2. 裁判
裁判所に着くと、辺りは、おどろおどろしい雰囲気となっていった。
案内人と、警備員らしき人物が、私の両隣にそっと立つ。そうして、私が逃げないように見張りながら、正面にある、上七枚、下七枚、計十四枚のモニターを見つめた。
すると、モニターの電源はパッと点き、上の真ん中のモニターの人物……代表だろうか……が、低い声で、ゆっくりと重い腰を上げるように宣言する。
「では、裁判を始める」
他の十三人は、じぃっと私を見ながら、何かを考える素振りを見せていた。
「この者が天国に相応しいと思う者はマルを、地獄に相応しいと思う者はバツをつけよ」
威厳のある声が言い放てば、左から順に、マルバツをつけていく。
マル、マル、バツ、マル、バツ、バツ、バツ
バツ、マル、バツ、バツ、マル、マル、マル
結果は七対七で審議となった。たらりと汗を流しながら、その結果を待つ。しばらくは息もできなかった。
「この者は良い行いをしておる」
「えぇ、それに救われた者もいます」
「いやしかし嘘ばかりついておるぞ」
「本音ばかりが良いとは限りませんよ」
「いいや、人を傷つける嘘もついたな」
「そうだ。それにコイツは殺しもしている」
「人殺しは地獄行きだ」
「命を大事にしないのはダメだろう」
「優しさ故の殺しでしょうに」
「そんなものがあってたまるか」
「そうだ。相当の報いが必要だ」
「報いならとっくに受けていますよ」
「反省もしとる。許してやってよかろうに」
「そうです。我々がこの者を許しましょうよ」
話し合う声が、僅かに聞こえてくる。そうしてしばらく十四人は考え込み、互いに目配せし、頷くと、例の代表者はそっと槌を手に取った。
「……審議の結果が出た」
ゴクリと息を飲み、結果に耳を傾ける。
「貴様は、天国行きだ」
カーンッ、と良い響きの槌が打たれ、私は上へ連れて行かれる。
辿り着いた先は、雲の上。ふわふわで優しい匂いのする場所……天国だった。
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