第2話 焔の芽吹き

カイは、よく笑う子だった。

人間の子なのに、魔人の私に怯えることもなく、腕の中で安心したように眠る。

その寝顔を見るたびに、私は胸が痛くなった。

この子は、きっと人間社会では生き辛いだろう。

赤い瞳、異常な体温、そして――炎に愛されるような気配。

それでも、私はこの子を育てると決めた。


魔人族は、肌が灰色な事以外は人間やエルフ、ドワーフ、等様々な種族の特徴がランダムに現れる種族で親の遺伝による偏りも特に無い事が特徴だ。

ただ一番の特徴として、魔人族は全て魔物の特徴を必ず持って生まれている事があげられる。


私は、人間の特徴を持っているが、魔物としての特徴も持っている。

その為、灰色の肌に人間の耳や寿命等特徴が似ている。

これがエルフ系の魔人だったら、寿命や耳はエルフだっただろう。


そんな私は、あの日カイを拾った日から森の奥に小さな小屋を建て、薬草を育て、獣を狩り、焔の実を煮込みと穏やかに暮らしている。

カイは薪を割るのが好きだった。

まだ幼いのに、斧を持って笑っていた。


「お姉ちゃん、見て!火が踊ってる!」


焚き火の炎が、彼の手に吸い寄せられるように揺れた。

私は息を呑んだ。

炎が、彼に応えている。


「……異能」


魔法でもスキルでもない、想像力で世界を変える力。

それが、彼の中に眠っている。


私は恐れた。

この力が、暴走して彼を傷つけるかもしれない。

人間に見つかれば、討伐対象になるかもしれない。

でも、私は信じた。


「カイ、あなたはヒーローになるのよ。誰かを守れる、強くて優しい人に」


私は薪割りを終えた彼に近づき、その言葉を彼の額に刻むようにキスをした。

焔の赤い瞳が、まっすぐ私を見つめていた。


この子は、世界を変える。

私は、そう信じていた。

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