1999年のルベル

★祭り★

1999年のルベル

1999年のルベル



 〈キャスト〉

港 哉  みなと はじめ  (男)ミナト

伊庭 優  いば すぐる   (男)スグル

襟谷 鷹  えりたに たか  (男)タカ

京江 主馬 きょうえ かずま (男)カズマ

河端 悠宇 かわばた ゆう  (女)カワバタ

幸田 伊辻 こうだ いつじ  (女)ツジ

浅葉 咲希 あさば さき   (女)ササ

宮沢 明香 みやざわ あすか (女)アスカ

襟谷 竜  えりたに りゅう (女)リュウ




  貴方はこんなこと言ってはくれないから、僕は書くしかありませんでした。


〈零〉 鈴


 舞台、夜の教室

 鈴の音が教室に鳴り響く

 ぼんやりとした月明かりが夜の教室の姿を映し出す

 少女のはしゃぐ声が次第に近づいてくる

 少女、電気のついていないこの教室を不審に感じながら自ら電気をつける

 教室のクラスプレートを確認すると顔色が変わり、わいわいと駆け込んでくる


竜   わぁ!月が綺麗。


 少女は窓から空を見上げて言った


竜   兄さんも来れば良かったのに。せっかく学校が旧校舎開けてくれたんだから。ココ、兄さんが勉強してた机かな?あーあ、もう取り壊されちゃうのか、


 少女は教室のあちらこちらを駆け回り、やがて一冊のノートを見つけた


竜   何これ、古いノート。


 ペラペラとページを捲る


竜   小説?あれ、でもこの文章だけ筆跡が新しい・・・。はしがきか何か?

『一九九九年六月三十日、夜十一時。

   私は今だにあの予言を忘れたことはない。学校中が噂話に花を咲かせ、大人達でさえ響めいていた。赤い月の綺麗に輝く夜。「ノストラダムスの大予言」あの少年の日は、私の最愛の記憶の日々である。』


 鈴の音が再び教室に満ちる

 教室の明かりが消える

 暗転



〈一〉 誰かのラジオ


 真夜中の十一時

 郊外の山奥の公立中学校

 音楽が聞こえる

 舞台は教室だが、やけに味気ない風景を宿している

 電気は付いていないが月明かりが机や椅子、少年をも縁取る

 大きな教室窓

 机や椅子は乱雑と置かれているが何処か均等性がある

 外の声、懐中電灯を持って二人の少年が歩いている


タカ  主馬、うるさい。主馬、主馬、イヤホン!

主馬  え?何、タカ。

タカ  イヤホン、刺さってないよ?

主馬  あぁ、ごめん。あれ?刺さって、る。


 音楽が止まる


主馬  また壊れてるみたい。イヤホン。

タカ  また?

主馬  安かったからさ、これ。

タカ  学習しないなぁ。

主馬  うるせ。

タカ  全く主馬は、

主馬  なぁなぁ、ラジオお化けって知ってる?

タカ  何それ。

主馬  夜な夜な、ラジオの音が校舎から聞こえてくるらしいよー。

タカ  やめろよ。誰から聞いたの。

主馬  ツジ。

タカ  あー。成る程ね。

主馬  ツジの怪談話面白いんだよなぁ。

タカ  今何時?

主馬  え、十一時五分前。そろそろ戻んなきゃ。

タカ  待ってよ、まだそっちに爆弾仕掛けてない。

主馬  あ爆弾‼︎忘れてた‼︎

タカ  おい!あんまり大きな声で言うなよ。

主馬  あ、ごめん。

タカ  はぁ。(溜息)

主馬  にしても、よく爆弾なんか作れたな。

タカ  俺っ家花火職人だから。

主馬  理由か?それ。じゃ、早く終わらすか。

タカ  そうだね。


 タカの懐中電灯が消える


タカ  あれ、電池切れ?

主馬  じゃあタカは先教室戻ってろよ。俺が仕掛けてくるからさ。

タカ  主馬一人でできるのか?

主馬  できるよ!あぶない刑事全話観終えたしさ!

タカ  それは爆弾処理とかだよな?

主馬  まぁまぁ、細かいことは良いからさ!つーか俺、なんかトイレ寄りたくなってきた・・・。

タカ  え?

主馬  と、兎に角俺に任せろよ・・・!

タカ  分かったよ。

主馬  お、おう。


 主馬、走り去って行く

 タカ、主馬が去ったのを確認し、再び懐中電灯をつける

腕時計の秒針を数え始める


タカ  十一、十二、十三、十四、十五・・・。


 どこからか鈴の音がする

 タカ、眼鏡を正す


タカ  ・・・誰かいるのか?おい、待て‼︎


 タカも走り去って行く

 教室

 ラジオの音


ラジオ こんばんは、一九九九年六月三十日、真夜中の十一時ラジオ。オカルト体験談の時間です。DJのダイです。さて、あの伝説の予言。『ノストラダムスの大予言』まで、あと一時間になって参りました。実感がないですね。後もう少しで、世界が滅びる。なんて。

優   ・・・。

ラジオ 『ノストラダムスの大予言』一九九九年、七の月、空から恐怖の大王が降ってくるだろう。アンゴルモアの大王を蘇らせ、マルスの前後に首尾よく支配するために。

優   ・・・。

ラジオ 世界滅亡まで後一時間。それでも働く私。さてと、今週もお便りを読んでいきます。ラジオネーム。「明日も僕」さんからですね。面白いラジオネーム。

優   ・・・。

ラジオ 「僕は、憧れの人がいます。ただの幼馴染なのですが、僕はアイツになりたいのです。」(笑って)面白いお願いですね。

明香  優ー?優ー?


 少女が教室に入って来る


ラジオ どうせ明日世界が終わるんだから良いんじゃないの?(笑って)

明香  優?寝てるの?

優   ミナト・・・。

明香  え、


 ラジオを切る

 教室に月明かりが灯る

 下手ドアに明香、机には優が突っ伏している

 明香、少しだけ教室の電気をつける


明香  優?

優   ・・・。

明香  優・・・。(優の髪を撫で、急いでカーテンを閉め始める)

優   ・・・待って、

明香  優?

優   ん、・・・待って、待って、待って‼︎(強くうなされる)

明香  優‼︎優、優しっかり、

優   待って‼︎・・・ハァ、ハァ、

明香  優。

優   ・・・明香。

明香  ・・・優、うなされてた。大丈夫?

優   あ、ああ。寝てたのか、僕は。

明香  えぇ。疲れ?

優   そんなことはないよ。それに今日でラストだ。

明香  そうね。

優   ?あ、ラジオありがとう。

明香  ううん。何か面白い放送してた?

優   真夜中のオカルトラジオ。

明香  好きだね。

優   ツジに勧められてさ。

明香  へー。良かったね。

優   お!見ろよ明香。(窓の外を見て)

明香  星?

優   月だよ、月。綺麗だな。

明香  綺麗。(優を見て)

優   うん。綺麗だ。

明香  ねぇ、優はさ、世界の最後にやり残したことある?

優   ないよ。(カーテンを全て閉める)

明香  即答ね。

優   だってないし。それにこれから救われるんだし。

明香  救い。

優   明香誘って正解だったよ。

明香  本当に?

優   うん。

明香  私が一番?

優   ・・・そうだね。


 明香、窓の方を見つめ首から十字架を取り外しポケットにしまう

 優、電気を全てつける


優   あー、寝てたらお腹減ったな。

明香  カップ麺なら、タカのだけど。お湯沸かして来ようか?

優   あいや良いよ。

明香  そう。あ、それよりもう十一時。

優   え、あ、本当だ。タカは、

明香  タカと主馬は外回り。カワバタとツジは机と椅子でバリケード張ってるよ。

優   指示通りに行ってるみたいだね。ササは?

明香  ・・・探検してる。

優   全く、ササには手が焼けるな。

明香  ええ。・・・ねぇ。優?

優   ん?

明香  さっきさッ、


 下手ドアからササが入って来る


ササ  やばぁーーい‼︎出たよ出た‼︎

優   どうしたササ。

ササ  出たんだよ‼︎出ーた‼︎

優   何が?

ササ  さっきさ、校庭が見える、り、り、理科っ、

明香  理科室?

ササ  そうそう!理科室前の廊下!に!行こうとして、

明香  行こうとして、

ササ  間違って被服室前に来ちゃって、もうササ夜の校舎嫌い‼︎どこも同じに見えるんだもん‼︎

優   で、どうしたの?

ササ  あぁ‼︎その被服室前でさ、見ちゃったの。

明香  何を?

ササ  ・・・幽霊を。

明香  幽霊?

優   幽霊なんて、非現実的だね。

ササ  いやね本当なの!スーーっと窓の向こうを通って行くの!

優   それって一階でしょ?

ササ  いやそうだけど、ササがトイレから出てふと外の窓を見ると!

明香  もう分かったから。

ササ  明香の意地悪!ねぇねぇ優くん!ササ見たんだよ。見たんだよ。

優   どんな幽霊だったの?

明香  優。

優   明香、地図張っといて。

明香  分かった。

優   で、何を見たの?

ササ  あのねあのね!動く黒い影と、鈴の音。

明香  猫?

ササ  猫じゃないってば!猫だったら目がピカーッて光るもん!

優   ピカーッて?

ササ  ピカーッって!あ、でももし猫だったらどうしよう。

明香  どうしようって?

ササ  だって鈴の音ってことは首輪でしょ?どこかの飼い猫かも。

明香  そうだとしてどうするのよ。

ササ  ササが飼い主見つけてあげるぅ。猫って言ったら猫じゃらしかなぁ?

明香  あのね、

ササ  でもやっぱ幽霊だよ!すっごぉおおく大きかったもん‼︎

優   どれくらい?

ササ  えーーーっとね。こーーーーーーーーーーんくらい‼︎

明香  はいはい。

ササ  明香のばーーか‼︎ササ見たもん!優くぅん。

明香  アンタね!

優   あ、そう言えば明香。さっき何か。

明香  え、あ、えっと、

ツジ  優。明香。ササがまた、


 ツジがドアから入って来る


ササ  あ!ツジぃ。

ツジ  ササ、戻ってたの。探したんだから。

優   何だ無断で探検してたのかササ。

ササ  ・・・ごめんなさい。

ツジ  バリケード張り終えた。今カワバタが最終確認しているところ。

明香  それでササを探してたってとこね。お疲れ様ツジ。(水を渡す)

ツジ  ありがとう明香。タカ達は?

優   まだ外回りから帰ってきてないよ。

ツジ  嘘。タカは見てないけど、主馬はさっき校舎に入ってきた。

優   主馬一人で?

明香  どうせトイレにでも駆け込んだのよ。

優   主馬ならあり得る。

ツジ  でもタカは?もうこんな時間だよ。

ササ  猫、見つけたのかなぁ?

ツジ  猫?

ササ  にゃーーお!

優   そうかもしれないね。

明香  優。

優   確かに、タカが遅いのは変だな。

明香  何かあったのかも。

ツジ  いやまさか。

優   ツジ、悪いんだけど外の様子見てきてくれないか?

ツジ  優が言うなら、分かった。

ササ  ツジが行くならササも行くぅ。

明香  ササは勝手にどこかへ行くからダメよ。

ササ  えぇ。

ツジ  とりあえず行って来る。


 河端が息を切らして走り込んでくる


河端  優‼︎

優   カワバタ?

河端  ハァハァ、(倒れ込む)

ツジ  ちょっとカワバタ!大丈夫?

ササ  カワバタ?カワバタぁ?

河端  ハァハァ、し・・・

優   どうしたカワバタ。

河端  し、し・・・侵入者だ‼︎



〈二〉 教室の帝王


優   侵入者?

明香  嘘でしょ。

ツジ  どうするの!

優   その侵入者は?

河端  今、タカが、


 廊下からタカと少年の声がする


港   離せ!離せよタカ!

タカ  ごめん、ごめんね。

港   ごめんじゃねーよ!離せって!離せタカ!


 下手ドアからタカとミナトが少しの乱闘をしながら入って来る


優   ミナト!

港   ・・・優?

優   ・・・。

港   何だよお前ら。こんな夜中に。

明香  ・・・タカ、(疑問と疑念)


 タカ、眼鏡を正す


タカ  外にいたんだ。

明香  (ミナトを見て)こんな夜中に何しに来たのよ。

港   お前らこそ何してんだよ。つーかいい加減離せよ!

タカ  ごめん。・・・優。

優   ・・・。

タカ  ごめんミナト。(離す)

港   痛。

ササ  タカくんそんなに力あったんだぁ。

タカ  一応鍛えてるからね。

ササ  すごぉい!タカくんかっこいぃ。

ツジ  ササ、(困って)

港   ツジか?

ツジ  久しぶり、ミナト。

港   え、ツジじゃん!久しぶりだなぁ。

ツジ  そうだね。中学では同じクラスにならなかったから。

港   だな。お前背伸びただろ。

ツジ  小学校から三センチも伸びたから。

港   何でお前こんなところにいるんだよ。

ツジ  それは、

河端  無駄話はやめろツジ。

港   カワバタ?

河端  黙れミナト。

港   は?何で黙んなきゃいけないわけ?

河端  お前なぁ。

ササ  喧嘩?喧嘩ぁ?

河端  黙れって言ったら黙れよ!

港   お前に指示される義理はねぇよ!

タカ  ちょカワバタ!

河端  止めるなよ!

タカ  そんなこと言ったって、

河端  あ?アタシがコイツに負けるって言いたいのか?

タカ  別にそんなことは、

河端  じゃー何?

港   (カワバタに)うるさいんだよお前は。

河端  はぁ⁈

タカ  おいミナト。

ツジ  カワバタやめなよ。

河端  あ⁇

ツジ  カワバタ!

ササ  この二人仲悪いのぉ?

タカ  小学校の頃、ね。二人とも児童会で衝突してから。

ササ  衝突ぅ?

タカ  おいミナト!

河端  このぉお‼︎

明香  ・・・カワバタ!こんなところで喧嘩したら、それこそ警察来るよ。

河端  ・・・ん。・・・覚えとけよ。

港   (無視)

ササ  カワバタ仲直りぃ?

ツジ  ササ。(困って)

港   はぁ。(溜息を付いて椅子に我が物顔で座る)

明香  ・・・ミナト、貴方、立場分かってるの?

港   意味分かんねーよ。君、そもそも誰?

明香  (ミナトを睨み)・・・優。

港   ・・・。

優   ・・・ミナト。どうして学校にいるの?

港   それはお前だよ優。こんな夜中に、

優   今は僕が質問してるんだ。

港   こんな夜中に・・・?

優   ミナト?

港   ・・・爆弾。

優   え、

港   (思い出して)爆弾‼︎

タカ  やっぱり聞かれてたか。

優   タカ?

タカ  いや主馬が、

港   爆弾!爆弾って何だよ!

ツジ  ミナト落ち着いて、

港   落ち着いてられるかよ!爆弾だぞ?爆弾!

ツジ  あんまり大きな声出さないで!

港   お前ら一体!

河端  黙れって!

明香  ミナトを抑えて!

タカ  ごめんね。

港   おい!離せ!お前らなぁ!

河端  明香も手伝えよ!

明香  ・・・。

ササ  命令ばっかだなぁ。

港   離せ!離せ!

明香  そこの椅子に。


 ミナト、椅子に座らせられる


タカ  ごめんなミナト。

港   最悪だよ。

ツジ  私達の爆弾のことを聞かれたからには、ね。

港   私達のって、そもそもどーやって爆弾なんか、

タカ  ごめん、ミナト。

港   ・・・爆弾で、何するつもりなんだよ。

ツジ  ・・・優。

主馬  どっかぁあーーーーん‼︎バラバラバラ。

皆   ‼︎


 廊下から主馬の大声が聞こえて来る


主馬  只今より、学校を爆破したいと思います!安全確認用意ーー!

明香  え、

港   学校を、爆破?

主馬  位置につけ、用意ーーー!

明香  アイツ、

主馬  だぁぁあん‼︎


 同時に電気が消える


皆   ぎゃ‼︎


 静かな夜の間にしばらくして主馬の笑い声が聞こえる

 電気が付く


主馬  びっくりした?びっくりした?


 主馬がベルトを絞めながら教室のスイッチの側に立っている

 全員呆気に取られている


主馬  てか聞いてよ!さっき腹痛でさ、もう馬鹿デカいウンコして、もうデカすぎてながれねぇーのよ!・・・あれ、ミナト?

明香  かずまぁあ‼︎

主馬  えぇ‼︎何でミナトがいんだよ⁈

ツジ  最低。

明香  優‼︎

主馬  何でミナトがいるの?

河端  お前もう黙ってくれ!優!

優   主馬。僕はあれほど言ったよな。今日だけはふざけるなと。

主馬  いやでもミナトがいるなんて思ってなくて、

優   主馬。

主馬  ・・・すみません。

明香  優。聞かれた以上、ミナトを逃すわけには、

河端  警察に言われたら終わりだ。

ササ  あの人、どうなっちゃうの?

優   ・・・。

ツジ  どうするの?

河端  この際どうするもこうするものないでしょ。(殴る真似)

ツジ  ちょっとカワバタ!暴力は、

ササ  こわぁい。カワバタ暴力的ぃ。

河端  あぁ?喧嘩売ってんのかササ。

ササ  まさかまさか!暴力反対‼︎

明香  優の指示を待って!

全員  ・・・。

明香  優。

優   (溜息を吐き、頭を抱える)

タカ  ・・・ミナト。

港   何だよ。

タカ  ミナト、仲間になる?

港   は?

皆   は?

明香  タカ勝手に!

タカ  駄目だった?

明香  リーダーは優よ。

港   優がリーダー?

河端  そうだぞタカ。優の親友だか何だか知らねーが、今の発言は勝手がすぎる。

タカ  ミナトと優、仲良いでしょ。ね?

河端  お前なぁ。

港   腐れ縁だよ。ただの。

優   ・・・。

タカ  幼馴染なんでしょ。俺はてっきりミナトも誘ってると思ってたよ。

ツジ  それは確かだけど。

河端  だけどな、

主馬  てか、ミナトと優って幼馴染だったんだ。

明香  黙りなさい!優。

優   タカ。

タカ  優が決めなよ。リーダーは優だ。

明香  タカ貴方ね、

タカ  明香ちゃん顔怖いよ。

明香  うるさい!

優   ・・・ミナト。

港   ・・・何?

優   僕は、お前を仲間に入れる気はないよ。

ツジ  優ちょっと待って、だとしたらミナトどうするの?

港   だろーな。じゃーどうするんだ?

優   ・・・タカ。

主馬  え、優マジで?

ツジ  ちょっと待って!

優   うるさいよ。今更、変わらないさ。

ツジ  でも、

タカ  ・・・。

明香  タカ!

タカ  ・・・優、

港   殺すのか?

河端  黙れミナト!

優   ・・・。

港   お前に、俺を殺す勇気なんてないよ。

優   !

河端  テメェ調子乗りやがって!

優   ・・・そうだね。僕じゃお前を殺せないよ。

ツジ  良かった。

港   何だよ・・・優、お前つまらなくなったな。

優   僕は君と違うんだ。

港   違うって、昔はよく反抗してきたじゃねーかよ。

優   それは小学校の頃だ。

港   へぇー、人ってこんな風に変わるんだな。

優   お前のそう言うところ、直した方が良いよ。

港   今更だろ。

優   本当に君は、

港   お前は変わったよ。

優   はぁ。(溜息)

タカ  ミナト、

港   いつものことだろタカ。

タカ  そうだけど。

港   で、結局どーするんだ?

ササ  ミナトくんも、仲間になるのぉ?

河端  はぁ?何言ってやがるササ。

港   誰?

ササ  ササはササだよ!

ツジ  四組の不思議ちゃんだよ。浅葉咲希。

港   だから、ササ?

ササ  ササだよぉ。

タカ  優、ミナトを仲間に入れてあげても良いんじゃない?

優   ・・・。

タカ  と言うか、この状況じゃ仲間に入れるしかないでしょ。ね?

河端  はぁ?アタシは絶対反対だぞ!

ツジ  私は賛成。

タカ  他の人は?

主馬  俺は、どっちでも。でもミナトなら賛成かな。

明香  ・・・優に従うわ。

ササ  ササも、優くんに従うよぉ。

港   お前は昔っから慕われてるんだな。

優   慕われてる?

港   昔もよく判断仰ぐ時は皆お前に聞いてた。

優   ・・・僕より、お前の方がッ、

ササ  だって優くんはすごいもん!ササにも優しいしぃ。

タカ  優、俺はミナトを仲間に入れることに賛成だよ。

優   分かったよ。・・・・・・ミナト、

港   ・・・。

優   ミナトを仲間に入れてあげる。


 各々の騒ぎ立てる


港   お前は本当にそれで良いのかよ?

優   この状況じゃ、仕方ないだろ。

港   いやそうじゃなくて、だって・・・お前は俺のこと・・・

タカ  じゃあ、これでミナトも俺らの仲間入りだ。

港   タカ?

タカ  だって優が言ったら仲間でしょ?

港   俺は仲間になるとは言ってない。

河端  なんだと?

ツジ  カワバタやめなよ。

明香  すぐ、る、

優   離してやれよ。

河端  ・・・はいよ。

ササ  カワバタ機嫌悪ぅ。

河端  当たり前だろ。こんな奴が仲間になるかもしんねーんだぞ?

港   こっちだって願い下げだよ。

河端  テメェ、アタシをおちょくるのもいい加減にしろよ!

優   『ノストラダムスの大予言』。ミナトだって知ってるだろ?

港   明日、世界が終わるって言う予言か。

優   そう。今、その予言まで残り一時間を切っているんだ。

港   本当だ。

優   僕達はその予言に抵抗する為に計画を練り、今夜実行するんだ。

港   それが、学校爆破?

優   そうだよ。変?

港   変って言うか、意味分からねーよ。

優   ・・・。

河端  ミナトは馬鹿だからな、アタシ達のこの崇高なる計画が分からねーんだよ。

港   はぁ?俺にテスト勝ってから言えよ。な、タカ。

タカ  え、俺?なんで?

優   ・・・。

港   何で学校なんだ。

優   ここにいるメンバー全員、学校が大嫌いだからだよ。

港   それだけか?

優   それだけ。

河端  アタシはそれだけじゃないぞ。

港   はぁ。(相槌)

河端  死ぬ最期まで何もできないのはつまんねーからだ。

港   つまらない、か。

河端  つまらない。何、文句でもあんの?

港   いやいや、つまらないか。良いなそれ。

河端  お、おう。

ササ  ミナトくんも学校嫌いなの?

港   え・・・。

ササ  ねぇねぇ、学校嫌い?

港   ・・・別に。

ササ  好きでも嫌いでもない?

港   ・・・。

ササ  ササと一緒ぉ。ササもね、好きでも嫌いでもないよぉ。

ツジ  押しの強い子でさ。

港   だろーね。

河端  学校なんてクソ喰らえ。こっちが死ぬ気で部活頑張ってたのに、

ササ  よしよーし、可哀想なカワバタ。

河端  やめろササ。

ツジ  誰も私達を理解してくれないんだよ。

主馬  才のない人間に居場所のない場所。

ツジ  私の趣味ってそんなに異端?

主馬  普通より劣ってたら駄目なのか?努力しても駄目?

河端  誰も本当のことなんて見ちゃくれない。

ササ  ササは、ササは、

明香  優。

優   ね、皆学校が嫌いなんだ。学校にもどこにも居場所がない。だから、僕が誘ってこのクラブを作った。

ツジ  優は私達の理解者だから。

優   そう言ってもらえると嬉しいよ。

港   理解者?

主馬  理解者理解者。ミナトも仲間になろーぜ。

港   俺は、

タカ  ミナトも嫌いだろ?

港   俺は別に、

タカ  嫌いだろ?学校なんて。

港   ・・・。

タカ  ミナト?

優   ミナト。

港   ・・・。

タカ  ・・・。

港   ・・・。

タカ  ・・・。

港   ・・・・・・分かった。


 誰もが黙る


港   俺も、


 雷が突然鳴り停電する


ササ  キャー‼︎

主馬  雷?

明香  (カーテンを開け)雨なんか降ってないのに、

ササ  ササうるさいの嫌い!

河端  引っ付くな!

タカ  二人とも落ち着いて。

ツジ  やっぱり予言は本当なの!

明香  ミナトはいる⁈

ツジ  ⁈

河端  ミナト‼︎

タカ  ミナト‼︎


 雷が止む


タカ  止ん、だ?


 電気が戻る


優   ミナト。

港   優。

優   ・・・何?


 一同沈黙


港   俺も、仲間になってやるよ。



〈三〉 子供の計画


 各々「やったー」「嘘だろ」等と騒ぎ立てる


港   ただし!

皆   計画の全貌。俺にも教えろよ。

タカ  そりゃそうだよね。

優   明香。

明香  ・・・全貌は、


 明香、黒板に張った地図を指し示しながら説明を始める


明香  一九九九年七月一日零時に、校舎のココとココとココの三箇所に仕掛けた爆弾を爆発さ、

港   え、ココって、今いる教室じゃねーか?

明香  あれ。(爆弾を指差して)

港   危なッ‼︎こんな所に置くなよ。

河端  アタシ達の任務は、爆破計画を周りに知られないこと。

明香  タカ。

タカ  はい。爆弾は時限式ではなく、このリモコンで操作される。

港   すごっ、これリモコン式なのかよ!誰が作ったんだ?

明香  爆弾の設計は全てタカが。

主馬  俺も手伝ったよ。

港   タカが?すげー‼︎どーやったら作れるんだよ‼︎

タカ  家、花火職人だし。

主馬  だから理由か。それ。

ツジ  タカはやっぱり天才だよね。工学系じゃ右に出る者はいないよ。羨ましい。

タカ  機械いじりは趣味だから。

港   いや本当に凄いな。成る程な、この爆弾で学校を爆破する。で、爆破の後は?

優   あと?

港   あと。

ササ  ササ達は、この爆破と一緒に消えちゃうよ。

港   は?

ツジ  この計画は、人間史に名を残して、大王に支配されないように死ぬのが最終計画。

港   何言ってんの?

明香  私達はこの日の為に色々準備してきたの。

ツジ  爆破物の量から校舎の間取り。教室のサイズ。何ヶ月も練り直してきた計画。

タカ  数字通りに爆弾作るのは大変だったよ。

港   わけわかんないんだけど。

優   それが僕達の計画の全貌だよ。ササ。

ササ  分かった!ササ持って来るね!ツジちゃん行こぉ。

ツジ  分かった。


 ササとツジが何かを取りに教室から出て行く


港   全貌って、それ、ただ死ぬだけの計画じゃねーかよ。

主馬  そうだけど?

港   そうだけどって、何かしたいなら別になんかあるだろう。

主馬  なんかって?

港   え、じゃー俺達はこの教室で零時きっかりに死ぬのか?

優   僕達は救われるんだ。

港   救い?

優   罪悪からの救い。

河端  人間は汚い。互いを蔑み貶め合う。こうやって認め合わなきゃ誰も幸せにはなれない。

主馬  憎悪に染まる前に、まだ綺麗な自分でいられるうちに。

優   彼らは汚い人間の自己満のために幸せを奪われた被害者。これ以上傷つく必要はない。

主馬  優は救いだ。

明香  ミナト。私達の仲間になったからには、優が絶対だからな!

港   ・・・分かったよ。

主馬  ミナトも俺らと楽しく最期を過ごそーぜ。こんな世の中糞食らえ!

河端  気に入っただろ?アタシらの計画。

港   本当に死ぬのか?

河端  おう。

港   ・・・死ぬ。死ぬか。

優   そうだよ。

港   ・・・そうか。・・・でもさ、

優   何?

港   いやな、もし世界が終わらなかったらどうするんだ?

優   え?

港   だってあれは、単なる予言だろ?現実的じゃない。

優   ・・・。

港   え、だってそうだろ?

明香  優は本当のことしか言わない。

港   え、

明香  優は、絶対なの!

港   な、何だよ、

主馬  まぁまぁ明香。(なだめて)

明香  触らないで、汚い。

主馬  えぇ。

河端  なんだビビってんのか?ミナト。

港   ビビってねーよ。もしもの話だよ。

タカ  もしもの話。

主馬  もしも、世界が終わらなかったら、

優   そんなこと、あるわけないよ。

皆   ・・・。

優   ノストラダムスは以前にも何度か予言を当てているんだ。例えば、人類の月面への着陸や原子爆弾。他にも色々。それに、この僕が当たるって言ってるんだから。

河端  ・・・そうだよな!優が間違えるわけねー。

明香  そうに決まってるわ。馬鹿なこと言わないで。

港   馬鹿なこと、か。


 下手ドアから手にビニール袋を下げたササとツジが入って来る


ササ  はいはーい!パーティーの始まりだよぉ〜。

ツジ  職員室の冷蔵庫で冷やしてたからキンキンだよ。

河端  おぉ待ってました!ツジパス。

ツジ  はい。

主馬  俺これー。

優   ミナトも。

港   あ、うん。ってこれおい!ビールじゃねーかよ‼︎

河端  アタシのリクエスト。

主馬  だって地球最期の日だぜぇ。合法合法!

港   違法だよ!

河端  うっめぇええー!

明香  カワバタ、まだ飲んで良いって言ってないでしょ。

河端  あ、ごめぇん。

優   良いよ明香。

明香  でも、

ツジ  優が良いって言ってるんだから良いの!

明香  ツジまで、

主馬  よーし乾杯ぃ!

優   全く君達は。

ササ  うえ、ササお酒嫌い。まずぅ。

優   リンゴジュースあるよ。

ササ  やったー!

港   ゲホゲホッ。カワバタ、よく飲めるな。

河端  上手いじゃん!これぇ。やっぱビールはアサヒだわぁ。

ツジ  飲んだことあるの?

河端  はじめてぇーー。

優   カワバタ、酔ってる?

河端  じぇーんじぇん。

ツジ  意外と弱いのね。

主馬  なぁなぁ缶蹴りしよーぜ。

港   お酒一つで崩壊しすぎだろ。

優   あんまり飲み過ぎて、計画に支障だけはきたないでくれよ。

主馬  分かってるよ。

明香  優、理科室の物取りに行こう。

優   分かった。

タカ  俺はもう一度爆弾を確認して来るよ。

優   主馬、ツジ。ここは頼んだよ。

主馬  オッケー。

ツジ  任せて。


優、明香、タカは教室から出て行く


港   何取りに行ったんだろ。

ササ  さー、ゲームとか?

主馬  紙飛行機対決でもするかー?

ツジ  今何時?

主馬  え、十一時十五分過ぎ。

ツジ  まだ時間あるね。

港   優、変わったな。

主馬  そうなのか?

港   変わった。昔はもっと明るかった。・・・もっと、楽しい奴だった。

ツジ  それは、ミナトが優を知らないだけじゃない?

港   え?

ツジ  優は優しい人だよ。私達の気持ちを理解して、居場所を与えてくれる。私達のリーダー。

主馬  ミナトの知ってる優が本当の優とは限らないだろ?

港   でも、ずっと一緒だったんだぜ?

河端  だから何だよ。幼少期を一緒に過ごした奴は、心意まで共有できんのか?

港   ・・・。

河端  ほーら、何も言えねーじゃん。(笑って)

港   ・・・それでも。

河端  あ?

港   アイツ、お前らのこと人形を見るような目で見てるぞ。

ツジ  そんなわけないでしょ。馬鹿じゃないの?

ササ  ササお人形遊びしたーい。ツジお母さんねぇ。

港   ・・・なぁ、お前ら。本当に死ぬのか?

主馬  え?

港   だってお前ら、本当に死ぬ理由あるのか?

河端  あるよ。人間史に名を残して死ぬって、格好良いじゃん。

港   ・・・。(主馬を見て)

主馬  何だよ。

港   学校を破壊する理由。お前ら本当に、

ササ  死ぬよ。だって優くんが死ぬんだもん。

港   何で優?

ツジ  私達は、優に救われたから。

港   救われた?アイツに?(笑う)

ツジ  何で笑うの。

港   いや、だって優だぜ?優。

ツジ  だから何?

港   なんて言うか、アイツ頭も悪いし、それで救いって。(笑う)

ツジ  やめて。

港   え?

ササ  えー優くん頭悪いのぉ?

港   今のアイツのことは知らないけど、まぁ小学校の頃は?

ササ  へぇー。

ツジ  ちょっとミナト。

ササ  どのくらい頭悪いのぉ?

港   なんとアイツ。テストはいっつもビリだったんだぜ。

ササ  ミナトくんは頭良いの?

河端  やめろ、聞くとムカつく。

港   俺は頭良いぜ。

主馬  でたよ。

ササ  学年何位?

港   俺は学年二位。

ササ  すごい‼︎

河端  しかもノー勉って言うのがムカつく。

ササ  でも優くんの方が凄いぃ。

港   なんで?

ササ  ササ達にとって、優くんが特別だからぁ。

ツジ  私は、優に誘われて来たの。君が必要だ。って。

港   何だよそれ。

ツジ  私オカルトマニアだからさー。友達できなくって、優だけが私の勧めた本読んでくれたの。

主馬  コイツ、電波女って言われててさ、皆にいない存在にされてたんだ。

港   そんなことあったんだ。ごめん、俺何も知らなくて、

ツジ  中学に上がってからの話だから。ミナトも知っての通り、私養護施設の子だし。中三で最年長だから、友達できなくて寂しー!学校行きたくなーい!なんて、言ったら小さい子に馬鹿にされちゃう。(自嘲して)だから私、嬉しかったの。ここに居て良いんだーって思えたことが。優の必要とする人間になれたことが。

主馬  ツジは計算が得意だったから、教室の大きさとか火薬の計算をしてくれたんだよ。

港   そういえばそうだったな。

主馬  俺は俺は!

港   カワバタは?

主馬  え、

河端  あ?アタシ?

港   おう。

河端  アタシは、アタシは問題児だったからさ。アイツだけが、アタシを信じてくれたんだ。優だけが、アタシにもう一度居場所をくれたんだ。

港   居場所?

ツジ  カワバタは強過ぎたのよ。

主馬  柔道じゃ負け知らず!男だろうがバッタバッタと、

河端  それがいけなかったんだ。

主馬  ・・・。

河端  アタシが男だったら、きっと部活の連中も認めてくれたんだ。

港   あの警察沙汰になった話?

河端  最初は疑いもしなかったよ。まさか部活の連中が先生にアタシのありもしない悪口吹き込んでるなんてさ。仲間だと、思ってたのにな。

主馬  仲間なんて、向こうは思ってねーよ。

ツジ  アイツら最低だよ。女の子一人に男が陰湿な嫌がらせとか。道着隠されたりしたんだよ。

河端  まぁ、アタシもやられて黙ってる人間じゃないし。すぐ手が出るし。

港   それであんな大騒ぎになってたのか。

河端  お陰で停学、部活は退部だ。清々としたけどな。

港   ・・・。

ツジ  カワバタ、酔うと少し丸くなるね。

河端  あ?

ササ  カワバタ可愛いぃ。

河端  先生達は誰もアタシの味方にはならなかった。でも、優だけは違った。だからアタシはアイツの側にいる。

港   にしても、優がリーダーなのか。

ツジ  ?

主馬  俺の番は?

港   救われたね。昔は泣き虫だった癖に。

タカ  優はもう、そんなんじゃないよ。


 下手ドアにタカが立っている


港   タカ。お前も救われたのか?

タカ  俺は自分から来たんだ。

港   へー。

タカ  俺は優の親友だから。

港   優の親友、

タカ  勿論ミナトもだよ。

港   そこじゃねーよ。

タカ  分かってるよ。

ササ  ササは優くんの『特別』だよ!

港   特別?

ササ  優くんの救い。ササはイジメられてたから。優くんが助けてくれたから、

港   イジメって?

河端  四組の。一年時に荒れただろ。噂の集団リンチだよ。

港   え!

河端  ササは、変わった子だから。

ササ  違う違う。『特別な子』。そう優くんが言ったんだ!

港   あの優がそんなことを?

ササ  ササ、不登校なっちゃったんだけどね。優くんが毎日毎日、会いに来てくれたんだ。クラス違うのに!優くんはササの救い。『ササは、特別な子。』

河端  おい、ビール空だぞ!

ササ  カワバタ聞いてなかった!

河端  もうその話は聞き飽きたんだよ。

ツジ  もー、飲み過ぎだって。

河端  うるさい!おいミナト。一発芸しろよ。

港   は?

河端  主馬もやれよ〜。

主馬  えやだよ!ちょっと怖い!カワバタ怖い!

河端  あ⁇ゴタゴタうるせーな。

主馬  暴力ダメ!絶対ダメ!絶対!

港   ・・・絶対。

河端  あ?何だミナト。

港   あいや、

タカ  カワバタ、もうお酒はよしときな。(取り上げて)

河端  あぁ〜アタシのビールぅ。

ツジ  そうだ!占いしようよ。

主馬  占い?

ツジ  タロット占い。わたし持ってきたの。

主馬  おぉ!何で今?

タカ  ツジちゃんって本当にそう言うの好きだよね。

ツジ  だって面白いもん。

主馬  えー、でもどうせ今から死ぬじゃん。

ツジ  じゃあ主馬はやらないね。

主馬  やるやる!俺が一番に占う!

ツジ  はいはい、良いよ。好きなカードを選んで。

主馬  これ!

港   選ぶの早いな。

主馬  ほら、こう言うのって直感が大事だからな。

ツジ  えーっと、このカードは正位置の力。

主馬  それってどーなんだ?

ツジ  えっと力はね、『目標に向かって全力で頑張ることができて、満足感を得られる』。

ササ  それって凄いの?

ツジ  凄い!

主馬  マジで⁈

港   良かったじゃん。

主馬  こりゃ、将来はオリンピック陸上選手かな。

タカ  そういえば陸上部だったね。

主馬  もう辞めたけどな。

港   え、何時?

主馬  もう半年前だよ。走る事は好きだけど、俺才能ないから、レギュラー取れなくて。部活だけが生き甲斐だったんだけどな。

港   だからって辞める必要は、

主馬  ミナトには関係ないだろ!

港   ・・・。

主馬  あ、ごめんごめん!いやぁ、部活って大変だよなぁ。・・・優は、スゲー良い奴だよ。ミナトは?

港   ?

主馬  部活。入ってなかったけ?

港   いや、一応美術部。

ササ  美術部〜?タカくんも美術部だぁ。

タカ  そうだね。

ササ  あと、優くんもぉ!

港   ・・・俺、中学上がってから、一度も喋ってないや。

ササ  同じ部活なのにぃ?

港   ・・・うん。

ササ  ミナトくん、優くんのこと嫌いぃ?なの?

港   ・・・俺は、

河端  アタシはぁ国語教師になるぞー!

タカ  びっくりした。

河端  それからぁ、校長になる!

港   何の話?

ツジ  さっきの主馬の陸上選手のくだりじゃない?

港   あぁ、将来の夢か。

河端  アタシはぁ、国語教師になって、アタシみたいな問題児に喝を入れる!

ツジ  カワバタ教師目指してるの?

河端  ん!

主馬  意外。でも、しっくりくる。

ツジ  確かに。カワバタって真っ直ぐなところあるから。

港   真っ直ぐ。

タカ  ミナトは?

港   ん?

タカ  ミナトはなんかないの?

主馬  将来の夢とか。

港   ・・・夢。

ツジ  夢。

港   ・・・ない。

主馬  えないの?夢ないとか寂しー。

港   小学校の頃はあったはずなんだけどな。

タカ  どんな夢?

港   ・・・優と、遊ぶ約束してたな。

主馬  それって夢じゃなくて思い出じゃね?

港   分からね。

ツジ  ミナトって、謎だよね。

港   優も謎だよ。

主馬  へぇ。

港   優、どうしちまったんだよ。昔はずっと一緒だったのに。

タカ  は?

港   何だよ。

タカ  ミナト、本当に気づいてないのか?

港   何をだよ。

タカ  優はお前に・・・。違う。何でもない。

港   何だよタカ。

タカ  これは、自分で気づかなきゃだよ。

港   ・・・?・・・お前ら、本当に死んでも良いのか?

ツジ  え?

河端  何だよ急に。

ササ  死ぬよ!

港   だから何で?

ササ  だって、

港   だって?

ササ  ・・・だって、優くんが、

港   優くんが優くんが、お前らそればっかじゃんか。

皆   ・・・。

港   お前ら、本当に死んで良いのか?

ツジ  でも優は、

主馬  やめてくれ。(ツジに)

河端  おい主馬。

ツジ  ・・・私達は、仲間だから。

河端  仲間・・・。

ツジ  ・・・。

港   本当に、死んで良いのか?

皆   ・・・。

港   だって、夢があるじゃねーか。

主馬  ミナト。

皆   ・・・。

港   優に救われたんだろ?ならなんで、救われた命を捨てるんだよ。

ササ  ・・・。

港   優が死ぬから死ぬって、それってなんか・・・

ササ  ・・・なんか?・・・あれ?



〈四〉 月の裏切り


 明香が帰って来る


ササ  ササ・・・

明香  何してるの?

ツジ  あ、明香。えーっとね、あ、そう!タロットカード!

明香  タロットカード?

河端  ツジがタロットカードを持って来たんだよ。

ツジ  明香も占ってあげる。

明香  え、遠慮する。意味ないし。

ツジ  良いから良いから。

主馬  ・・・なぁ明香、

河端  主馬。

明香  ?

ツジ  明香。早く選んで。


 明香、渋々とカードを選ぶ


ツジ  逆位置の、死神・・・。変化を望まない愛。


 優が帰って来る


優   タロット?

ツジ  ・・・優。

優   ツジは本当に、そう言うの好きだよね。

ツジ  うん、

河端  優、もう一度計画の全貌を確認しよう。

優   ?ああ。分かったよ。

河端  主馬確認だ。アタシら、仲間だろ?

主馬  あ、おう。

港   おいお前ら、

ツジ  ミナトも早く!確認しないと、私達、確実に優と死ぬんだから。

港   ・・・・・・おい優、

優   何、ミナトはまだ不安なの?僕の指示に従うのが。

港   ・・・。

優   ・・・、

タカ  ミナト、怖いらしいよ。

港   俺は一言も、

ササ  ねぇ、優くん。

優   何?

ササ  どうして、ササ達を誘ったの?

ツジ  ササ?

主馬  それ、俺も気になる。

優   僕を、信じてくれそうだから。

ササ  え、

優   (時計を見て)あと少しか。

ササ  信じてくれそうだから?

優   うん?

ササ  信じてくれそう?

優   ササにとって、信じられるのは僕だけだろ?

ササ  それだけ?

優   うん。

ササ  本当に、それだけ?

優   急に何。

ササ  なら、ササ達を助けた理由は?

優   ・・・どうしてだと思う?

主馬  ・・・優、

優   明香、持って来た物を。

明香  ・・・。

優   明香?

明香  え、あ、

優   持って来た物を。

明香  はい。


 明香は合図で机の上にヒ素の瓶を置いた


ツジ  これ、何?

優   ヒ素。

主馬  ヒ素?

河端  猛毒じゃねーか。

優   うん。毒。

河端  うんって、理科室から取って来たのか?

優   爆発で死ねなかった時の予備だよ。

主馬  予備。

優   どうしたの?皆少し変だ。

河端  そんなことねーよ。

優   そう。なら皆で遊ぼうよ。今夜が、最期なんだから。

ツジ  そうだよ。楽しく過ごそうよ。皆で。ここにいる皆で。

河端  なぁ優、何して遊ぶんだ?

ツジ  私タロットカード持って来たの。占いしようか?

優   本当に、ツジは好きだね。でも、もう占いは意味無いよ。

ツジ  え?

優   あと少しで、世界は終わるから。

ツジ  ・・・そうだね。

優   ササ、人形遊びでもしようか。


 ササは立ち止まったまま動かない


優   ササ?

河端  ササ、どうした?

ササ  一緒に、死ぬのが目的だったんだ・・・

明香  何言ってるの?

ササ  優くんは、死ぬのが目的なんだ、

優   ササ、どうしたの?

ササ  ・・・ササ、

皆   ・・・。

ササ  ・・・ササ、死にたくない。

優   は?

ササ  死にたくない。死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない‼︎

ツジ  ササ‼︎


 ササが机の上のヒ素の瓶を薙ぎ払う

 それと同時に、優の中で何かが切れ、ミナトにじっと視線が映る

 優の耳元で誰かが囁く

 優の回想

 各々は停止している

タカは優の回想内の人物になり、優を見ている


タカ  何だ。優より、ミナトの方が、凄いじゃないか。

優   違う。

タカ  優はミナトの真似ばっかだ。

優   違う。

タカ  優よりミナトの方が、

優   違う。

タカ  優は劣ってる。

優   違う。

タカ  お前は、ミナトより劣ってる。

優   違う。

タカ  劣ってる。劣ってる。劣ってる。劣ってる。


 繰り返される台詞は淡々としていて、次第に大きくなり優を押しつぶす勢いだ


優   違う。違う違う違う違う違う違う違う違う、

タカ  優はミナトより劣ってる‼︎

優   黙れよ‼︎


 優の回想から現実に引き戻る

 ササが取り乱し暴れている

 それを必死に抑えようとするツジ

 ササ、カーテンを全開にする

 月がこちらを見ている


ササ  優くんはササ達のことなんて見てないんだ‼︎優くんは‼︎優くんは‼︎

ツジ  気が動転してるの!気にしないで優!

港   おい優、お前コイツらに何したんだ・・・

優   それはお前だよ。

港   何?俺は何も・・・

優   ミナト、お前、何を吹き込んだ。

港   は?

優   ササは俺に絶対だった。そう信じ込ませたんだ!

港   信じ込ませた?

ササ  やっぱり、死にたくないよ。

ツジ  やめてよササ!やめて!やめてよ!壊さないで!私の居場所はココだけなの!お願いだから壊さないで!

河端  ツジ・・・、

ツジ  私達仲間だから、何処にも居場所のない仲間だから!ココだけは、ココだけは!

河端  ・・・。

ササ  死にたくない死にたくない‼︎

ツジ  ササお願いだから‼︎

主馬  ・・・。

ツジ  ササ‼︎

ササ  やっぱりおかしいよ‼︎優くんが、助けてくれた命なのに、

優   おかしくないよ‼︎僕がお前らを助けたんだから‼︎

主馬  ッ・・・。

優   どうせお前らは、僕が助けなきゃ死んでたんだから・・・。おかしくないよ。

ササ  ・・・、

優   何で急に、そんなこと言い出すの?

ツジ  ササ、(黙っているササをゆっくり立ち上がらせる)

ササ  ・・・。

優   ササ。(笑って)

ササ  ッ‼︎(優の顔を見て)嫌だ‼︎


 優、すかさずササを突き飛ばす


ツジ  キャ!

河端  ササ!

タカ  ササちゃん!

港   優お前‼︎

優   何だよミナト。

港   お前、変わったな。

優   変わった?お前に俺の、何が分かるんだよ。

港   お前、おかしいぞ。

優   俺はおかしくない。変わったのはミナト。お前だろ?

港   ・・・え。

優   (ササに)もうお前はいいよ。

主馬  優‼︎


 主馬、優に殴りかかろうとする


タカ  主馬やめろ‼︎


 タカ、主馬を取り押さえる


主馬  離せよタカ!

タカ  暴力はダメだよ。

主馬  ササには暴力振るったのにか⁈

優   主馬。僕は爪弾きにされてたお前を仲間に入れてやったんだぞ?

主馬  ッ‼︎

優   お前は、僕に歯向かうのか?

明香  優危ない‼︎


 河端が優を殴った


明香  優‼︎

優   カワバタ、お前‼︎

河端  優、何でササを突き飛ばした?アタシら仲間だろ?

優   仲間?まだそんなこと思ってたの?

河端  は、

優   なんで急に皆して裏切ってくるんだよ。お前らは僕の『人形』なんだよ‼︎

ササ  優、くん・・・

優   僕が何のために、お前らに優しく、救いの手を差し伸べてやったと思ってるんだよ、

河端  何で、

優   これも、全部ミナトのせいだ。

港   ・・・。

優   お前はいつも、俺の邪魔しかしない、俺の誤算はいつもお前だけ、

港   優・・・、

優   何でお前はいつもいつもいつも俺の居場所を取り上げるんだよ‼︎あの時だってそうだ‼︎

港   あの時?

優   誰のお陰で、今の自分があると思ってんだよ。

港   何の事だよ。何でお前はそんなに俺が嫌いなんだよ‼︎俺ら親友だったじゃねーかよ‼︎

優   親友?お前なんか、お前なんか友達ですらない。返せよ‼︎俺の居場所を‼︎

港   居場所・・・?

優   お前だって‼︎俺に救われた側の人間の癖にッ‼︎

港   ‼︎

優   小学校の頃、いつも一人ぼっちだったお前を、仲間に入れてやったのは誰だよ、

港   優、

優   俺はお前なんかより劣ってないんだ‼︎俺はッ俺はお前より凄いんだッ‼︎

港   お前そんなことが理由で・・・

優   そんなこと?お前にとってはそんなことだろうな。

港   あの頃はもっと子供だったんだ・・・

優   だからお前が大っ嫌いなんだよ‼︎

港   ・・・。

優   さぁ、まだ間に合うよ。皆で、死のう?

港   ・・・。

優   ほら、ツジ。(手を差し出し)ツジは僕が救いでしょ?

ツジ  ・・・い、嫌。

優   ・・・へぇ、ツジまで裏切るんだ。へぇ・・・明香‼︎


 明香が爆弾のスイッチを掲げる


港   何だそれ、

タカ  何で明香ちゃんが爆弾のスイッチを、

港   爆弾⁈


 明香、爆弾のスイッチを優へと手渡す


優   タカ、このクラブのリーダーは僕だ。誰にスイッチを持たせようと僕の勝手だろう。

タカ  俺のカバンから盗ったのか、

優   はぁ。(溜息)・・・もう、時間とかどうでも良いや、


 優、これ見よがしに高々とスイッチを掲げる

 各々の恐怖で身体が硬直している


港   優待て。

優   何、命乞い?やっぱり、お前は死ぬ勇気もないんだな。

港   そう言う話じゃない。

優   なら、何?

港   皆を解放してやれよ。

優   は?

港   頼む。

優   解放も何も、コイツらは好きで俺について来たんだぞ。

港   お前がそうさせたんだろ。

優   黙れ!

港   話し合おう。

優   ・・・?

港   話し合おう優。

優   頭おかしいのか?

港   お前もだろ。

優   ・・・。

港   なぁ、俺とお前で昔みたいに話そう。

優   はぁ?

港   遊ぶ約束、忘れたのか?

優   何その約束。

港   してただろ?小学生の時に。

優   ・・・忘れた。

港   話し合おう、俺と、

優   何でお前なんかと、

港   もし、もし話し合って、お前が何も変わらないようなら、俺はお前と死んでやる。

優   ・・・。

明香  優、

優   ・・・分かった。

明香  ・・・ッ。

港   皆、早く帰りな。


 ササ、河端、ツジ、主馬が教室からゆっくりと立ち去る


優   で、何を話すの?ミナト。

港   お前、変わったな。

優   またそれかよ。

港   どうしちまったんだよ、お前はもっと、夢があったじゃないかよ。

優   夢?

港   夢。

優   やっぱり変わったね。

港   え?

優   お前は、優しい言葉一つ持ってやしなかったのに。

港   ・・・。

優   夢、ね。夢か。

港   優、

優   夢なんて、叶うわけねーじゃん‼︎

タカ  優落ち着け、

優   ミナトには分からねーよ‼︎欲しいモノ全部持ってる、お前には分からねーよ‼︎

港   は?

優   だからお前が大っ嫌いなんだよ‼︎何もしなくても皆に好かれてさ、勉強も、運動も、特技も趣味も友情も夢も‼︎俺が欲しいモノ、全部持ってる。俺はさ、そんなお前を尊敬してた。僕は、尊敬してたはずなのに、

港   そんなこと一度も、

優   変だよな。俺、ミナトになりたいって思ったんだ。

港   俺に、なりたい?

優   ミナトみたいに天才になりたい。ミナトみたいに動きたい。ミナトみたいに大勢から慕われたい。ミナトみたいに。ミナトみたいに・・・ミナト、みたいに・・・叶うわけねーじゃん。俺は、ミナトにはなれねーもん。ミナトは俺じゃないから。そしたら、死ぬしかないじゃん。


 少しの沈黙


タカ  優、もう終わりにしよう。

優   タカにも分からねーよ‼︎俺は、

港   何だ、お前。予言を理由に死のうとしただけか。

優   あ?

港   お前、何かを理由にして、死のうとしてるだけじゃねーか。

優   違う‼︎俺はッ

港   違くねーよ‼︎

優   !

港   やっぱり、お前は変わったよ。つまらない人間になった。

優   変わったのはお前だよ!

港   確かに、俺も変わった。俺は、孤立していくお前を見ないふりしてたのかもしれない。

優   綺麗事はやめろよ‼︎

港   綺麗事に聞こえても良い、

優   うるさい、

港   俺は、お前が思ってる程幸せな奴じゃない。

優   幸せだろ。何でも持ってる癖に、

港   優、

優   うるさいやめろよ、

港   優、聞いてくれ。

優   うるさい、

港   俺も、俺もお前のこと、尊敬してたんだぜ。

優   ‼︎

港   自分のしたいことを、真っ直ぐな瞳でできるお前を、尊敬してたんだぜ。

優   僕を?

港   でも今のお前はそんな面影もないくらい変わったよ。少なくとも、俺が尊敬してたお前は、何かを理由に死ぬことを考える奴じゃなかった。



〈五〉 最期の赤い夜


港   優、分かってるんだろ?意味無いって。

優   どー言うことだよ。

港   予言は、起こらない。

優   そんなの分からないだろ⁈

港   分かるよ。現実的を求めるの、お前の癖だっただろ。

優   ・・・。

港   予言なんて、非現実的だ。

優   ・・・。

港   お前は、一人で死ぬのが怖いだけだろ?叶わない夢から、逃げたいだけだろ?

優   ・・・。

港   だから、もうやめろよう優。

優   ・・・。

港   やめよう優。

優   ・・・ミナトは、何でもお見通しなんだな。

港   ・・・。

タカ  ・・・優、スイッチを。

優   タカ、ごめんね。(スイッチをタカに渡す)

タカ  謝るなよ。俺は優の親友だから。

優   ・・・親友。

港   親友。

優   ・・・ミナト。

港   何?

優   僕の夢、聞いてくれる?

港   うん。

優   僕の夢は、

明香  よしてよ!


 明香の突然の叫びに、皆困惑して黙る


明香  おかしい。こんなのおかしいよ。

優   明香?

明香  そんなの、許さない。


 瞬間、明香がハサミを掴みミナトに向ける


優   明香!明香やめろ‼︎

明香  優の心を乱す者は私が許さない!許さない!許さない許さない許さない‼︎

港   ・・・‼︎

タカ  明香ちゃん‼︎

明香  お前のせいッお前のせいで優がッ‼︎優が間違えるわけないんだ‼︎優が正しいんだ‼︎

タカ  落ち着いて、冷静になって!

明香  私は冷静だ!

優   明香!

明香  優は私の絶対なの。優がいなきゃ駄目なんだ。優じゃなきゃ。


 明香、ハサミを落とし泣き始める


港   ハァハァ・・・

タカ  ミナト!

明香  優なの。私を仲間だと言ってくれるのは優だけなの。優じゃなきゃ駄目だから。主馬でもササでも、ツジでもカワバタでも、タカやミナトじゃ駄目なんだ。優じゃなきゃ、私は、

優   明香。

明香  優は私の神様なの。優だけが私の神様。愛なの信仰なの!絶対なの‼︎貴方は、私のキリストなの。

優   明香、僕は・・・

明香  優、二人で、死のう。

優   ・・・。

明香  約束でしょ?学校が爆破すると同時に、大王の支配の前に、私達、救われるんでしょ?二人で、幸せになるんでしょ?

優   ・・・。

明香  何とか言ってよ。私が一番でしょ?私だけが、優の必要とする人間でしょ?私達だけがッ、私達だけがッ・・・‼︎

タカ  ・・・明香ちゃん。

明香  タカには分からないよ!私がどれだけ優に救われたか‼︎信仰と血筋で縛られた家庭。誰にも相手にされないこの気持ち。

タカ  ・・・。

港   ・・・。

明香  (ミナトを見て)ミナトにも分からないよ。私はいつも優を見てた。彼だけが、私の救いだから。でも、優が見ているのはいつだって隣にいる私じゃないの。貴方なの‼︎言葉すら交わすことないミナトなの‼︎・・・誰にも分からないよ。私からッ優を取らないでッ‼︎

優   明香・・・。

明香  何、優。(微笑んで)

優   僕は、

明香  ?

優   僕は、死なないよ。

明香  ・・・?

優   予言なんて、あるわけないんだ。

明香  何で・・・、

優   僕は、生きてたいから。

明香  何言って・・・、

優   それに、

明香  ・・・。

優   それに、僕の一番は明香じゃない。

明香  ・・・は?

優   ミナトだよ。

港   ・・・。

優   ミナトは、俺の親友だから。

港   優、

明香  ・・・・・・あっそう。


 明香、爆弾のスイッチをタカから取り上げ机の上へと上り上がる


港   明香さん‼︎(腰が抜けて立てない)

優   よせ!そんなことしたって意味無いぞ!

明香  分からないよ。私には分からないよ。

優   こっちへ来い、明香。

明香  何でミナトなの?

優   こっちへ来いよ!

明香  分からないよ、優。

優   僕の命令は絶対だろ⁈

明香  私が世界で一番好きなのに‼︎

優   ・・・。

明香  好きだよ、優。


 明香の手によって爆弾のスイッチが押された

 真夜中の旧校舎

 重低な協会の鐘の音が鳴り響く

 一九九九年七月一日零時

 明香の笑い声が教室に満ちる

 息が止まる

 瞬間、空に大きな音を立てて立派な赤い花が咲いた


明香  ・・・は?


 空には次々と鮮やかな花火が打ち上がっている

 タカ、眼鏡を正す


タカ  打ち上げ花火。

優   タカ、お前。

タカ  ずっと言ってたでしょ?俺の家、花火職人だって。この爆弾はダミー。校庭に花火を仕掛けて置いたんだよ。

港   お前、最初っから、

タカ  (笑う)

優   ・・・ハハ。何だよ、裏切り者は、タカだったのか。

タカ  ごめんね。

優   結局、予言は怒らなかったな。


 明香、どこかへ走り去ってしまう


優   明香!

港   一人にしてやれよ。ほら見ろよ。綺麗な花火!

タカ  俺が作ったんだ。

優   ・・・凄いな、タカは。

タカ  まーね。


 ミナト、何かをポケットから探り出し、机に放り投げた

 それには鈴が付いている


優   ミナト、これ、

港   カッター。優が言った通りだよ。俺は死ぬ勇気なんてない。

優   ?

港   俺な、本当は死ぬつもりでココに来たんだ。

優   え?

港   俺、転校するんだ。母さんが病気で死んでさ、親父の実家に帰るの。

優   何それ、

港   今初めて人に言った。(笑って)

優   だからって、何で、

港   生きてる意味が分からなくなったんだよ。

優   ・・・!

港   俺は、母さんにもっと俺を見て欲しかった。

優   ・・・。

港   俺小学校の頃さ、転校して来て不満ぶつけるように暴れ回って、母さんにはスゲー迷惑かけたと思う。いっつも俺のこと心配してくれてさ、

優   ・・・僕もお世話になったよ。良い人だった。「ミナトの親友が、優くんで良かった」って、

港   ・・・なぁ、母さんの最後の言葉。何だったと思う?

優   え?

港   「優くんは元気?」

優   は?

港   俺ビックリしたよ!母さんの中の俺は、お前と親友になった小二で止まってんだぁーって。俺は苦労して、空気読んで、暴力も振らないで、変わったのに・・・。俺のこの数年間は、母さんにとっては何も成長してなかったんだなって、笑っちゃうよな。

優   ・・・。

港   元々人生に意味とか見出してなかったけど、母さんが死んでさ、何だろな。俺、死んだ母さんの手を握ってやれなかったんだよ。ほら、体温のない母さんの手を握って確信するのが怖かったんだ。死って、怖いんだ。

優   ・・・。

港   今はさ、めっちゃ悔しい‼︎握ってやれば良かったなぁって思う。俺、もう中三だよって、

優   ・・・。

港   優に会えて良かった。腹ん中でグルグルしてたモノ。全部吹っ飛んじまった。

優   ミナト・・・

港   だからさ!

優   ・・・。

港   だからさ、優。辛いのはお前だけじゃねーんだから、簡単に死ぬんじゃねーよ。

優   !

港   辛いのは分かち合えば良いじゃん。俺達、『親友』なんだから。


 音楽


優   ミナト・・・俺、


 パトカーの光が教室の窓に差し込む

遠くから微かにサイレンの音も聞こえる


タカ  ヤバい!警察が来た‼︎

港   え、マジか⁈

優   早く逃げよう‼︎


 タカ、明香のハサミを拾う

 三人は各々荷物をかき集め順に教室から走り去って行く

 音楽が次第に大きくなる

 外の声


ツジ  主馬!音、漏れてるよ。

主馬  え、あーごめん。壊れてんだよ。

ツジ  新しいの買いなよ。

主馬  うん。

河端  切れよその曲。よくこんな時に聞けるな。アタシらもうすぐで死ぬところだったんだぞ?

主馬  うーん。

ササ  えーササもう少し聞いていたいぃ。

河端  ササ、

主馬  俺も、もう少し聞いていたいかも・・・。

河端  はぁ?

ツジ  ねぇ、これ!花火の燃え滓じゃない?

主馬  それが?

ツジ  え、知らないの?花火の燃え滓は、幸運を呼ぶのよ。

河端  アタシは火事にならないって聞いたけど?

主馬  あ、俺のばあちゃんも火事にならないって言ってた。何でなの?

河端  詳しくは聞いたことない。

ツジ  カワバタ達は夢がないなぁ。

河端  はぁ?

ツジ  良いから、皆で持って帰ろうよ。生き残った、記念に。

河端  生き残った記念か。ならいっぱい持って帰ろうぜ。

主馬  記念品だな。

ササ  ・・・ねぇ、あれパトカーじゃない?

主馬  え、嘘!

河端  逃げろッ‼︎


 少年少女が走り去って行く

 ササがその場に立たずみ一方向を見つめている


ササ  あ、優くん?・・・ミナトくんとタカくんもいる!


 音楽が次第に大きくなっていく

 ササを心配して少年少女が戻って来る

 ササ、見つめている一方を指差す


ササ  おぉ〜い!優くぅん!(音楽で台詞はかき消されている)


 瞬間、音楽が切れる


皆   優‼︎


 クラクションの激しい音

 突然事故の音が鳴り響く

 救急車の音が聞こえる

 来た方向へと駆け寄る少年少女達

 次第に全ての音響が遠のいて行く



〈六〉 キリストの形


 教室に薄暗い明かりが灯る

 ラジオのノイズ


ラジオ こんばんは。一九九九年七月七日。真夜中の夜十一時ラジオ。オカルト体験談の時間です。DJのダイです。あのノストラダムスの大予言から七日経ちましたが、生憎に、今日も世界は回っています。さて今晩は七夕ということで、


 明香の姿がある


明香  優、覚えてる?初めて会った日のこと。今日みたいな綺麗な月夜でさ、私、懺悔から逃げ出して、この教室でラジオ聴きながら寝てたさ、優、私のことお化けって勘違いしてさ・・・


明香、十字架の首飾りを優の机の上に置く

 ベランダへと移動し、飛び降りようとする


明香  好きだよ、優。


 月が雲に隠れ辺りが暗くなる

 重低な鐘の音が鳴り響く

 他には何も聞こえない

 学ランを着た少年が十字架を回収する

 手には一冊のノートを持っている

 暗く、少年の顔は分からない



〈七〉 最愛の裏切り者


 暗転

 教室には、ノートを持った少女がいる


竜   校舎に夜の影が伸びていく。成長することのない少女は、深い溜息をついて眠っていく。空にはあの日と同じ月だけ、コチラを覗いている。それから何時間も経って、月が落ちた。そして、そして明日は、闇に包まれた。・・・町立カナル中学校三年二組、襟谷、鷹。

タカ  竜。


 下手ドアに大学生になったタカが立っている


竜   兄さん。

タカ  竜、お前一人か?

竜   兄さん、これ、(ノートを差し出す)

タカ  ・・・あぁ、見つけたのか。

竜   やっぱり、兄さんのノートなの?

タカ  見つけたのが竜で嬉しいよ。

竜   ・・・?

タカ  この校舎のこの教室。懐かしいなぁ。

竜   兄さん、

タカ  覚えてないかな?竜は、まだ小二とかだったからね。


 タカ、ポケットから明香の十字架を取り出す


竜   !まさか、・・・本当にあった話、なの?

タカ  綺麗な十字架だろ?竜。

竜   何でこんな話!日記にしてもあんまりに、

タカ  馬鹿だなぁ、竜は。それは予言書だよ。

竜   予言、書?

タカ  全部俺の思い通り。・・・明香。俺の明香。

竜   ・・・。

タカ  明香は優を愛してた。あれは狂ってるほどにだ。同時に、優はミナトを愛してた。

竜   ・・・、

タカ  色々考えたんだよ。俺も。でも、どんなに良い結末にしようと思っても、明香は俺の物にはならなかった・・・。しかたない結末だよね。

竜   怖い、兄さん怖いよ。

タカ  怖い?どうしたんだよ竜。

竜   ・・・。


 タカ、竜に十字架を掛けノートを握らせる


タカ  なぁ竜。

竜   兄さ、

タカ  次はお前の番だよ。

竜   え?

タカ  お前にだって、夢はあるだろ?望む人間関係、望む感情、望むシチュエーション。

竜   私の、望む、

タカ  俺達兄妹ならできるよ。竜ももう中三になる。

竜   ・・・。


 タカ、眼鏡を正す


タカ  見ろよ!今夜も月が綺麗だ。


 夜空には、ルベルの月が浮かんでいた



終幕


※ルベル(rebbelle)とは、「反逆、裏切り」を意味するフランス語。

またラテン語で赤を意味する「ルベル(ruber)」はルビーの語源となっています。

情熱・愛・ロマンスを連想させ真紅の宝石に隠れたパワーが秘められていると信じられていました。

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1999年のルベル ★祭り★ @Matsuri0511

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