第二章(十五歳・前編)

08. アロヴィンにて

魔法学校は王都から遠く離れた学研都市アロヴィンにある。

そこには大陸中から才能溢れる魔術師の卵がやってくるという。

そのため入学試験の難易度がとても高いことで有名だ。

非常に長い歴史と伝統を誇る魔法学校について、最近到底信じがたい噂が流れていた。



「なぁ、聞いたか?魔力をもたない十五歳の少年が魔法学校の入学試験を突破したらしい」


「なに寝ぼけたこと言ってるのよ、そんなことあるわけないでしょ」


「本当だって!さっきそこで衛兵たちが話して…………なぁ、あれ」


「なによ。……え、魔族?」


「おはようございます」


賑やかな早朝の市場を散歩していたルーカスは爽やかに挨拶をする。


「今日からこの辺りに越してきたんです。あ、僕は魔力量ゼロで無害なので、安心してください」


にこっと微笑むが、周囲の緊張感はあまり変わらなかった。

一人の赤子が泣き出したのを皮切りに、騒ぎは次第に大きくなっていく。

収集がつかない状況に頭を抱えていると、


「ルカ様なにやってるんですか!」


ただならぬ雰囲気に気がついたアイザックが駆け寄ってくる。

ほっと息をついて事情を説明しようとすると、突然頭を叩かれた。

ルーカスも周りの人々も皆ぽかんとしてアイザックを見つめる。


「痛い。なんで?」


「頭と顔を隠すように言いましたよね?スカーフはどうしたんですか?」


「さっき盗まれた」


「なんですぐに俺に知らせないんですか?」


「忙しそうだったから」


「結果的に仕事が増えていますが」


「アイク、いつもありがとう。大好きだよ」


へらっと笑うと、アイザックに頭を下げさせられた。


「この度はお騒がせして申し訳ありません。彼は私が責任を持って監視いたしますので、どうぞご安心ください」


凛々しい表情で頭を下げるアイザックに、町娘たちがが頬を染める。


「あの、あなたは?」


「私はアイザックと申します。彼のやることなすことの後片付けをしている者です」


「おあいこだろ」と小さく呟くと、足を強く踏まれた。

相変わらずナメた男である。


「申し訳ありませんが、急いでおりますゆえ本日は失礼させていただきます。後日改めてお詫びに参ります」


アイザックに肩を抱かれ、押されるまま歩いて人気のない場所まで避難する。


「ルカ様、俺は校内まで入れないんですよ?本当に大丈夫ですか?」


「大丈夫だよ。話せば分かってくれるはず」


「先程もそう言って別行動してこうなりましたよね」


「ごめん、正直なにがダメだったのか全く分からない」


自分は魔力をもたず害を与える気もないと伝えたし、にこやかにしていたはずなのに。

どうしてあそこまで警戒されてしまったのか。


「仕方ありませんね。俺がとっておきの方法を教えて差し上げましょう」


「とっておきの方法?」


「儚げな美少女風に微笑んで『僕は悪い魔族じゃありません』て言うんです!」


「きもい、却下」


そんなやりとりもあったりして、ルーカスたちのアロヴィンでの生活が始まった。










【耐性レベル到達度】


火: 0/100 水: 0/100


風:100/100 土: 0/100


光: 0/100 闇: 0/100


無:100/100


氷: 0/100 雷:100/100


草: 0/100 聖: 0/100


時: 0/100 空: 0/100


重: 0/100



※最上級魔法……50点、上級魔法……10点、中級魔法……5点


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