第22章:和子の回想、絆の未来

「あとで聞いたんだけどね…」


和子コーチは静岡の海辺で星を見上げる。


怪我で走れなくなった若い頃、すべてを失った絶望の中、クロスビートの「破れた弦」が魂を救った。


ライブハウスで泣き、仲間と再会した夜、彼女は絆の大切さを学んだ。


その経験が、彼女をコーチへと導いたのだ。


遙の情熱、結衣の知性、雪乃の繊細さ、奈緒のしなやかさ、そして杏奈と恵美という新たな世代の音が、彼女の指導で一つの完璧なハーモニーとなった。


美咲の闇は過去に置き去られ、チームは前を向く。


美咲は、やがて飯屋の支配から解放され、陸上とは別の道で、自分自身の「響き」を見つけることになるだろう。


それは、遙たちが信じた「赦し」の力が、形を変えて実を結んだ証だった。


遙たちがグラウンドに立つ。星空の下、笑顔が輝く。


「私たちの走りは、時代を超える。この絆は、永遠に受け継がれていく」


遙の声が響く。


結衣が頷く。


「データより、絆が強い」


雪乃が微笑む。


「不完全でも、響ける」


奈緒が肩を押さえ、言う。


「このハーモニー、永遠だよ」


杏奈と恵美も、先輩たちの言葉に力強く頷く。


和子コーチが微笑む。


「クロスビートが教えてくれた。不完全でも、魂は響く。そして、その響きは、次の世代へと受け継がれていく」


スタジアムの記憶が、海風に溶ける。


彼女たちのハーモニーは、時代を超えて響き続けるだろう。


クロスビートのメロディが、静かに夜を包んだ。


それは、終わりではなく、新たな始まりを告げる、永遠の序曲だった。

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