第4話サンシャインドリーマー

地下アイドル『ラウこじショッピ』と言う駆け出しのマイナー3人組がいた

勿論マネージャーも無く、衣装も手作りし 3人で全てをこなしながらパフォーマンスをしていた

 「良い歌を作って頂いたんだ、何とか知ってもらえるように3人で出来る事は何でもしような!」

日曜日またまた通った苔の寺の前で遭遇した、

蘚苔(せんたい)レンジャーを見てから3人は勇気とアイデアをもらった様で燃えていた

金曜 京都ROKAというライブハウスに向かう途中、なんだか先が明るくなった様に思えて足が軽かった

そんな時 後ろから声をかけられた

「ラウこじショッピさんですよね?私ファンなんてす!こじ君の…」

中学生か、高校生位の女の子だった

あと2人、お友達らしい子を連れていた

「友達に知ってほしくて連れて来たんです、

これからLOCAに行きます、頑張って下さい!」

「何で?もっと人気のあるグループ沢山出てるのに…」

こじは少し自虐的に言った

「違います、私中学の時からお兄ちゃんに連れられてLOCAに来てたんです、その時こじ君 先輩グループの為にタオル振ったり、のぼり振ったりしてましたよね、その時から知ってます、あんな一生懸命他の人応援して…いつかこの人がデビューしたら応援しようと決めてたんです、だからショッピ君とラウ君と3人でデビューするって発表された時ほんとに嬉しかった…、泣いちゃったんです、今も応援してます、ラウこじショッピ大好きです!」 

その言葉にこじは胸が熱くなった

「きみ なんて名前?」

「沙綾です」

「沙綾ちゃんを僕達のファン第1号に認定します、

ラウ、ショッピ、イイよね?」

ラウとショッピも嬉しさに言葉が出なかったが、

ウンウンとうなづいた

沙綾も嬉しそうに深々と頭を下げた、そして

「ファンって売れて人気が出て知る人がほとんどかもしれないけど もっと前から、頑張ってデビューしようとしてる時から見て応援してるファンもいる事 知ってくれたら嬉しいです……

それと…お兄ちゃんが応援してたガールズグループは売れて東京でメジャーになっちゃって…

お兄ちゃんも追っかけて東京行っちゃいました

でも、どうか京都から居なくならないで下さい…

売れたら東京行くのが当り前かも知れないけど、京都のファンの事忘れないで下さい!お願いします」

沙綾は頭を下げながら続けた

「ホントは…ホントは売れて欲しい…

だけど売れすぎたら遠くなっちゃう気がして…

東京行っちゃったら淋しくて悲しくなる……

やだ!私何言ってんだろ…

ごめんなさい、忘れて下さい、売れて下さい!」

また頭を下げた

「いいんだよ、ほんとの気持ち言ってくれたんだよね?有難う! 僕達はまだまだなんです、LOCAに出ている先輩達みたいに、日曜日 出演出来る事をめざして頑張ります、だけど 沙綾ちゃんの言葉は

忘れないよ、沙綾ちゃんの事も絶対忘れない!

僕達ラウこじショッピの第1号のファンだもの」

リーダーのショッピが力強く言った

そして、自分達の未来が更に明るいものになったように感じて嬉しかった

沙綾達3人はライブ会場に向かって走って行った

「ファンってこんなに活力になるんだね、先輩たちがエネルギッシュなのはファンが多いからか…」

ラウこじショッピは沙綾達を見ながらつぶやいた

「君たち…」

振り返るとサングラスをかけた、ちょっとセンスの良い男性が立っていた

「君達先週の日曜日、苔の寺の前に居た子達だよねLOCAに出てるんでしょ?なんてグループかなあ」

「ラウこじショッピと言います」

ショッピが答えた

「なんて歌 歌ってんの?」

「曲はサンシャインドリーマーです、よろしくお願いします」

ラウとこじがいつもするように、同時に答えて深々と頭をさげた

「今日これから歌う?」

サングラスの男はそう聞いて確認すると、LOCAに向かってゆっくり歩いて行った

「またファンが増えるかも…

頑張らなくちゃ…な!な!」

こじは興奮したようにラウとショッピに言った


ライブが終わり3人が外に出るとサングラスの男は待っていたようだった

他のアイドルと違って、まだ出待ちするファンも無く 楽屋のゴミ係で、ゴミ袋を集積場に置き、走って男の所に行った

「どうでしたか?僕らのパフォーマンスは」

ショッピは少しドキドキしたが聞いてみた

「まだ荒削りだが、決して悪くないよ、少し勉強してみないかい?

まだ先の話なんだけど、有るセレモニーでパフォーマンスする若者達を探してるんだ」

用心深いラウはショッピの腕を引っ張った

「なんか怪しくないか?変だよ…」

「俺らの事 騙そうとしてるって事?」

ショッピが不審がるラウに聞くと

「あとでお金払えとか、タダ働きさせるとか?」

こじも不安になってショッピに言った

「でもホントならチャンスだぞ、詳しく話だけでも聞かないか?」

リーダーとしてショッピは、このサングラスの男の話に賭けてみたいと思っていた

「なぜ僕達と思ったんですか?」

ショッピは思い切って質問した

「曲は素晴らしい、君達は もう少し磨きをかければもっとよくなる、きっと売れるようになる」

その男はそう言いながらサングラスを外した

「うわー!」 

3人はその顔を見て声をあげた

誰もが知る人だが、最近テレビでは見ない人だ

「まだ詳しくは言えないんだけど、ある大きなセレモニーを任されたんだ、そこで歌う原石を探して、磨き上げ最高の物に作り上げたいんだ、それに参加して欲しい、何組か候補はいるんだけど、その一組として君達にも勉強しないかって事、どう?」

ラウこじショッピの3人は足がガクガクするのを感じた

3人が幼い頃は、テレビドラマや歌番組、CMや映画等 見ない日の無い程のカリスマ芸能人と言われ

る人だったが、舞台公演中の事故で大怪我をして表舞台から姿を消した人だ

ラウこじショッピの3人は震えながら

「やります!参加させて下さい!お願いします!」

そう言ってお辞儀をしながら元気に答えた

「まだ出られると決まったわけじゃないよ、勉強して、レッスンして、オーディション受けるんだよ、

でも勉強やレッスンはやって損はない、僕は君達

もっと伸びると思う、先生について無くてここまでやってきたんだろ?僕が専門家紹介するよ」

「お金かかりますか?」

そら来た、お金だ!と思い、こじが質問した

「払えないだろ?君たちじゃ

僕の後輩でボイストレーナーやってる奴紹介するからタダだよ、その代わり朝か夜遅くだよ」

「有難うございます!何時だって構いません!」

サングラスは名刺の裏にトレーナーの名前と電話を書いて渡してくれた

「俺の紹介だって電話すれば いつの何時頃来てって言うと思うから、あとは自分達で調整して」

そう言って帰って行った

「そうだ、あのカリスマだ!わぁ〜!」 

3人で名刺の端をつかみ足をバタつかせて、グルグルとその場を回った

「苔の寺に行ってから運が巡って来た感じだ!

何かの流れが変わった!今かも知れない」

ショッピは本気で思い、つぶやいた


           ① つづく











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

温故知新 蝶紀代 @NONtoMARK

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る