第22話:そうなのかい?


「そして彼女は案の定『国境なき守護者』の手に渡る。ようやく場が動いたね、ウィラード」

「あぁ。……それで、アレの正体は解ったか?」

「いいや、どうやら彼に渡されたイコライザーは特殊な物らしくてね。これはウチの衛星がノイ・アーチェを監視していた時の映像だが、ほらご覧通りさ」

「映像が荒いな」

「うん。解析チームが言うには国境なき守護者の通常のイコライザーより倍以上モザイクがかかっているらしい。確かにイコライザーをつければモザイクが入るが、これは異常だとも言っていた。どうやら君でもこの解像度はキツイみたいだね。さて、それでどうするウィラード」

「もしその正体がヤツならば、俺とヤツ二人の決着を着けるまでだ。偽物ならヤツの名誉と誇りの為、誅殺せねばなるまい」

「偽物には随分厳しいんだね」

「ヤツは俺の宿敵だ。宿敵には敬意を払わねばならん。似ていない贋作など冒涜以外の何物でもないだろう」

「なるほど、ならボクもそれに付き合う事にしよう。……敵地の合鍵を手に入れた兵隊がやるのは一つだ。鉄と命で歓迎してやろうじゃないか。中東の本部に連絡しまず三万をこっちに動員させる。同時に向こうの腰の重い上層部を動かす為、君が昏睡状態になっているって情報を掴ませよう」

「ストックしてた裏切り者を切れ。数はそうだな、半ダースもあれば足りるだろう。その半分にはガセを入れとけ、真贋の含有量を薄めれば代わりに油断が増える」

「愉しみだね、ウィラード」

「……無聊は慰められるな。それと、そろそろテルペを切れ。アイツも色々役に立つ」

「君も思い切りが良いね、ウィラード」

「相手を勝負にひきずり込みたい時は出来る限り大きく動く。だが、その裏には確実に息の根を止める術を用意しておく――それでようやくだ」

「というと?」

「この世には戦略や戦術。運命や宿命。その全てを悉くを踏み躙って歩く人種というのがいる。ヤツが本物かどうか見極める方法は一つ、絶体絶命の窮地に叩き込む事だ。――経験上、それであの男の真贋が解る」


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