おいでよ! 文学フリマ福岡

カニカマもどき

皆様は

 皆様は、文学フリマというものをご存じでしょうか。

 はい。今回ご紹介するのは、ウソ知識ではありません。

 これは、2025年10月に初参加してきた実在のイベント「文学フリマ福岡11」(公式サイトhttps://bunfree.net/event/fukuoka11/)がなんかすごい良かったので、その魅力や、私自身の反省からなるアドバイス等を、私なりにお伝えしようというエッセイなのです。

 出店者ではなく来場者として一度文学フリマに参加しただけの新参者であり、まだまだ”浅い”内容とは思いますが、よろしければお付き合いくださいませ。


 まず、文学フリマとは何か。

 それは文学作品の展示即売会であり、いわばコミックマーケット(コミケ)の文学版。つまり、自作の本などを売買できる場であるわけです。

 開催地は2025年時点で全国8か所(札幌、岩手、東京、大阪、京都、広島、香川、福岡)あるので、東京のみのイベント等と比べれば近場で参加しやすく。

 また、文学フリマ福岡11の出店数は484、来場者数は2,122人。年々規模が拡大しているようですが、人混みや行列が苦手である私のような人間でもわりかし気軽に来場できる、適度なスケールのイベントです。


 私が文学フリマの存在を知ったのは、2024年のテレビ番組。

 開催された文学フリマ(どの会場であったかは覚えていない)の様子や参加者の声を紹介する内容で、作品を読み合ったり感想を送り合ったりする楽しみをカクヨムで知っていた私は、「こういうのも良いなあ」と強く興味をひかれました。

 「文学フリマ福岡11」開催が近づき、公式サイトのWebカタログで出店ブース等の情報を仕入れるにつれ、興味と期待はさらにどんどんと高まり。

 そして2025年10月5日(日)、私は愛用の中洲ジャズトートバックを手に、会場である博多国際展示場&カンファレンスセンターを訪れることとなったのです。


 さて。当日の会場の様子について、あいにく私は写真を全く撮っていないのですが(不覚)。

 大体の雰囲気は、公式サイト等の写真で分かります。

 ただし、これはやはり、実際の会場を訪れて体験していただくのがよろしい。

 なんだかもう、夢のような空間です。

 趣味全開の小説やらエッセイやら詩集やらのブースが、あっちにもこっちにも。

 会場では、「ああああ!!! 楽しいい!!!」と叫びたくなるのを、みんな必死でこらえています。たぶん。

 基本的に採算を度外視し、みんな好きなものを好きに作って売っている。本の装丁や、ブースの魅せ方も含めて。これがきっと、書店とも異なる、文学フリマならではの魅力なのでしょう。


 どこから手を付けるべきか、どこに視線を置いたらよいか迷ったあげく、私は定石どおり、まずは試し読みコーナーに向かうこととしました。

 このコーナーには試し読み用の本が集められており、これから訪れるべきブースを吟味することができます。優しい。しかし、来場者でそこそこ混みあっていたこと、早くブースを見に行きたい欲が高まってきたことから、試し読みをしても、あまり内容が頭に入ってきません。

 そういうわけで私は、事前に調べたWebカタログの情報を元に、さっそくブースを訪れることにしたのです。


 ここからは、私が購入した本6冊を、購入順に簡単にご紹介いたします。

 なお、これらの表紙の写真は近況ノートにアップしておきます。


1 『ぽ』 300円

  へにゃらぽっちぽー先生 著

 テレビで観て、またWebカタログで試し読みして購入を決めていたもの。

 「へにゃらぽっちぽー兄さん」や「へにゃぽちゃん」がおかしなキャラクターたちとともにゆるゆるな日常を過ごす小説短編集の1作目です。シリーズは11冊もあります。すごい。そして面白い。すごくゆるゆる。続編も購入したい。ちなみに私は「へにゃらぽっちぽー兄さん」を勝手に「くちぱっち」の姿で想像しています。


2 『城崎にて 四篇』 2,500円

  森見登美彦先生、円居挽先生、あをにまる先生、草香去来先生 著

 Webカタログで見逃していたもの。実は文学フリマでは、著者や出版社の方が「商業展開されている本」を売ることもできます。当初は「書店でも買えるならここで買う必要はないのでは」と考えたのですが、他ならぬ森見登美彦先生が参加された小説短編集であること、ひとり文芸レーベル「書肆imasu」様が発行している、おそらく書店であまり見ない本であること、そしてサイン本であることから購入を決定。

 四名が城崎で温泉やカニ料理やスマートボールを楽しんだ後、『城崎にて』という同じ題でそれぞれ短編を書いたという話だけでもう面白いですが、もちろん中身も大変愉快で面白いです。志賀直哉先生の『城崎にて』を未読でも楽しめます。


3 『新生ミステリ研究会からの挑戦状 叙述トリックアンソロジー』 500円

  片里鴎先生、菱川あいず先生、凛野冥先生、kan先生、奥田光治先生、視葭よみ先生、庵字先生 著

 Webカタログでは見逃しており、「文学フリマ大阪で買った本」紹介動画で観て気になっていたもの。ミステリ系で何か買いたかったので即決で購入。

 「最初から叙述トリック物と分かっていたら魅力が半減するのでは」と少し心配でしたが、ちゃんと面白く、トリックのバラエティも豊富でした。個人的には『暗礁の中』が一番好きで、メインの謎が部分的になんとなく解けても、なお残る謎と意外過ぎる真相の連続が本作の魅力だと思います。


4 『Nora Vol.10』 100円

  海壁いらや先生、たけみや もとこ先生、Minoru Soma先生 著

 表紙の猫が可愛い。「映画」をテーマにした短編アンソロジーであり、私が映画好きなこともあって購入。

 中身は全体として暗めですが、それはそれとして楽しめました。後から見ると、表紙の猫もちょっとシリアスな表情に見えなくもありません。個人的には『シアター』が一番良かったです。


5 『喫茶のすみっこで』 400円

  うめおかか先生 著

 小さくて表紙が可愛い。普段あまり読まない「ご飯を中心とした短編集」の1冊であり、この機会に読んでみようと思い購入。この巻のテーマは「喫茶店」です。

 全体にほのぼのとした物語で、リラックスして読めます。あとやはり喫茶店に行きたくなります。そして実際に行きました。こうしてやりたいことが広がっていくのは良いことです。


6 『人喰いシャークVSサメ喰い人間』 500円

  中石ゆん先生 著

 最後は、先のほのぼのした雰囲気をぶち壊す本作。Webカタログで表紙を見て気になっていた短編集です。

 作者あとがきに「長編シリーズがシリアスである分、短編はどうかしちゃってる問題に仕上がる傾向が強い」とありますが、本当にどうかしちゃってる率が高い。しかし、しっかりと面白く、なんというか全体的に描写がすごい上手い(気がする)。特に良かったのは表題作。長編のほうも読んでみたくなりました。



 はい。というわけで、私が購入したのは以上6冊で、計4,300円。

 蓋を開けてみると全て小説の短編集でした。

 作者様を前にする緊張感や情報量の多さで少々疲れ、あまり粘らずに会場を後にしたこともあり、来場者の平均購入額5,000円程度(公式サイトより。たぶんアンケートを元に算出)には少し及ばず。

 しかし普段の私からするとそこそこの買い物をしており、さすがは文学フリマの魔力といったところです。そしておそらく、次回以降はもっと購入量が増えます。


 全体として「楽しかったし、よい買い物ができた」大満足の内容であり、次回の文学フリマ福岡にもぜひ参加したいところですが、今回の反省等を活かして変えていきたい点を最後に記しておきましょう。


・もっと購入する本の幅を広げたい。SF、エッセイや詩集等。そのためには、事前にWebカタログを幅広く(できれば全件)チェックしたうえで、実際に会場でも見てみるのが良い。

・初回と比べれば多少の慣れと余裕が(たぶん)出てくるので、休憩スペース等を活用しつつ、時間いっぱい楽しみたい。

・カクヨム以外のネットやSNSでの交流・発信を全くしてこなかったが、「普段からXやnoteで交流がある方に文学フリマで会う」といったことができればまた楽しみが増える。そうでなくても、もう少し出店者様と愛想よくコミュニケーションができると良し。作者様と直接話せるのが文学フリマ最大の特徴といえる。

・やはり出店もしてみたいところ。悲しい結果に終わるかもしれないが、一度はやってみて良いと思う。出店するなら、今後発表される事前申込のスケジュール(開催の約7か月前に開始、約3か月前に締切か)等をしっかりチェック。出店するとしても、他の出店者様の作品は購入しにいく。


 いかがでしたでしょうか。

 書店や小説サイトとはまた異なった、文学フリマの魅力を少しでもお伝えできていれば幸いです。

 興味がありましたらまずはお近くの、次回の文学フリマのスケジュール(東京は年2回、他は各1回)を、是非チェックしてみてください。


 次回の「文学フリマ福岡12」は、2026年10月4日(日)開催です。

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