第3話地球(あい)してるぜ
苔(コケ)をこよなく愛する2人が京都にいた
宮舘、佐久間と言う若い庭師の2人だ
蘚(せん)類に詳しいレッド髪の宮舘
苔(たい)類に詳しいピンク髪の佐久間
2人合わせて蘚苔(せんたい)レンジャーと名乗って、
観光客に苔の大切さと地球温暖化の影響を訴え、
地球と苔を救おうとしていた
おふざけに見えるが、かなり本気だった
2人は衣装も作り、模造紙に説明と挿絵を書き、
ベニヤ板の看板にして苔庭のある寺や神社の前で毎週日曜日イベントの様にして訴え続けた
「コケってね 根っこがないんだよ 栄養は自分の体で作るんだ、なのに体は水分を沢山蓄えて地面にあげるんだ、その水分で土や樹木を助けてるんだよ
たけど人間は、人間の便利の為だけに地球を汚し、 痛めつけ温暖化させちゃって…
暑すぎたらコケは乾燥しちゃって地球も木々も助けられないんだ」
「それだけじゃない!コケ自身も死んじゃうんだ、
土も樹木もコケも みんな人間の為に頑張ってくれてるのに、人間は平気で汚いゴミをポイ捨てしたりづかづかコケを踏みつけて、必死で地球を守ってるコケ達を死なせたりする」
「人間が人間の事しか考えない生活をしていたら、巡り巡って人類が住めない地球にしちゃうんだ」
「自然を守る、自然に沿った生活をする、ポイ捨てしない、ポイ捨てしちゃうような物を買わない、そんなちょっとの事でもみんながやったら とっても大きな力になるんだ」
「今日此処で話を聞いた君たち!どうかコケの為
人類の為、地球の為、気づいた事だけでもやってくれ、それが明日の地球、未来の地球の為なんだ」
「どうかお願いしまーす!」
そう締めくくって頭を下げた
大勢の観光客が聞いていたが、実を結ぶか まではわからない、しかしこれ以外出来ない、それがもどかしくもある2人だった
庭師の所に2人組の男が近寄ってきた
何やら取材の依頼のようだった
2人組は東京から来たと言い、色々と質問していた
宮舘と佐久間はコケの為になるならと衣装を着替えながら話を聞いていた
そこに3人の若者が入って来た
中の1人が、
「外国からの観光客には何を言ってるか 分からないじゃないですかー、僕達感動したんです、だから協力したいんです!
人類の為、明日の地球の為ってとこ感動しました!
英語版のビラ作りますよ、僕 英語で書けるから」
宮舘と佐久間はいい案だと喜んで、お願いした
「普段は庭師の仕事してるから、日曜日また此処で訴えるつもりです、来週日曜来てくれますか?」
感謝しながらそう聞いた
「はい!来週迄に絶対作ってきます、文面スマホで写真撮りましたから…
実は僕達 地下アイドルやってるんですが、まだまだなんで 日曜日はLOCAの舞台に立てないんですちょうどいいな、日曜日なら……人の役に立てるしなんか嬉しいな、喜んでお手伝いします!」
「なんならここで歌いますよ、人集まるんじゃないかな? あ、意味違っちゃうか」
「ビラ配りもいつもやってるし、慣れてます」
3人はニコニコしながら屈託なく話した
取材を申し込んだ2人組の男達も、
「それも取材の対象にしたらおもしろそうだね」
「そうだな、来週の日曜日私達も来ますよ」
そう言って、3人にも名刺を渡した
3人のうちの1人が
「わーい取材うけれるんだ!初めてだから記念写真撮ってもいいですか?写真趣味なんで」
そう言ってスマホで全員を写した
「やっぱり現地に来なきゃつかめない事ってあるんだな~、歩いて良かったな」
取材の2人組は納得したように話していた
「京都出身の地下アイドルか、それも別の顔だな」
「まだまだ掘り起こせそうだな、時代は知らない所で進んでいるんだな、次はどこ行くんだっけ?」
そう言ってメモを見ながら帰って行った
宮舘と佐久間は帰って行く取材の2人組に向かって、いつものポーズを決めながら
「地球の為にコケを守るピンク!」
「地上の愛でコケを守るレッド!」
「2人合わせて 蘚苔レンジャー ニワシモス!」
そう言ってカッコ良く決めた
周りから少し拍手が起こった
地下アイドルの3人はそれを見てまた感動していた
中の1人、リーダーがつぶやいた
「なんか感動した、メッセージ性ってこう言うことなんだよな、俺達も ただ歌ったり踊ったりするだけじゃダメなんじゃないか?
そういうアイドルは沢山居るだろう?
あの人達はアイドル目指してんじゃ無いのに…
3人でもっと上のなんかを考えようよ、目指そうよ
他のアイドルとは違う 俺達の形をつくらなきゃ」
残りの2人も、庭師を見ながらうなづいた
客の中のサングラスをかけた1人の男が3人の話を聞いていた
3人に声をかけようと思ったが、庭師の2人がニコニコしながら3人に近付いて話しかけた
「来週、英語のビラお願いします、期待してます」
「今日は見て貰って有難うございました、僕達にはこれしか出来ないと思ってました、でも取材で広まったり、君たちが手伝ってくれて広まったり、少しでも苔と地球の為になったら本当に嬉しいです」
宮舘は3人のうちチョット年上に見える1人に
「ライン交換してもらえませんか?僕らもあなた達を応援出来る事が有るかも知れないし、あなた達の舞台も観てみたいです」
「ホントですか?うれしいなぁ、交換しましょう
舞台は平日の夜 LOCAに出てます」
京都の寺の片隅で5人の若者が結び付いた瞬間だ
サングラスの男はもういなかった
ピンク髪の佐久間は全て片づけ終わると、庭師の格好になり、ボランティアで寺の庭苔を見て回った
タバコの吸い殻が捨てられていた、それを拾い
「ゴメンね、人類はバカだからこんな事して…」
そう言いながら踏まれた苔を優しく撫で戻した
宮舘は庵主様にホースを借り、いつもの様に 中庭の 少し乾いて色あせた苔に水をまいた
「明日も美しく輝いて ここを守っておくれ」
祈るような優しい声で苔に話していた
「有難う、あなたのお陰で中庭の苔も元気になり、美しく蘇りました」
庵主様がそう言いながら庭に下りてきた
「いえ、庵主様の方がお美しいです、庵主様に負けない美しい苔の庭にします、僕が守ります」
宮舘が言った、彼はいつも穏やかな ここの庵主様を尊敬していたし、柔らかさが何となく好きだった
本来尼寺の中に男は入れないが、庵主様が瀕死の苔を何とかしたくて「中庭まで庭師一人だけなら」と言ったことで、穏やかな宮舘が選ばれたのだ
髪色は奇抜だがこの男、穏やかで礼儀正しく真面目な性分で、苔に対する愛情もかなり一途なのだ
だからこそ本気で 中庭のコケは自分が何とかしなくちゃと思っているのだ
そして 自然を心から愛する佐久間も、苔だけでなく木々の為、生き物の為にも 寝る間を惜しんで勉強しながら活動していた
2人共 この地球に、日本に生まれたと言う奇跡に
感謝して、明日も地球とコケを守り愛する為にと、
笑われてたってやり続けると誓い、全身全霊で生きている本気の奴らなのだ…
① つづく
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