『第一話-女神との出会い-』-1
何もない真っ白な世界で、運命の精霊が俺の前に現れた。
「やあ、あたしは運命を司る精霊だよ。さっそくだけど君に神託をあげるね」
運命の精霊の顔は見えないけど、後ろに見える大きな天秤がまるで運命の重さを比べるようにたたずんでいた。
「君には、たくさんの選択肢があるよ。でも、君が選べるのはただ一つ。いいや、君に限らず誰しもが一つしか選べない。それがこの世界のルールなの。これは守ってね」
お告げの内容自体は仰々しいが、よく考えれば当たり前のことを言っているだけだ。まるで友達に話しかけるような話し方のせいで、どうにも緊張感がわかない。
運命の精霊はにこやかな笑顔でたくさんの光景を映し出した。
「愛しい人と恋をすること、良き友と友情を育むこと、おとぎ話のように世界を救うこと、数多の名声を得ること。全て君の選択しだいだよ。さあ、君は誰を、どこで、いつ、何を選ぶの?」
俺は答えられずに、運命の精霊をただ見つめる。
そもそも、ここはどこだろう。俺は誰だろう。
「もしかして、君が天秤にかけるのはこの二人なのかな?」
天秤の上に二人の少女が現れた。
水色の髪の綺麗な女の子が腕を組んだまま真顔で俺を見つめてくる。
長い栗毛の可愛い女の子が両手を組んで、俺に微笑みかける。
俺はこの女の子たちを知っている。だけど、なぜ知っているかはわからない。でも、どちらも俺にとって大事な人だ。
「君はどちらを選ぶのかな? それとも選ばないのかな? 君の運命はどうなるんだろうね?」
運命の精霊の言っていることは何一つ理解できないけど、予感がした。
俺はこの女の子が好きなんだ。そして、この思いを生涯忘れることはなく、間違えることもない。
けど、その想いを遂げるのはとても大変な道のりだということもなぜか知っている。
だからこそ、もう一人の精霊が現れて、俺に告げてきた。
「あなたに選択肢はいりません。あなたの運命は決まっているのよ」
今度は、時の精霊だった。
「あらら。困ったねー。君はどうするの?」
「正義の味方になって、世界を救いなさい。それがあなたの願いでしょ」
言われるがまま、俺は初めて声を上げた。
「でも、自分の運命は自分で決めたいな」
俺の運命がどうなるのか、きっと誰も知らない。
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