絶世の美女は誰にも気づいてもらえない
@nonoh
第1話 お嬢様は川で洗濯を
ベレザは、川で自分の服を洗濯していた。昔話とかでよくみるあれだ。
でも今、私が川で洗濯をしているのは洗濯機が無い昔の時代だからではない。
私の両親は幼い頃に亡くなって、残ったのはお城と少しの財産と使用人のアリアだけ。だけど家にある大半のものは売り払ってしまったから、今残っているのは形だけのお城である。
洗濯機もないからベレザは川に洗濯に来る。
アリアも手伝ってくれるけど、任せっぱなしになるわけにはいかないもんね
いいところのお嬢様だったはずのベレザだが、今ではそんな気配もない。
アリアは使用人だが、ベレザ自身では一緒に暮らしてる家族という感覚だろう。アリアに仕事を全ての任せるということはせずに、2人で頑張って生活しようというのが今の彼女の考えだ。
最初こそは反対していたアリアだったが、ベレザの熱に押され、今では家事を分担するようになった。
全て洗濯できたので、ベレザは城に戻る。
「アリア〜洗濯終わったよ」
「お嬢様お疲れ様です。朝ご飯の準備ができましたので一緒に食べましょう」
アリアはお嬢様を新しい服に着替えさせながらいう。
机にはずらっと朝ご飯が並んでいる。
高級料理といっても遜色ない出来栄えだが、元は山で取ってきた山菜や果実、弓で仕留めた鹿肉などである。高級食材とは言い難い。
こんなにも素敵な料理に仕上がったのはアリアの腕前である。彼女は元は名家のマフィーナ家に仕えていただけあって、腕は確かなのだ。
本来であればもっと良い嫁ぎ先があるはずなのだが、アリアはお嬢様一筋で忠誠を誓っている。
「んん〜美味しい!やっぱりアリアの料理は世界一ね」
「ありがとうございます。今日はお嬢様の大好きなティラミスもありますよ」
「ほんと!やったぁ」
ベレザは満面の笑みを浮かべて喜ぶ。
うふふ、お嬢様かわいい❤︎
ティラミスを持ってきながらアリアはふと思い出す。
「そういえば、お嬢様は魔受式《まじしき》についてご存知ですか?」
「まじしき?分からないわ 何なの?」
アリアは簡単に説明する。
魔受式は、魔法が使えるこの社会において最も大切な、自分の魔法の適性を授かるための儀式で16歳になる年にあるということ。
そして、その儀式は明日行われるということ。
「ようやく私も魔法を使えるようになるのね」
「そうですね、私も楽しみです」
アリアはベレザと同い年だから、彼女もまた魔受式に参加することになる。
明日に備えて、綺麗な服を買いに行かないといけないなあとアリアは思った。
絶世の美女は誰にも気づいてもらえない @nonoh
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