冬の散歩道
moonlight
冬の散歩道
歴史ある町並みを歩く昼下がり。
少し冷たくて乾いた風が吹いて、コートの前を合わせる。秋の終わりと冬の訪れを知らせるような風だった。
「亜衣、大丈夫?寒くない?」
彼女の隣を歩く佑(ゆう)は暖かそうな厚手のコートに、柔らかなウールのマフラーを合わせていた。
「大丈夫。ちょっと冷えるけど、これくらい平気だよ」
「いやいや、首寒そうじゃん。ちょっとマフラー巻くだけでも全然違うよ。なんか前テレビでやってた。なんつーか…防寒対策?」
ニコニコしながら話している彼を見て、彼女の表情も自然とほころんでいく。
「え、何で笑ってんの?」
「…佑が面白いから。防寒対策、確かにね」
「だろ?…ほら、これ巻いてみ」
佑はマフラーを外して、亜衣の首にかけた。
「ありがと。確かに暖かいけど…佑が風邪引いちゃうよ」
「平気平気、これくらい…って、くしゅっ!」
「早速くしゃみしてるじゃん。…私は大丈夫だから、ね?風邪引いたら大変」
亜衣はマフラーを外して佑に戻した。
「ん、ありがと」
佑は亜衣の手をそっと握った。
「佑?」
「…や、ちょっとでも暖かくなったら良いかなって思って」
彼の顔は少し赤くなっていた。
「ありがと。なんか、ほっとする」
亜衣もそっと、佑の手を握る。
彼の手の温もりがじんわり広がって、心まで伝わってくるようだった。
「…どういたしまして。そうだ、なんか温かいものでも食べに行くか?」
照れたように笑う彼の声は優しくて、とても温かかった。
「うん、行こう!」
いつの間にか冷たい風は止み、温かな日差しが戻る。
そして、幸せいっぱいのふたりを見守るような青い空がどこまでも続いていた…。
冬の散歩道 moonlight @moon109
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