09. 絡まれました
なぜ魔力をもたないルーカスが由緒ある魔法学校に入学することになったのか。
それは優秀な教師や生徒に良質な最上級魔法を撃ってもらうためである。
この六年間色々と試した結果、攻撃を受けた時の痛みは大きい順に、最上級魔法>>>>>上級魔法>>中級魔法であり、回復の速さは大して変わらないということがわかった。
そして撃たれる回数の多さと痛みの大きさを天秤にかけた結果、後者を選んだ。
「ルカ様ってマゾなんですか?」とドン引きしていたアイザックには本気の蹴りを入れた。
撃たれる回数が少ない方がやる気は出るのだが、これは体験した者にしか分からないのかもしれない。
四年以上の猛勉強の末筆記試験に合格し、実技試験は事情を説明して特別措置をとってもらった。
ルーカスの場合は相手に魔法を放ってもらわないと何もできないからだ。
試験官が放った風魔法を吸収し、二倍の威力で放出する。
カウンターの存在を知ってからは徹底的に鍛えていたので、一瞬で処理することができた。
その様子を見た理事長が封魔の力に興味を示し、即座に合格をいただけたのだ。
「お前、魔族だよな」
校門をくぐって十歩も歩かないうちに、早速絡まれた。
茶髪に緑色の目をもつ少年は背が高く、陽キャオーラが漂っている。
明らかにルーカスが苦手とするタイプだ。
助けを求めて振り向くが、とっくにアイザックの姿はない。
主人の姿が見えなくなるまで見送るのが専属護衛のあるべき姿ではないのか。
「違います」
「嘘つくなよ。黒髪に黒い目なんて初代魔王と全く同じじゃないか」
どうしよう、面倒くさすぎる。
うまい方法を思案していると、ぽんと肩に手を置かれた。
不思議に思い振り向くと、そこにいたのは──
「あにう、」
しーっとルカの口元に人差し指を当てて微笑んだのは女装したフリードリヒだった。
「ワーグナー君だよね。彼がどうかしたのかな?」
フリードリヒに見惚れていたワーグナーは、話しかけられると慌てて真顔に戻った。
「いや、その、魔法学校に魔族がいるのはおかしいと思って」
「ではこの学校の教師をしている私もおかしいかしら?」
赤い瞳にじっと見つめられてワーグナーの顔がうっすらと赤く染まった。
「どうしたの?顔が赤いけど、保健室へ連れていきましょうか?」
そう言うと無抵抗なワーグナーの肩に手をかけるフリードリヒ。
「先生、優しくね」
思わずフリードリヒに声をかける。
ワーグナーがこちらを睨んできたが、知らぬふりをした。
恩知らずめ。
「ルカ君、またあとでね」
そう言ってフリードリヒはワーグナーと消えていった。
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