数学オリンピックで優秀な成績を出した少年デニスは、自他ともに認める天才だった。
両親は息子の安泰のため、数理系の最高峰を希望し、彼はそつなく合格する。
彼に不安などなかった。
世界は自分と、自分が信じる法則によって動いていると確信していたから。
そんな彼が「解法が視える」男、ダニイルに出会ったことにより、彼の運命は発散し始める――
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凡才と天才との比較は多々あるが、天才の中にもはっきりとしたレイヤーがあることを示す作品。
天才も天才に嫉妬する。
時代が違えば、全員名が残ったのかもしれないが、そうはならないのが歴史の残酷さでもある。
この作品は感情的な発露を見せることはあまりない。
しかし、静かな文章の中に、蝉のように果てる天才達の残骸が垣間見え、最高峰と呼ばれるものの功罪を感じさせた。