③
それから程なくして、私とジジはNPO主催の保護猫譲渡会にボランティアとして参加した。
会場で愛想を振りまいていたジジが突然、黒い影となって走り出し、向うに見えるベージュのカシミアらしきコートの背中をバリバリバリと駆け上がった。
慌てて飛んで行くと
あの、懐かしい声が聞こえた。
「ジジ!久しぶり!!」
追って来た私と目が合うと、“カレ”は深く頭を下げた。
「あなたには長い間、本当にご迷惑をお掛けしました」
優しいカレの目を見てしまうと私は聞かずにはいられなかった。
「あの土地の事、知っていたのですね?」
もう一度深く頭を下げたカレは話し始めた。
「すべては私の父と当時の役人が暗躍した事が発端でした。あの土地は人が住んではいけない場所だから、区画の全てを僕は買い戻したのです」
だとしたら……
“新聞記事”を見て以来、私が心の中で幾度となく繰り返して来た問い掛け……
『あの土地が汚染土壌と知りつつもカレは足繫く通い、そこでできた野菜料理を余すことなく平らげた……いったいなぜ?』
私はカレの目を見つめた。
……色んな思いが私の目尻に涙を溜めさせた。
「ようやく肩の荷を下ろせた僕は……せめてジジをお嫁に迎える事ができればと思い、来てしまいました」
私の心の中の問い掛けの答え……聞かなくても分かった。
「ジジだけお嫁に出す訳にはいきません」
そう言って彼の胸に飛び込むと、ジジは抱きしめ合った私達をキャットタワーにして……ふたりの
おしまい
独り暮らしの萌香さんと屋根裏好きの子猫 縞間かおる @kurosirokaede
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