じバイトしてたから。これ、君の時給の半分以上だもんね。君から見たら私、ギャンブルやるクズだよね。でもおばさん、対人恐怖で英語の塾講師のバイト面接も落ちて。もう自分でテンション上げて、生きていくしかないんだよ。

 つか、君、髪染めたね。その色、校則大丈夫?。怒られない?。


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③子どもの教育

 今、確実に健全な子どもを育てる方法。新聞(全国紙、地方紙ともに)の投稿欄だけを子どもに読ませる。そこには健全な心がいっぱい。

 家族の大切さ。子育ての幸せ。孫との心に残るひととき。政治や社会に対する、極めて建設的な要望。ぜひお試しを。

 

 おばさんはもう、健全な心などとうに捨てたので、一切読まない。


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④催事場

 とにかく金がない。家賃の支払いに滞った大学時代。友達に代返(出席の返事をしてもらうこと)を頼んで1週間、デパートの催事場のバイトへ行った。

 京都物産展の有名料亭のお弁当売り場。パックにおこわをよそいつつ、随時会計。家族3人ご来店。父親、母親、小学生の女児。2000円のお弁当を3個お買い上げ。いいな。うらやましいな。典型的な家族っていう感じ。

 

 その日、私のレジの売り上げが合わずに、正社員も残る大問題に発展(弁償)。

●教訓)バイト中は時給が発生する。1円たりとも減らさぬよう、食えぬ感傷はいっさい捨てよう。


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⑤カフェ

 チェーン店のカフェにて。70−80歳代と思われる高齢男性2人。

「あそこの半導体メーカーの株、くるって聞いたよ」「ああ、俺も知ってる」

「新聞、もう使えないね。情報、古いもの」「うん。リアルじゃない。遅れてる」

 

 株でもうけてるの、十分わかりました。3つだけ言わせてください。

声がでかい。でかすぎる(必要なら補聴器の検討を)。

あの世に金は持って行けない。

高齢者の金こそ社会にまわらせようという施策に、まんまと踊らされてるかもしれない。

 つか、「リアル」って使うんですね。 


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⑥良い妻(ご近所さん)

 「ベ◯ツは夫、ア◯ディは私の車です。夫はIT系の会社を経営していて、出勤に使います。私は買い物や子どもの送迎に、毎日車は欠かせないので。

 趣味はプリザーブドフラワーを作ることと、着物の着付けです。和と洋、両方に親しみたいと思って。プリザーブドフラワーは、お友達に贈っても喜ばれます。ぜひ教えてほしいっていう方には、自宅で教えています。

 

 着付けは、子どもたちの卒業式に袴を着せる時、お茶会の時、ビアガーデンにママ友と浴衣で行くときにも役立ちます。意外と着物って、身近なんですよ。

 料理は大好きです。夫の会社の方や友人が自宅に集まるホームパーティーのたびに、テーブルが華やかになる新しいメニューをマスターします。ワインもペアリングを考えて買いますね。このへんは品揃えが豊富な店が多いので。

 

 家の裏手にあるキャンピングカーは、連休の時にふらっと家族で出かけてバーベキューを楽しみます。子どもたちに思い出をたくさん残してあげたいんです」。


●アドバイス)自社の経営状態には、絶えず細心の注意を。家、土地、車、ホームパーティーに集う友人の一切合切を、ある日突然、失うことにつながりかねません。  


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⑦悪い妻(私)

 「なんかイギリス製のでかい車が車庫に停まってますけど、夫のです。しょっちゅう壊れてますよ。私は運転しません。つか運転、向いてないんです。仕事しているときは運転してましたけど。しょっちゅうガードレールとか牧柵にぶつけて。テールランプが光らなくなって、所轄署に怒られて。交通事故の裁判もよく傍聴していたので、被告人になる前にやめました。

 

 昔は映画やドラマを、繰り返し見ることが趣味でした。でも目も疲れやすくなって。まえは夜に家事を閉店したら、缶ビールを開けてお笑い見て。下品に大笑いするのが楽しみでした。今はできませんけど。


 料理は、子どもが小さいころは栄養バランスを考えて作ってはいました。責任なので。でも好きかと言われると大嫌い。「できたて」を家族で囲む習慣がなかった。食えればなんでもよかった。料理は食べればなくなる。勉強とか運動とか、努力すれば結果が出るものの方が好きでした。

 

 子どもたちには私が母親で申し訳なかった、って思います。あとはいかに迷惑をかけずに過ごすかっていう感じです。家事して。歩いて。道端の生き物見て(冬は無理)。文章書いて。競馬して。ぬいぐるみ愛でて。夜は適度にビール飲んで。妻の役割、果たして。

 夫の車と同じでポンコツ。ポンコツのくせに、人並みに母親になろうとしてしくじった。ここから先は、ごまかしていくしかないんですよ」。


●アドバイス)上記の「かぎかっこ」内、どこかにあてはまる場合は、少しでも早く熱中できるものを見つけよう(世間体とか気にせずに)。

 だめなら水が合う場所に逃亡する計画を。ギリギリでは遅い。自分のギリギリは自分にしかわからない。


It’s all a kind of joke!

END

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CUT「粗野」 ナカメグミ @megu1113

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